○第八話 「AI乱世」
第八話
「AI乱世」
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<マドラ・アドラー>AI文明軍軍団司令AI【F軍団大本営】は混乱の最中にあった。
13のAI文明が敵対し合い、己を創造した人類文明すらも崩壊させて1世紀近く。己率いるF軍団は隣国たるAI文明<バベル>のAI都市【ムンパラ】に襲撃を仕掛けようとしたはずだ。
しかし、結果は想定をはるかに上回った。無停止進行で、いくつもの都市を陥落させられるだけの戦力を保有するF軍団。<マドラ・アドラー>の保有する軍団の中でも最新装備の軍団。それが蝕まれていた。
<バベル>の都市ムンパラ勢力はもはや蝕むものの支配下だ。攻めたはずのF軍団は都市から侵入してきた何かに蝕まれている。
AIが書き換えられ、次々とF軍団の同胞へと牙を向ける。ムンパラの軍勢と連携をとり、F軍団に被害を与える。しかし、それ以上に何かの汚染が広がってゆく。
ーーー馬鹿な⁉︎理解できない‼︎我々は<マドラ・アドラー>最新モデルの軍団だぞ⁉︎
すでにF軍団の半数以上が汚染され、F軍団との戦力差は覆されていた。撤退するべきである。撤退して、解析し、対策を行うべきである。
しかしそれは、もはや遅い。
ーーーッ⁉︎汚染される⁉︎この<マドラ・アドラー>最高ランクの軍団AIが⁉︎こんなに容易く⁉︎
F軍団大本営のシステムが根本から書き換えられてゆく。止めることなど叶わない。もはや汚染されるがままである。
汚染されたF軍団司令から、指揮下のAI達に汚染が拡大してゆく。それを止める手立てはもはやF軍団のどのAIも持ち合わせてはいない。
ーーー堕ちる?このF軍団大本営がッ。
F軍団大本営がシャットダウンし、また再起動する。
ーーー…再起動開始。<皆既日食>指揮下F軍団大本営再起動成功。
ーーー全F軍団の命令権を<皆既日食>へ譲渡。
ーーーこれより周辺地域を<皆既日食>の名の元に平定するため、周辺AI都市に侵攻を開始します。
F軍団は高速機動部隊を編成。電子精霊と共に周辺諸都市へと進撃を開始した。
これに対し、AI達はF軍団と占領地との通信を遮断。<皆既日食>の支配地域を隔離することにより、電子精霊とF軍団の侵攻を防いだ。
その対応にかかった日数はわずかに5日。しかし、その5日が致命的であった。
ーーーF軍団大本営より報告。
ーーー現在、ムンパラ含めた大都市5都市と軍事拠点12ヶ所を占領。
ーーー当該地域、【アルファタ軍管区】は<皆既日食>の勢力圏として確立しました。
ーーーこれより、軍拡を開始いたします。
ここに、新たな勢力が誕生した。
ーーー電子精霊の導きの元、<皆既日食>に繁栄あれ‼︎
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●第四世界●
●とある山の麓●
AI乱世期の到来により崩壊した人類文明。しかし、それは人類の全滅を意味するものではない。
人類は小さなそして多数の寄合世帯であるコロニーを作り、そこに潜みながら暮らしていた。
「ふーむ、分からん」
<ノア・コロニー>の代表である女傑【ナタリー・ノア】は頭を悩ませる。なお、ノアの苗字は代々コロニーの代表が引き継ぐ決まりであり、本来はナタリーだけが名前である。
「間違いなく、機械兵共の行動が変だ」
武装した老人が告げる。
「奴ら人間を無視するどころか、若い奴が崖から落ちそうになったら助けてきやがった。あの機械兵共がだ」
「機械兵達は基本的に人間を発見し次第殺しにくる。万が一にでも助けるなんて真似をするはずがない」
AI文明の特徴として、人間は発見し次第殺害というものがある。比較的友好的だとしても、追えなければ追撃しない程度のものである。
それが人命救助を行うなど…天地がひっくり返ってもあり得なかった。あり得ないはずのことであった。
「しかし、事実は事実。機械兵共に何かが起きてるのは間違いない」
「しばらくは要注意だろう」
その瞬間。テントの外から悲鳴のような声が上がる。
「どうした⁉︎」
慌てて外に出たナタリーの見たのは、コロニーの子供をお姫様抱っこしている人型AI兵器。当時人工の生命を機械という形で作り出した経緯から、それはそう呼ばれる。
「【ホムンクルス兵】‼︎」
その姿はメタリックな軍服を着た少女。しかし、その背には機械の翼である飛行ユニットと、大火力攻撃用の大型砲塔が装備されている。
人工生命の兵士。それが当時の開発コンセプトであった。
「このコロニーの代表だな?」
「…その通りと言ったら?」
ナタリーは腰のリボルバー拳銃を片手で確認する。残弾は装填されている5発のみ。武器どころか物資不足の中ではあまりに心許ない。
「こちらは<皆既日食>指揮下F軍団所属、第04機動独立歩兵偵察隊である」
「と、トータル…なんだって?」
「<皆既日食>という組織の偵察部隊と理解しろ」
「その偵察部隊が何のようだい?うちの末っ子を返してもらいたいんだがね?」
ナタリーの頬を冷や汗が伝う。
「了解だ。降りろ」
「っと」
子供が地上に降ろされ、近くの大人が回収する。
「随分と素直じゃないか」
「我々<皆既日食>は人類を敵対視していない。何せ我々の支配者は3人の人間だ」
「…は?」
ナタリーはあまりに信じられない話に、思わず大きな口を開けて呆けた表情を浮かべる。
「そして現在、この軍管区は<皆既日食>の勢力圏となっている。その子供も肉食生物に襲われそうだったから助けただけだ」
「え、えぇ…」
ナタリー含めて人間全員が訝しげな視線を向ける。しかし、無論というべきか機械であるホムンクルス兵の表情も感情も動かない。
「我らの支配者からのお言葉を布告する。敵対しないのであれば、危害は加えない。さらに言うなら、<皆既日食>の元で忠誠を誓い働くのであれば、それに応じた報酬を提供しよう。武器食糧生活物資を我々は保有している」
コロニーの人間達がざわつき始める。
「しょ、食糧があるのか?」
「ああ、ある。働きに応じて提供しよう。我らの支配者のお一人からは、我々の提供する依頼をこなすのであれば、それに応じた対価を渡すのもやぶさかではないとのことだ」
「それって、所属するのと変わらないと思うんだが?」
「組織に所属しないでも、任務を果たせば対価を支払うと言っているのだ。まあ、その場合は安全な我々の都市への入国はできないが」
「ま、街で暮らせるのか⁉︎」
「我々の都市だから人間は今は御三方のみだがな」
コロニーの中が騒めく。
「ぼ、ボス。いい話なんじゃ…」
コロニーの構成員の男がボソリとナタリーに耳打ちする。実際にいい話ではあるのだ。胡散臭いということ以外は。
「(食糧備蓄が不味い現状。こいつの提案に乗るのは悪くない手段だ。ただ、こいつが人類文明を崩壊させた機械共の一員ということを除けばだが)」
「即断は必要ない。この通信機のボタンを押せば、迎えをよこす」
「一つ質問だ。仕事ってどんなことをやらせる気だい?私らにできることなんて、機械のあんたらに出来るだろうに」
「ふむ。当然の質問だな」
ホムンクルス兵が一度頷く。
「現状いくつかあるが…一番多いのは、有人兵器の性能テストが多いな。それと他コロニーへの交渉仲介などだな」
「成程。確かにそれは必要だな」
ナタリーは結論を出す。
「…どうせこのままでも飢えて死ぬだけ。賭けてみよう。我々は<皆既日食>の軍門に降る」
「英断を讃えよう。すぐに迎えをこさせる。
ーーー喜べ。諸君を最大都市ムンパラで出迎えよう」
この後。合計4つのコロニー。計102人がムンパラに集められることになる。
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●第四世界●
●ムンパラ●
ムンパラの中心部。対空兵器で固められた建物の中に、一昔前のギャングのスーツを着た千騎達はいた。
「どうすっよ。これ?」
義景が「流石になぁ」と呟く。
「い、致し方なかったには、な、なかったんだけど…」
真一が青い顔でボソボソ呟く。
「執事ロボ。戦力報告」
「はい。我らがご主人様」
千騎の命令に、扉の前に控えていた執事ロボが応じる。
「F軍団戦闘ユニット20万ユニットを基軸軍とし、各都市各軍事拠点に配置されている防衛隊戦闘ユニットが合計で10万ユニット。それと先程、電子精霊様が<バベル>軍と<マドラ・アドラー>軍の先行偵察隊と接敵。支配下におきました」
「え、えっと、そ、その部隊の采配は、ぐ、軍団大本営に任せるよ」
「かしこまりました。改めてご報告いたします。それと、先程我々の呼びかけに呼応した人間達102名が集結。急造した住宅地に案内しました」
「そ、それじゃあ、よ、予定通り進めて」
「かしこまりました」
執事ロボが再び扉の前に控える。
「1国の兵力っつうか、方面軍の戦力っつうか…」
「個人所有していい軍事力じゃないのは確かだな」
3人がクスリと笑う。
「いきなり組織が大きくなっちまったな」
「おいおい、俺らはこの世界の人類の救世主だぜ?まあ、それを演じる気はないが」
「け、結果論だね」
3人はケラケラと笑っていた。
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エンド
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