地雷
大野が松本を止めた。
「大野、早くしないと残った仲間が
またテロを起こすかもしれないぞ」
「でも、危険です!」
松本が桜田から部屋の鍵を取って
ハイツ白金台の105号室に行った。
三人はドアの前に立つと松本が
チャイムを鳴し名前を呼んだ。
「与謝野さん、与謝野さん」
しばらく経っても中で物音一つしなかった。
松本が強引に部屋に入りそうだったので大野は仕方なしに
ドアについているポストを開け覗き込んだ。
「警部補、中に人がいる様子がありません」
「わかった、中に入るぞ!」
松本は鍵穴に鍵を差し込んで鍵を開けノブに手をやった。
「警部補気を付けて」
「うん」
松本はノブを回しドアを引いて
ドアから離れた。
「大丈夫ですね」
桜田が部屋の中を覗き込んで中に踏み込んだ。
「ま、待て!桜田!」
大野が止めるのも聞かずに桜田は奥の部屋に入り
テーブルの上の紙を見ようと近づくと
足の下でカチッと音がした。
「お、大野さん!」
桜田が大野を呼んだ。
「どうした?桜田」
大野が慌てて桜田の所へ来ると
「足の下でカチッて音がしたんですけど・・・」
「まて!動くなよ」
大野は桜田の足元のゴミを払い覗くと
直径10cm位の円盤を踏んでいた。
「それって地雷かもしれないぞ!」
松本が腰を引いて外に出て電話を掛けた。
「警部補どこへ行ってしまったんですか?」
桜田は心細げ大野に聞いた。
「きっと電話を掛けに行ったんだろう。
それに此処の住人の避難をさせているの
かもしれない、とにかく動くなよ。お前が動いたら
お前どころか俺もの命も終わりだ」
それから4分後大野の電話が鳴った。
「もしもし、どうしました?」
「あんた誰だ?」
「原美咲警視からあなたが
困っていると連絡がありまして」
「困っているどころじゃない、
爆弾が爆発しそうなんだ」
軽いノリの言い方に大野は怒っていた。
「わかりました、状況を教えてください」
「俺の部下が10cmの丸い円盤を踏んだんだ」
「了解です、そのスマフォをスピーカー
に切り替えてくれますか」
「スピーカーってどうやるんだ?」
「電話を受けるボタンをもう一回押してください」
大野がボタンを押すとスピーカーに切り替わった。
「その踏んづけた人くれぐれも
動かないでください、それは地雷です」
「はい、わかりました」
桜田は震える声で答えた。
「踏んでいる人お名前は?」
「さ、桜田です」
「では、桜田さんの靴は紐ですか?」
「は、はい」
桜田は自分の靴を見直して答えた。
「では、上司の方。桜田さんの爆弾を
踏んでいる足の靴ひも緩めてください、
靴がきついと緊張で足が浮く可能性がある」
「了解・・・俺の名前は大野だ」
大野は桜田の足が動かないように慎重に靴紐を緩めた。
「では大野さん近くにガムテープありませんか?」
大野はそういわれて周りを探すと
机の上にガムテープが置いてあった。
「あったぞ」
大野は爆弾を目の前に電話で動かされていたが、
なぜか小気味よい
指示が頼もしく思えた。
「新聞紙はありませんか?」
「あるぞ」
「では、新聞を半分に切ってそれを
丸め3つほど作ってください」
「了解」
大野と桜田は3つ新聞玉を作ると大野が
スマフォに向かって言った。
「できたぞ」
「はい、賢明なお二人はもうお分かりでしょう。
靴と地雷をガムテープで
くっ付けてください。ただし1mmでも
動けば爆発しますから
しっかり止めてください」
「わかっていますよ」
大野は不機嫌に答えて桜田の靴に震えた手を出した。
「あっ、そうだ。大野さん手が震えていませんか?」
「なんだって!」
大野は事実を言われてムッとすると
「桜田さん、大野さんにビンタして!」
「はい?」
「いいからビンタをして、怒らないと
アドレナリンが出ないんだ」
「は、はい。失礼します」
桜田は大野の顔を叩いた。
「何すんだ、この野郎」
大野が顔を真っ赤にすると
「今だ、大野さん靴を桜田さんの足を
抜かせて靴を固定するんだ!」
「くっそ!」
大野は桜田の靴と地雷をしっかり押さえると
桜田はゆっくり足を抜き代わりに
靴の中に新聞紙を入れた。
「よっし、桜田この上からしっかりと
ガムテープを巻くんだ」
「はい!」
緊張で汗だくになっている大野に言われると
桜田が脱いだ自分の靴と地雷が1mmたりとも
緩まないようにきつくガムテープを巻いた。
「いいか桜田、手を離すぞ」
大野はテーブルの上で手を離し、
桜田と走って部屋を出た。
「大野さん、爆発しませんね」
桜田は恐る恐る部屋を覗き込むと
「ああ、うまく固定されたようだ」
大野と桜田は部屋に戻った。
「おい、うまくいったぞ!」
大野が携帯に向かって言うと
「お疲れ様、後は爆弾処理班が来るのを
待ってください」
「ああ、ありがとう」
大野は照れるように礼を言った。
「ところで、そこに設計図ありませんか?」
「あるぞ、英語で書いてある・・・
ええとエレelectric」
「桜田さんは英語は?」
「大丈夫です。Electronicmagnetic pulse」
「OK、右上に日付とかナンバー
書いてありませんか?」
「上の日付が2001年
ナンバーはSEU1203です」
「わかりました、ありがとう。
写真を撮って原警視に送ってください。
その設計図は誰にも見せずに
原警視に渡してください」
「了解です」
「捜査を頑張ってください」
「はい。すみません、あなたのお名前は?」
桜田が電話の相手に聞くと
「だん、團亮です」
そう言って電話が切れた。
「えっ、團捜査官?」
桜田は唖然としていた。
~~~~~
「ねえ亮、誰と話をしていたの?」
ブルックが大事な会議中
にもかかわらず誰かと
電話をしていたので
不思議になって亮に聞いた。
「爆弾を踏んずんけた日本の
警察を助けていました」
「そうなの?日本もテロで大変なのね」
「はい、それに気づいていないんです。
国民も警察も」
亮は今後の日本を憂いで答えた。
「さあ、今夜はこの辺にしよう」
大統領が時計を見てみんなに声をかけた。
その声で全員が机の上を片付け始めると
大統領が亮に聞いた。
「亮、どれくらいにアメリカにいるんだ?」
「明日はニューヨークでスタジオD/NY
ブランドの立上げの打ち合わせRRレコードの
仕事をします。それからアリゾナでバイオ燃料
プラントの打ち合わせをします。
だいたい1週間くらいですね」