エンジェルの治療
「すすみません、近いうちに必ず」
「近いうちじゃダメだ、今日払ってもらう」
凄味のある声で脅されてエドが返事に困っていると
「そんな事を言っても・・・」
「仕方が無い臓器を売るか、腎臓、肝臓、
角膜いくらでも売り先があるぞ」
「やめてくれ!」
エドは恐怖で膝まついた。
「お前の妹はなかなかの美人だな。中東に売るか
向こうではアメリカ女をなぶり者に
するのが流行っているそうだ」
男たちの言う事は嘘ではなかった。
「そうだ妹が日本人の家のクリーニングをやっている
そこから金を取って来る」
「ほんとうか?」
「ああ、日本人だから現金を持っているし
今は一人暮らしだ」
「なるほど、それはちょろいなあ」
男たちは顔を見合わせニヤニヤと笑った。
「いまからその家で妹と飯を食うんだ。
必ず金を盗んで渡す!」
「わかった、俺たちも中に入って物色を手伝う」
二人の男は根こそぎ金や貴金属を
持って行ってしまうつもりだった。
「いや、借りた分だけでいいだろう」
エドは妹の立場を考えて初めて
男たちの言う事を断った。
「わかった」
男たちはエドにそう言ってニヤニヤと笑った。
27CENTRAL PARK WESTマンションのフロントでエドは
受付の男に言った。
「1402号室お願いします」
「はい、お名前は?」
「エドワード・ライスです」
受付の男が部屋に確認の電話を掛けると
ニッコリ笑って指をさした。
「どうぞ突き当りのエレベーターです」
「あ、ありがとう」
エドはエレベーターに乗った。
~~~~~
「イーサンこの部屋に誰か来るみたいだぞ、
あの娘が電話を受けていた」
盗聴器で聞いていたマシューがイーサンに言った
「どうする、ここでボディチェックするか?」
「いや、あまり疑ったら失礼だろう。
とりあえず客の顔を確認するだけにしよう
イーサン」
「そうだな」
二人は1402号室の前を離れイーサンは
エレベーターの前に立ち
マシューは隣の部屋の1401号室の前に立った。
「チーン」
エレベーターが着いた。
~~~~~
レストラン、ル・ロマンに十四人がそろうと
シャンパンを片手にロイが音頭を取った。
「みんなのビジネスの成功を祈って乾杯!」
全員がシャンパンを一口飲み干した。
「亮、エンジェルはヨーロッパを中心に
モデルで活動しているの
よろしくお願いね」
マリアはエンジェルをスタジオD/NYのモデルで
使ってもらいために亮に紹介をした。
「エンジェルさん、最近交通事故に
合ったことありませんか?」
亮はいきなり背中を大きく開けた
ドレスのエンジェルに聞いた。
「はい?」
エンジェルは首を傾げた。
「第一頸椎と第四頸椎、第五胸椎、
第六胸椎、第七胸椎にずれがあります。
おそらく事故の時体が前に押し出され
その後に首を左右に振っていますから
側頭部も打っていますね」
「はい、半年前タクシーに乗っていて
追突事故に合いました」
エンジェルは驚いて答え右側頭部を手で押さえた。
「頭痛とめまいそして胃痛もあるはずです、
大丈夫ですか?」
マリアとエンジェルは亮の言っている
事に覚えがあり驚きで
声も出なかった。
「バックボーンはすごく大事な所なので
しっかり治療してください」
「あなたはどうしてそんなに詳しいの?」
マリアが亮に聞いた。
「僕は理学療法士の資格を持っています。それから
アメリカに来てスポーツマッサージの勉強もしたんです」
「そうなの・・・」
マリアは亮が全く何者かわからなくなってしまった。
「亮は糖尿病や白血病の治療薬を作った天才薬剤師、
うちの投資した製薬会社が大儲けしている」
ロイが亮の助け舟を出すと
「そうよ、私たちモデルで作った
ボランティア組織で亮が発明した
グリーン○ンドームやワクチンをアフリカで
無料配布活動をする事になっているの」
マリアはモデルのボランティア組織と聞いて驚いた。
「私たちが作るボトリング会社は
水の売り上げの一部をアフリカの
水開発に使う事になっているわ」
キャシーも微笑んで言うと亮は
「僕たちはビジネスをスタートするにあたって必ず
ボランティアを考えて計画を立てるんです」
マリアは真剣な目で言う亮の言葉に手を合わせた。
「まあ」
「もちろんスタジオD/NYも毛皮を使った
デザインをしない事、そして洋服製造で余った
端切れで毛布を作って配布する事も
計画していますし、綿花の種を配る
運動をしたいと思っています」
亮が言うとマリアは両手で亮の手を握った。
「ありがとう、亮。私もそれがしたかったの」
マリアは誠実な亮の生き方に賛同し
ここにいる仲間たちと仕事をして行く事を
心に誓った。
「亮、もったいぶらないでエンジェルの
治療をしてあげれば」
向かいにいたシンディが亮に言った。
「でも、一日くらいの施術では治せませんよ、中途半端な
事をするなら他の医師に任せたような方が良いですよ」
「一日でもいいからエンジェルの
事を見てくれるかしらお願い」
マリアが頼むとエンジェルがうなずいた。
「ところで、エンジェルは何歳ですか?」
「17歳です」
エンジェルが答えるとあまりに大人びた身長183cm
の少女に亮はめまいがした。
~~~~~
マンションのエレベーターの扉が開き
エドがそこから出てくると
イーサンはエレベーターで
エドとすれ違ってそれに乗り
マシューは1401号室の
前からエドの方を覗いた。
エドは1402号室のチャイムを鳴らすと
コリーンはドアを開け、顔を出して廊下を
見るとエドの手を引いて
部屋の中にいれた。
「ねえ、外にごつい男が二人いなかった?」
「いや」
コリーンがエドに聞いたがすれ
違いに乗った男の容姿を
エドは記憶に止めていなかった。
「そう、それならいいわ。食事しましょう」
コリーンは亮が連れてきた正体不明の男の
キッチンに入って厚い肉を見せた。
「なんだその肉、脂身ばかりじゃないか」
日本の牛肉を初めて見たエドは白い刺しの
入った日本の牛肉を見て
脂身に見えた。
「柔らかくてすごく美味しいから食べてみて、
アメリカの肉の10倍以上の値段
がするそうよ」
「へえ、金があるんだな」
エドは部屋の中を見渡した。
エドはコリーンがステーキを焼いている間
本棚の本を一冊一冊取出しその裏側を覗いた。
「あった、あった。隠し金庫」
エドはニヤッと笑って呟いき
その本の一冊を落とした。
「バサッ」
~~~~~
「あれっ?音が切れた」
マシューがイヤフォンを耳から
外してコツコツと叩いた。
「どうした?マシュー」
イーサンがマシューの様子を見て聞いた。
「盗聴器が切れた」
「盗聴器が見つかったのか?」
「それは無いと思う」
「それで中の様子は?」
「中に入ったのはコリーンの兄貴だ、心配ないだろう。
なんか日本の牛肉を食べていたらしい」
マシューはエドを気にも止めていなかった。




