○第七話 「告発」
第七話
「告発」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜の激闘の翌朝。撤退を終えて一息ついたサラは、とある人物とコンタクトを取っていた。
*********
*********
●第一世界●
●日本●
●喫茶店【アルカトラズ】●
「やあ、数日ぶりだね」
「ふん、テロリストが何の用だ?」
サラの前に座ったサラリーマン姿の男が、不機嫌そうにサラに問う。その視線から、サラを胡散臭そうに見ていることがありありと伝わってくる。
「実はしばらくの間、日本国内での<創世記>の戦闘行為を自制することにしてね。それを日本のスキル保持者を取りまとめてる君に伝えにきたわけだよ」
「何だと?お前ほどのテロリストが活動を自制?正気か?」
「まさかテロを自制するって言って正気を疑われる日が来るなんて思わなかったよ」
サラが紅茶を飲もうとした瞬間。サラの手から紅茶の入ったカップが滑り落ち、机の上に紅茶を撒き散らしながら転がる。
「ああ、ごめんごめん。どうもまだ手の感覚が戻っていなくてさ」
「手の感覚?何があったのか?」
サラとサラリーマン風の男が机を拭きながら会話を交わす。
「うん。実は拷問されてね。両手の甲を短剣で貫かれて、左手に至っては傷口広げられたんだよね。まあ、こっちが襲ったから自業自得なわけだけど」
「お前を拷問…?何かの冗談か?」
サラをよく知るサラリーマン風の男は驚きの表情を浮かべる。
「雇った傭兵は死んでないけど全滅。スキル保持者の仲間が控えてなったら、今頃は指が全部無くなってたかもね。まったく、平和ボケ日本人とは思えない残虐さだよ」
「日本人?まさか、無登録のスキル保持者か?」
「みたいだね。私も敵に回したくないし怒りも買いたくないから、名前とかは言わないけど…それなりの人数を抱えてる組織の構成員だろうね。知らずに襲ったからこっちは大損だよ」
サラがため息を吐き出す。
「手を出さなければ何もしてこないだろうけど、一度敵対したら劇的に反応するタイプだね。多分」
「スキルはどんなスキルだ?」
「さあ?スキルが一つにしては多才すぎるから、かなり応用の効くスキルか。もしくは、史上初のダブルスキル保持者か。一つ言えるのは、戦闘力は中の上から上の下ってところかな。しかも広範囲攻撃もできるよ多分」
「めちゃくちゃ危険な奴じゃねぇか」
正体不明の残虐かつ戦闘能力の高いスキル保持者。普通に危険人物である。
「つまり活動を自制するってのは…」
「うん、刺激しないためだよ」
サラリーマン風の男が少し考え込む。
「一つヒントをあげるなら、<皆既日食>と自称してたよ。私達は組織名か何かと思ってるけど…」
「自称の可能性もあるな。まあこちらでも危険分子の調査はしておこう。というか、何でそんな奴に手を出す話になる?」
「まあ、ちょっとした作戦のためだったんだけど、まさにドラゴンの尾を踏んだみたいな感じだよ」
サラが両手をぶらぶらとさせる。
「それと、さっきの組織名か何かって考察だけどかなり確率は高いよ。初めて会うだろう同じスキル保持者への反応も薄いし、片腕吹き飛ばした時も俺達を舐めるなって言ってたし」
「片腕を吹き飛ばした?何やってんだお前」
「仕方ないじゃん。私も拷問されてたし。それに再生させてたから問題無いよ」
「再生?戦闘系じゃないのか?」
「そこら辺なんだよね。スキル一個じゃあ説明できないんだよ」
「ふむ…やはり放置するには危険すぎるな」
サラリーマン風の男が席を立つ。
「動く気かい?」
「ああ、こう見えて警察官だからな」
「流石、日本国スキル保持者集団<特務現象対策室>の室長だね」
「そうでなくても、警察として十分に勤めは果たすさ」
ーーー翌日。とある匿名ニュースが日本国内に衝撃を走らせる。
『スキャンダル発覚‼︎現役警察官。それも警視が過激思想のテロリストと密会。ハニートラップにハマったか?』
最大の問題は、告発された警察官が日本国のスキル保持者を取りまとめる部署の室長であったことであろう。
*********
*********
●第一世界●
●日本●
●とある秘密拠点●
「あっはっはっは‼︎やってくれるね‼︎ <皆既日食>‼︎」
テロリスト拠点の一つでサラは大爆笑といった様子で、笑い転げている。
「まさか、裏では会話できる程度の関係だった<特務現象対策室>室長との関係を、普通にスキャンダルとしてすっぱ抜かれるとはね‼︎確かに、テロリストと警察が密会って大問題だもの‼︎しかし、あの感じからもっと脳筋な手段を取ると思ってたけど、侮れないね‼︎」
「笑い事ではありません。魔女様」
パソコンをいじっていた女子高生が、サラに報告を行う。
「各組織に潜り込んでいるスパイからの報告では、明らかに魔女様のことだと各組織が大混乱です。あちらこちらの支部からも問い合わせが…」
「顔はモザイクしてるけど、知ってる人間が見ればわかるだろうし、最近の科学技術なら十分外せるだろうしね。まったく、やってくれたよとしか言えないね」
サラはワインを口にする。
「しかし、本当に厄介な相手を怒らせてしまったかもね。友好的といかないまでも、中立には持っていきたいね」
「いかがなさるおつもりで?」
「まあ、向こうのアクション待ち…どうやら待つまでもなかったね」
着信音を聞いたサラが電話に出る。相手は千騎であった。
「やあ、よくもまあやってくれたね?」
『元気なようで何より。その様子だと、我々からのお礼は気に入ってくれたか?』
「ワイングラスを地面に投げ捨てたくなるくらいには」
『それは上々。しかし、まさか警察とも繋がりがあるとは思わなかったな。おかげでいい告発ネタになったわけだが』
「スキル保持者は同胞だよ?同志ではなくても、繋がりくらいは確保しておくさ。その方が後始末が楽だからね」
『ふむ、なるほど』
サラは交渉を始める。
「正直言って、私達は君らを敵に回したくないと思ってる。ここらで手打ちにしないかい?謝罪としてこちらが賠償するからさ」
『こちらは報復も終わってる。完全な終戦を希望するなら300万で手を打つが?』
「その程度でいいなら」
『チッ、もう少し絞れたか。まあいい。ではまた連絡する』
電話が切れる。
「ヤクザの甥っ子にしては甘いね」
「今後はいかがなさいますか?」
「<皆既日食>のことかい?ああいう手合いは身内にしておきたいけど、組織詳細がわからないからね。ひとまず友好関係を築くところかな?巻き込まれた<特務現象対策室>には悪いけどね」
実際、<特務現象対策室>は完全に巻き込まれた被害者であった。
「でも、こういう真似ができるということは、<皆既日食>には最高クラスのハッカーか、それに関するスキル保持者がいるようだね」
*********
*********
●第一世界●
●日本●
●とあるカラオケの一室●
「これで、一先ずは終わりが見えたな」
スマホを仕舞い込んだ千騎が、カラオケの個室でボソリと呟く。
「スキル保持者は他にもいるとは思ってたが、まさかテロリストグループがあって、その上警察とも繋がりがあったとは。真一のスキルが無きゃ分からんかったな」
「う、うん。だ、だいぶ驚いたよ」
義景の言葉に真一が同意する。
「【電子精霊使役:Lv8】。電子精霊を作り出し、使役する能力。この世界においては正にチートスキルだな」
「し、正直、い、異世界だとまるで、や、役に立たなかったけどね」
「ネット環境がねぇからな」
3人がクスリと笑う。
「さてはて、思わず警察にまで喧嘩を打っちまったが」
「電子精霊による匿名の告発だ。誰も特定できんよ。なぁ?真一」
「う、うん。ぼ、僕の電子精霊達にネット世界で、ふ、不可能はないよ」
「素晴らしい」
千騎が拍手する。
「さて、停学期間終了まで時間もない。次の世界に向かうとしようか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エンド
最後までお読みいただきありがとうございました‼︎
ブックマークや感想をいただけると、とても励みになります。
次回も是非よろしくお願いします‼︎




