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番外編 ノアの気持ち

 戦勝パレードで、こちらに手を振るフリッグ。

 その姿を、ノアは寂しそうな眼差しで見つめていた。

 歳の割に悲しげなその様子が気になって、その夜、ノアの部屋を訪ねてみた。

 ノックをしても、返事がない。

 もしかしていないのかしら。そう思って施錠を確かめてみると、鍵は空いている。

 私は、そっとドアを開けた。

「ノア……?」

「姉さん……?」

「……泣いてるの?」

 慌てて目元を拭う姿が、窓から差し込む月光が照らしている。

 そっと、部屋の中へ入った。

「どうしたの?なにかあったの?」

「……なんにもないよ」

「ノア……」

 私は、ノアを抱きしめた。

 私たちの両親は、伝染病で早いうちに亡くなった。

 だからこそ、私もノアも、子供時代を早く卒業し、歳の割には早く大人にならなくてはいけなかった。

(でも、私の前くらい、年相応でいて欲しい。……無理をして、泣くのを我慢して欲しくはない)

 ノアは、私の腕の中で、体を震わせた。

「僕……僕、本当はね、」

「うん」

「フリッグが好きだったんだ……」

「ノア……」

 ノアは表向きは、フリッグの恋を応援していた。

 その行動の裏側で、この子はずっと、ひとりで恋心を隠していたのか。

 その重さを感じとった私は、言葉を失った。

「ずっと、頑張っていたのね」

 私は、ノアを包む腕に、力を込めた。

「フリッグのために、ありがとうね……えらかったわ」

「うう、ねえさ、」

 うわーん。

 ノアは、やっと声をあげて泣いた。

 ノアの熱い体温を感じながら、私は彼の背中をさすった。

 ノアはフリッグのことが好きだった。

 だからこそ、フリッグのために、彼女の気持ちを優先していたのだ。

 フリッグに、幸せになって欲しかったから。

「ノアのしたことは、気高いことだわ。神様が、きっと見てくれてる。ねえ、だからきっと、大丈夫よ」

「うぅ……」

 私はノアを抱きしめながら、窓の外を見た。

 丸く、強く光る月があった。

(神様……どうかこの素晴らしい弟が、幸せになれますように)

 私たちの聖典では、月には神様が住んでいる。

 だからこそ、弟の幸せを、私は月に願った。

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