射撃
「何だって、フロントガラスが割れているのか!」
スミスは驚きの声を上げた。
「ええ、残念ながら」
亮の額から血が滴り落ち目のコックピット内に入ってくる
風がその赤い物を後ろに飛ばしていた。
「わかった、何とかしよう、ただ液体窒素を吹き付けても
温度が上がったら爆発は抑えられないぞ」
「分かっています。以前爆弾処理の
研修を受けた事がありますから」
亮にとっては着陸の時のショックでの爆発を抑えて
コックピットの計器が壊れないようにしたかっただけだった。
~~~~~
「亮、オートパイロットのチェックが終わった」
ロビンが亮に無線で話しかけてきた。
「どうでしたか?」
「一応大丈夫だ。オートパイロットで着陸できる」
「了解、ありがとうロビン」
「いや、後はジェニファーの腕次第だ」
「ええ、ジェニファーが太ももの怪我の
痛みで集中力があるか心配です」
「彼女もプロだ。信じてやってくれ」
ロビンはまるでジェニファーの上司のような言い方をしたが
それはフレイザーがロビンに言った事の受け売りだった。
「そうですね」
亮はジェニファーが痛みのある状態なら
アドレナリンの分泌が多くて
集中力が増す可能性がある信じたかった。
まもなく亮の目の前にアメリカ軍輸送機が現れ、
その後部からバケツ大の物が
ロープに繋がれ近寄ってきて割れたフロントガラスを
抜けてコックピットに入って来た。
「これで準備OKだ。ジェニファー頼むぞ」
亮はジェニファーを思い浮かべ呟いた。
~~~~~
ジェニファーがヒッカムアメリカ軍に着陸すると
AH-IWスーパーコブラがローターを回して待機していた。
「大丈夫ですか?」
空軍隊員がF/A-18Fを降りるジェニファーに声を掛けた。
「ええ、それでライフルは?」
「はい、言われた通りレミントン
M40A5にM118弾を用意しました」
隊員は足を引きずっているジェニファーに肩を貸した・
「ありがとう」
「しかし、ゴム弾でなくて良いんですか?もし失敗したら・・・」
隊員はたとえ優秀と言われている
ジェニファーでも弾が外れて爆弾に当ったら
7007便は一瞬で墜落しまう事を危惧した。
「大丈夫よ。私はどんな事が有っても亮を救うわ」
ジェニファーの目は近寄りがたい程、真剣な目をしていた。
~~~~~
「亮、状況はどう?」
美咲が心配になって連絡をしてきた。
「ホノルル空港へあと30分で到着します。
ただ左側車輪の上に 爆弾は取り付けられているのが
発見されたので今から爆弾を取る作業をします」
「どうやってするの?」
「平行して飛んでいるヘリコプターから
爆弾をライフルで狙って落とします」
「えっ?そんな事出来るの?」
美咲はとんでもない事に声を上げた。
「ええ、それしか方法がありません」
亮の返事に美咲は自分が何の手伝いも
できないもどかしさに弱弱しい声で答えた。
「分かりました、成功を祈ります」
「ありがとう、美咲さん。また後ほど」
亮の元気な声に美咲はホッとした。
~~~~~
「亮、今ヘリで飛び立ったわ」
ジェニファーの力強い声が聞こえた。
「了解です。足の具合はどうですか?」
「大丈夫よ。それより飛行機の下は気流が
乱れるからゴム弾は使えないので
M118弾を使うわ」
「そう言うと思っていました。競技用弾ですね」
亮はジェニファーの事を信じきっていた。
「ただ、ストラット(脚柱)に爆弾が
テープで取り付けられているので
その上の電池ボックスを壊すか
繋いであるコードを切るしかないわ」
「それじゃあ、コードを切るしかないですね。
電池ボックスは当たった瞬間
に電流が流れる可能性があります」
「そうね、それが良いわね」
ジェニファーはたった0.7mmのコードを
500m先から5秒足らずに
撃つ難しさにため息をついた。
「ジェニファー、コードを切るほうが簡単です」
「えっ?」
簡単に答える亮にジェニファーは首をかしげた。
「コードに弾丸を当てる必要がないからです」
「どういう意味?」
「爆弾のコードに当てずにコードの
横を通過させれば良いんです。
そうすればライフルの弾丸が作る
真空状態がコードをぶっちぎる」
「そうかそれなら後方から狙えるからもう少し
時間の余裕が出来るわけね」
「はい、その通りです。しかもAH-1W
コブラの最高速度は時速281kmですが。
高度から落下すれば時速300kmを超えるはずです」
「さすが亮ね」
亮とジェニファーの会話を聞いていたコブラのパイロットは
後部座席のジェニファーに見えるように親指を立てた。
JOL7007便は着陸のために徐々に高度を落とし始め
高度3200フィート(約1000メートル)を飛んでいた。
「ロビン、微妙なコントロールがいるのでオートパイロットを切ります」
亮は無線でロビンに話した。
「おい、大丈夫か?」
「はい。どうにか」
亮はオートパイロットを切りフラップ
(主翼の後翼にある小翼)出し
車輪を下げた。
「亮、7007便をレーダーで確認したわ」
ジェニファーから無線が入った。
「了解」
ジェニファーが乗っているヘリコプターAH-1W
コブラは高度を上げ
落下速度を上げる準備を始めた。
「JOL7007便目視!行くわよ。亮!」
ジェニファーは後部座席のフードを開け
ライフル銃を出した。
ライフル銃をヘリコプターのエッジに固定する
パイロットが声を掛けた。
「行くぞ!ジェニファー」
コブラは降下を始めスピードは時速300kmを超えた。
「ジェニファー気流が乱れれるので7007便の
後方に付けられるのは
せいぜい10秒だ」
「了解、10秒有るだけでありがたいわ」
パイロットにジェニファーは答えた。
時速300kmの風圧はジェニファーの
顔は吹き飛ばされそうに
強く息を吸うことすら難しかった。
「亮、ヒットポイントまで後5秒」
「了解、大丈夫か?ジェニファー」
「大丈夫よ。3」
コブラは7007便の左サイド300mを
通過し下にもぐりこんだ。
「2」
「1」
コブラは車輪の後ろ300mに着けた。
「パーン」
ジェニファーは1発目を撃った。
「修正、後1m」




