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最終話 勝戦パレードです

 戦勝パレードの当日は、突き抜けるような晴天だった。

 高らかに鳴ったファンファーレのもと、ジーニアス殿下にエスコートされて、初めて民衆の前に姿を現す。

 今日のためにあつらえた、薄黄色のドレス。

 民の目に、私はどう映るのだろう。

 衣装だけ浮いていないだろうか。

 殿下の隣に立つ資格が、私にあるのだろうか。

 ドキドキしている私の耳に、観衆の声が聞こえてくる。

「あれが『傭兵姫』?!」

「本当に傭兵だったのかい?美人じゃないか」

 私はほっとして、顔を上げる。

 一歩先で、ジーニアス殿下は微笑んでいた。

「な。大丈夫だといっただろう」

「……はい、殿下」

 私は、しっかりと意志を持って、差し出されたジーニアス殿下の手を取った。

 わあ、と歓声が上がる中、屋根のない馬車に乗り込んだ。

 パレードの始まりだ。

(『傭兵姫』の物語は広まってるって聞いていたけど、予想以上の歓迎だわ)

 あふれかえる人、人、人!

 そのひとりひとりが、笑顔でこちらに手を振っているのを見て、あんまり幸福で、涙がにじんだ。

(幼い私は、自信がなくて……殿下が好きだけれど、国母になる勇気を持てなかった。でも……今は違う)

 民衆のなかに、見知った、懐かしい顔ぶれがある。

 わざわざ私のために駆けつけてくれた傭兵団のみんな。

 腕を組んでこちらを見守るヒース団長と、泣いているニーナ。

 しょうがないな、というかのように、眉を下げて、なぜかふっと視線を外すノア。

 変わらない表情のまま、不器用に手を振ってくれるマリン。

(それに、ああ!トム!)

 ランドバルク家の元庭師のトムと、騎士団長のレスター、アラン。使用人たちまで。

 彼らに向かって、私は愛情をもって手を振り返した。

 私は王太子妃候補としては落第だった。

 きっとこれからも、苦労する。

 それでも――

 もう逃げない。

 私はジーニアス殿下に微笑みかけた。

「殿下、ありがとうございます。こんなに明るくて……きれいな場所まで、連れてきてくださって」

 殿下は、にやっと笑った。

「何を言う」

 そうして、殿下は集まった民を、披露するように、腕を広げて指し示した。

「君は自分の意志で、ここまで来たんだ」

 市井で生きていたからこそ分かる。

 民のひとりひとりが、誰かに愛されている人なのだ。

 その事実に、私は胸が熱くなる思いがする。

(今なら、私、この国を愛せるわ……!)

「私、よい妃になります。……絶対に」

「楽しみにしているよ、愛しい人」

 ジーニアス殿下は私に近づいて、そのまま頬に口づけを落とした。

 次期国王の情熱的な振る舞いに、大きな声が上がる。

 私は涙を流しながら、照れ笑いをした。

 春の王都に、希望に満ちた声が、いつまでも響いていた。

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