砂漠の美女
「ボビー!」
「しっ!そばにハリーがいる」
ボビーは美喜の大きな声を諌めた。
美喜が大きな声を出したのは
うれしさではなくて
周りにいる玲奈とマギーに知らせるためだった。
「ごめんなさい、私今度仕事でニューヨークへ行くの」
「本当か、そうか。俺は明日の朝に仕事が
終わる美喜が来たらニューヨークで会おう」
「そう・・・」
美喜は悲しそうな声を出した。
「どうした?美喜」
ボビーが不安になって聞いた。
「せっかくニューヨークへ行ける事が
嬉しくて伝えようと思ったのに
電話に出てくれないから」
「ま、待ってくれ美喜。
間違いなく明日以降連絡が取れる」
「じゃあ電話を受けてよ。不安になるわ」
美喜がわざといじけると
「すまない、携帯を変えたんだ。
今夜はメールなら受けられる」
「本当、じゃあメールアドレス教えて」
「もちろん、君の携帯にメールを送る」
「ありがとう、ボビー愛しているわ」
「じゃあ、また会えるのを楽しみにしている」
ボビーは照れたように返事をして切った。
美喜は電話を切るとすぐにマギーに電話をした。
「マギー、ボビーと連絡が取れたわ」
「OK」
~~~~~~
亮たちは20時18分にフェニッスク・
スカイハーバー国際空港に到着し
そこから20分ほどの車で走った
Royal Palms Resort&spaのロビーに着いた。
「わお、凄いホテルですね」
亮はエキゾチックでゴージャスな内装と
フロントから見える月明かりに浮かぶ
エコーキャニオンパークの山を見て感動の声を上げた。
「亮、気に入った?」
キャシーが微笑むと亮はデジャヴと
違ったホテルでホッとしていた。
「はい」
そこに亮の所に黒崎祐希からメールが届いた。
「團さん、今空港に着きました」
亮は祐希にホテルの名前と場所をメールで送って
キャシーに言った。
「キャシー、僕はここで祐希君の到着を待ちます。
マシュー、イーサンも部屋に荷物を
置いて着替えてください
リゾートホテルでブラックスーツは無粋ですよ」
「了解」
二人は嬉しそうにキャシーの荷物を
持って部屋に向かった。
久しぶりに一人になった亮はロビーから
続くバルコニーの椅子に座って
山の上に浮かぶ月を見ながら、
見失いそうになっている自分の
方向を改めて考えなおした。
このアリゾナから続く砂漠の向こうの
メキシコでは犯罪に巻き込まれ
4年間で2万人以上の人間が殺されており警察、
軍人の死者が1000人以上
麻薬組織の逮捕者が12万人もいる。
警察署長は賄賂を貰って犯罪に加担するか、
脅迫されて退職を余儀なくされている
これもすべて麻薬が原因と言っても間違いない。
亮は薬学の研究者として常に考えているのは
麻薬や覚せい剤の効果が全く無くなる
ワクチンを開発する事だった。
ただ、これを作った事を組織が知れば
亮を殺しに来ることは目に見えていた。
そこへ祐希から亮のもとに電話がかかってきた。
「團さん、ホテルに着きました」
「はい」
亮がホテルの玄関に目をやると
黒のポロシャツにジーンズの青年と
白地に花柄のキャミ―ソールの
ミニドレスを着た女性が歩いてきた。
~~~~~
4時間前、ジェニファーは亮に言われて
ジョセフに確認の電話をかけた。
「おかしいわね」
ジェニファーは慌ててジョセフの
スマフォに何度かけても
ジョセフは電話に出なかった。
「まさか」
ジェニファーは亮の言っていた事を
思い出し上司のブラウン捜査官に連絡を
取ってメキシコ、サン・ルイス・リオ・コロラド
警察を事務所へ向かわせた。
鍵を閉められた事務所に武装警察が突入すると、
机の電話に手を伸ばした息絶えた
アントニオは首から血を流しうつ伏せになっており、
椅子縛られていたジョセフは
全裸のまま下半身から大量の血を流して死んでいた。
「なんて言う事を・・・」
警察官の一人は、治安が悪いメキシコでは
殺人は日常茶飯事の出来事だが
こんなに残忍な殺し方は見た事が無かった。
「大変だ、本部に連絡を取らないと・・・」
警察官が無線のスイッチを押している時
別な警察官がうつ伏せになっていた
アントニオを起こした。
「なんだ、これは?」
仰向けになったアントニオ胸につけられていた
爆弾に赤いランプが付き、
破裂しアントニオの体がばらばらに飛んで
古びたビルの3階にあった事務所が
バラバラに飛び散った。
~~~~~
亮のいる方向に向かって来る若い
カップルはまるでハネムーン様で
二人の後ろから来る小柄の男に
亮は目を付け向かっていくと
「團さん?」
女性が亮に声をかけた。
「はい?」
亮はその女性に声をかけられる覚えが無かった。
「どちら様ですか?」
「うふふ、初めまして黒崎祐希です」
「えっ?」
亮は絵里子に息子と聞いていたので
その情報に対応が出来なかった。
「驚きました?」
「はい」
「團さん、その話をしたいわ」
狼狽している亮と反対に祐希は冷静に
亮を誘った。
「ええ、もちろん。食事を」
そこへキャシーたちが着替えをして
戻って来て七人でレストランに入った。
「まず、二人を紹介します。
私の学校の友達でザックとケンです」
祐希は身長170cmくらいの長身と言っても
女子の平均身長164cmのアメリカでは
そんなに高く見えずそれを上回る
背の高いザックと祐希より小さいケンを紹介した。




