誘拐からの誘拐①
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誘拐犯一行は順調に馬車を走らせていたらしく、エデルは特に何もないままただひたすら馬車に揺られて、思考がマイナスからプラスへと乱高下して悶えてみたり、暇になったから取りあえず誘拐されるお姫様の気持ちを考えて一曲作ってみたりと、案外気楽に過ごしていた。
命の保証らしきものはされていたし、危害を加えられるのならとっくの昔に加えられていただろうから、多分、一応、何となく、そこら辺は信用出来そうな気もしていたので、大人しくアリアの救出を待てばいいと前向きに考えていた。
きっと前の時と同じように、アリアが微笑みならが助けに来てくれると信じていた。
……今度こそ、夜の覚悟は決めたけど。
そんな風に油断して過ごしていたので、急にガコンという音がしてすぐに馬車が加速した時に、思いっきり身体を壁にぶつけた。しかも立て続けに馬車が揺れて身体が振り回され、最終的に横倒しになったので、エデルはそのまま壁に頭をぶつけた。
……エデルが覚えているのはそこまでだった。
◆
「くそっ!何だ、アイツらは!!早く馬車を走らせろ!」
「あ!後ろの馬車の御者がやられました!」
「何だって!!」
後ろには、彼の敬愛する主が欲した土産が乗っている。
すぐに後ろを見ると、馬車の御者はすでに落ちたらしく馬車だけが暴走していた。
「止めろ!」
「無理です!馬も興奮して走っているのでこのままだと馬車が!」
叫び声と同時にガシャンという音がして、馬車が横倒しになるのが見えた。
それと同時に馬車と馬を繋いでいた紐が切れたのか、馬だけがどこかに走っていく姿が見えた。
「仕方ない!こちらだけでも逃げ切るぞ!」
「はい!」
すでに横転した馬車の傍に、こちらの人間ではない者たちが集まっているのが見えた。
本当は無傷で主に渡したかったが仕方ない。
主には黙っていればいいだけだ。
幸い、あの女を誘拐したこっちの素性は他の人間にはバレていない。
……エスカラに戻ったら、この役立たずたちも始末しなければ。
男は逃げる馬車の中で、そう考えていたのだった。
◆
「何だよ、しけた馬車一台しか戦利品がないのかよ。馬はどうした?」
「すみません、頭。馬は逃げていっちまいやした」
「この馬車にしても、あんまり金目のもんは入ってなさそうだよなー」
そう言って頭と呼ばれた男が馬車の中を開けると、ガランとした馬車の中にはほとんど物がなく、ただ人間が一人倒れていた。
「お、人間か?女だよなー」
長い髪の毛で顔は見えないが、ワンピースを着ているのだから、まず間違いないだろう。
「高く売れそうですか?」
「さーなー」
何気なく倒れていた人間をひっくり返すと、頭はにやりと笑った。
「喜べ、極上の獲物だ」
その一言で、後ろの部下たちは大喜びしたのだった。
ピンチ?




