表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
92/95

ここはどこ?あなたは……?②

読んでいただいてありがとうございます。

『…………ろ………エ………。いつまで………。はや………………きろ……ル』


 遠くから呼ぶ声がする。

 待って!

 そう叫びたいのに、声が出ない。

 置いていかないで!傍にいるって約束したのに!

 走って追いかけようとしても、足がもつれて前に行けない。

 待って!待って!待って!…………アさん!


 ハッとして目を開けると、真っ白い天井が目に飛び込んできた。

 

「…………あれ……?」


 うん?あれ?俺、どうなったんだっけ?

 どうやらふっかふかなベッドで寝ていたようだが、何がどうなってここにいるのだろう?

 えーっと、えーっと、と寝起きで全く頭が働いていない状態で考えていたら、扉が開いて女性が入ってきた。

 ゆっくりと上半身を起こすと、入ってきた女性が慌てて近づいてきて、支えてくれた。


「大丈夫ですか?ご無理をなさらないでください」

「はい。というか、俺はなんでここに?」

「覚えていらっしゃらないのですか?主からは、あなた様は人さらいにあったようだと聞いているのですが」

「え?人さらいにあったの?」

「はい。主が助けた時にはすでに意識がなく、眠っていたそうです」

「あ、それはご迷惑をおかけしました。えーっと、でも人さらい?何で?」


 考えようとしたら、頭がズキリと痛んだ。


「痛った!」

「大丈夫ですか?医者の話では、どこかで頭を打った様子が見られるとのことでしたが……」

「頭打ったんだ。だから、痛いのかぁ。うーん、最悪だなーって、ゲッホ!」


 痛む頭を押さえて嘆いていたら咳が出た。


「ずっと眠っていらしたので、喉も乾いているかと」


 そう言いながら女性が水の入ったコップを差し出した。受け取ると、改めて喉が渇いていたことに気が付き、一気に水を飲んだ。


「美味しい。生き返る」

「慌てて飲まずに、ゆっくりお飲みください。水はいくらでもありますので。ところで」

「はい?」


 二杯目をついでもらって、言われた通りゆっくりと飲む。


「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「名前?名前は…………あれ?」


 名前、と言われても頭に何も浮かんでこない。

 手に持ったコップを見た。

 これはコップで、中身は水。それにあっちにあるのは花瓶。ちょっと花の名前は分からないけど、綺麗な花。ベッドに水差しにお高そうな絵画。

 うん、物の名前は分かる。

 でも…………。


「……えーっと、俺の名前、何?」


 逆に尋ねると、女性が引きつった顔になった。


  ◇


「失礼いたします!」


 眠り姫(?)に付けていた侍女の一人が室内に入ってきたのは、医師の言葉に固まっている最中だった。

 急いで来たのか、少々息が荒い。


「あ、あの?」


 入った部屋の空気の何とも言えない超絶微妙感というか、時でも止まったかのような雰囲気に侍女は一瞬ひるんだが、この程度の空気に気圧されていては、ここでは仕事が出来ない。

 

「あなたはお客様に付いていたはずよね?どうしたの?」


 その中でも唯一動けていたメラの問いかけにほっとした侍女は、今のうちだと思って報告した。


「はい。お客様が目を覚まされました」

「あら、よかったわ」

「ですが……」

「ですが?」

「どうやら、記憶を失っているらしく、お名前などのご自身のことを、一切覚えていらっしゃらないようなんです!」


 侍女の言葉に、真っ先に反応したのは医者だった。


「なんですって?何も覚えていらっしゃらないの?」

「はい。身の回りの物の名前などは覚えていらっしゃるようなのですが、ご自身のことは何一つ……。お名前や出身地をお伺いしたのですが、全く思い出せないそうです」

「そう。殿下、私、診察に行って参ります!」

「待て!」


 医者の言葉でようやく我に返ったファイサルが、勢いよくイスから立ち上がった。


「俺も行く」

「ですが」

「……男性なら、問題ないだろう?」

「お待ちください、殿下。それはあの方がどのような環境に身を置かれていたかによります。もし、女性として生きてこられた方なら、殿下は間違いなく異性です」


 一番冷静に状況判断が出来ているメラが、すぐにでも飛び出して行きそうなファイサルを制した。


「だが、自分のことは忘れているのだぞ?」

「それでもです。もし、女性として生きてこられたのなら、記憶はなくても反射的に反応してしまうかもしれません」

「……そういうものか?」

「そういうものです。殿下だって、記憶を失くしていても、危機になれば剣を扱うことが出来ると思います。身体が覚えているとはそういうことです」

「そうか」


 そう言われれば納得するしかない。ファイサルは、次の行動をどうしようかと悩み始めた。


「あ、でも、ご自身のことを『俺』っておっしゃっていました」


 侍女のこの発言は、さらに混乱を招いたのだった。

お約束ですよ、皆様。

混乱するのは現場だけとは限らないのです。司令部も混乱するのです。

混乱させるのは得意なエデルさん(ただ今、記憶喪失中)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アリアさんと再会した時に思い出すのかと思いたいけど、アリアさんとどうやったら再会できるのだろうか?心配です。
ほんとに何でもありのすべてのヒロイン体験をするんですね。 人のよさそうなファイサル宮の人々のおかげで身の安全?貞節?は守られそうですが。 アリアさーん!ここですよ!って叫びたくなりそう。
凄い!カオスに巻き込まれる皆さんの姿が見える!これはひどい!(笑) エデルさんの魔力というか魅惑にみいられるひとが増えていく未来の悲鳴が聞こえる……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ