○第六話 「改名」
第六話
「改名」
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新たな組織名となった<皆既日食>こと元<太陽の民>は、組織名を統一させるために第二世界のラグナの冒険者ギルドにやってきていた。
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●第二世界●
●ラグナ●
●冒険者ギルド●
「冒険者クランの改名は完了いたしました。本日よりクラン名は<皆既日食>となります」
「どうもありがとうございます」
書類を受け取った千騎が立ち去ろうとすると、受付嬢が呼び止める。
「すみません、ギルドから<皆既日食>に指名依頼が入っておりまして」
「は?指名依頼ですか?」
千騎は依頼票を受け取る。
「来月末にモンスターの間引きを行う連合侵攻、ですか」
「はい。いかがでしょうか?」
千騎が一つため息を吐き出して、悲しげな表情で答える。
「申し訳ない。少々多忙になりそうでして。今まで通り冒険者として動く気はありますが、日帰り程度にしておこうかと」
「え?そ、そうなんですか?」
「ええ、大変心苦しいのですが…」
「そうですか。残念です」
「こちらも実力をつけるチャンスではあるので、是非受けたいところなのですがね」
千騎が戻ると、真一がギルドの建物の中に入ってくる。
「そっちはどうだった?」
「う、うん。そ、相当な数の酒が余ってるみたいで、か、かなりの量を確保できたよ」
「獣人はどれだけこの国に酒売ったんだ?ってか、そんなに作れるのかよ」
千騎が呆れた表情を浮かべる。
「ひ、必要なら、じ、獣人の商人と渡りをつけてくれるって、あ、アルターエゴの支部長が言ってたよ」
「そのほうが良さそうだな。場合によっては…ここから拠点を移すことになるかもしれんな」
ボソリと千騎が小声で呟く。驚きの表情の真一を連れて千騎は外に出る。
「さて、一先ずやることは終わったな。あとは日本に戻って宝石の取引をして終わりだな」
「こ、このまま日本に戻る?」
「ああ、そうだな」
数瞬間無言の時間の後、真一が話を切り出す。
「あ、あと1ヶ月ちょっとで停学明けだよね?ど、どうする気なの?」
「んー?」
微妙な表情で千騎は考え込む。
「正直、戻りたくはねぇな。冤罪の上に信じてた奴らに裏切られた訳だしな」
「で、でも、あ、明らかにおかしいと思う。な、なんでそんな事に…」
「分からん。分からんが、俺はもうあの連中に信用信頼は置いてない。俺のダチは真一と義景だけさ」
「せ、千騎君…」
しばらくすると、屋台で串焼きを食べていた義景が合流する。
「おっす、なんの話してんだ?」
「俺らの今後だ。停学明けとかのな」
「あ?ああ、千騎には戻る手段もない訳じゃないもんな。俺らはそもそもがダメだが」
「ぼ、僕は、ふ、不登校だし」
「俺は真一とは違って不良もどきの不登校だしな。学校になんて顔出せねぇぜ」
そう、この場の全員が何らかの理由で学校に行けない行かない。偶然であるが、それが異世界で活動するにはちょうど良かった。
「自立に足る金を手に入れるか、定住に足る世界が見つかればいいんだがな」
「第二世界であるこの世界も、第三世界のギャング世界も、定住にはちっと向かないからな」
千騎は元の生活に戻る気はなかった。戻ったとしても早々にドロップアウトする気であった。
「第三世界が落ち着いたら、第四世界に向かう。それまでに兵隊も揃えよう」
「教育係はなんて?」
「2.3人ならすぐに集めるそうだ。頭を使わない戦闘員程度ならすぐに5.6人は集められるそうだ」
「ひゅう♪悪くねぇ…死ぬ可能性が拭えない第四世界への護衛としてはな」
「一応身内になるんだ。何の気なしに肉壁になんかするなよ?まあ、ピンチの時には肉壁にでも何でもして構わんが」
「クックック、本当に千騎もそっち側の価値観になってきたな」
「それは褒めてるのか?」
「微妙なところだな。俺はそっちの方が好きだがね」
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●第一世界●
●日本●
●とある夜道●
取引を終えた千騎が、月から降り注ぐわずかな月光の中を進む。既に夜も遅く、本来であれば高校生が外に出れる時間ではなかった。
「ーーー千羽 千騎君かな?」
「ん?」
千騎が目を凝らすと、そこには数名の男女がいた。その手には、拳銃らしきものやバットのようなものが握られている。
「穏やかじゃないですね。どちら様でしょうか?」
「一先ずは、新人類とでも言っておこうか?」
透き通るような、女の声が響く。
「君がとある人物にとって重要人物のことが分かってね?人質としてその身柄を抑えさせてもらう。ああ、抵抗は自由にしていいよ。まあ、旧人類たる君ではどうにもならないと思うがね」
「言ってくれますね」
数人の人間が拳銃を向けてくる。
「ああ、本当にこの世界はクソだな」
「それは同意だね」
千騎がゆっくりと拳を構える。
「ふふっ、愚かだね?素手程度で拳銃の相手になるとでも?」
「逆に聞くが…。
ーーーこの程度でどうかなるとでも?」
身体能力をフル活用して集団の懐まで接近した千騎が、拳銃を持つ人間達の腹に強力な一撃を加えていく。
「がっ⁉︎」「ごふっ⁉︎」
「遅いな」
「なッ⁉︎」
女の顔面向けて千騎が足で蹴りを放とうとするも、女は何とか危機一髪それを回避する。
「(見えてる?いや、これは)」
「(勘に従ってなかったら、もろに喰らってた)」
回避した女と千騎が睨み合う。銃を持った人間達は意識を失って地面に倒れていた。
「いやはや、君の前で新人類を名乗るのは軽率だったかな?もしかしてだけど、スキルガチャボールで身体強化系のスキル貰ってたりする?」
「ん?何だご同輩か。悪いが答えは不正解だ」
千騎が魔法を発動し始める。
「さらに悪いことを伝えよう。ご同輩だとしても敵は敵。命を狙っ…てはないが、敵意を持っていた以上はその報いを受けてもらおう。ああ、死体の処理に関しては何とかなるから安心してくれ」
「わぉ、平和ボケ日本人とは思えない発言。しかも安心できない安心事項」
「おいおい、俺を狙ったってことは多少は調べたんだろ?俺の家族とかな」
「ヤクザの組長の甥っ子だっけ?正直舐めてたね」
「正直で結構。しかし、俺以外のスキル保有者か…実に残念だ。ご同輩が敵とは」
千騎の周囲をバットを持った男達が囲う。
「君がスキル保持者ならきちんと名乗ろうか。
ーーー私はスキル保持者による新秩序を目指す組織、<創世記>を率いてる【サラ・グリモワール】。裏世界では<古の魔女>と呼ばれてる」
月明かりが周囲を照らす。サラと名乗った女はスーツ姿の若い白人の女であった。
「では、こちらも問わせてもらっても?」
「<皆既日食>の千羽 千騎」
「トータル・エクリプス。皆既日食か。それが組織名か、それともスキルにちなんだ異名か。いささか興味があるね」
「興味を持ったところで変わらん。お前らはここで何も知ることができずに倒れるのみだ」
両者が睨み合う。
「OK。私達<創世記>の活動目的は、スキル保持者による新秩序の確立。スキル保持者である君に危害を加えるのは方針に反する。ここは撤収させてもらうよ」
「知ったこっちゃないな。敵意を向けておいてタダで帰ろうなんざ、食い逃げと変わらないぜ?」
瞬間、バットを持っていた男数人の足が、飛んできた光の短剣に貫かれる。
「「「ぐぁっ⁉︎」」」
「今のは…光の短剣?」
夜空に数十もの光の短剣が現れる。
「全員退避‼︎」
「遅い。ひれ伏せ。
ーーー≪神聖なる短剣≫」
光の短剣が次々と男達を切り裂いてゆく。
「(ふん。殺さない程度には傷つけないと、後々やりやすい相手と侮られないとも限らないからな)」
「くっ‼︎」
パァン‼︎との発砲音の後に、光の短剣が発射された弾丸を弾く。
「ははっ、短剣で銃弾を弾くのはアニメだけにしてほしいね」
「残念だが、そのくらいならどうにでもなるんだ」
両足の腱を切られて地面に倒れるサラが、乾いた笑みを浮かべる。その顔には冷や汗が流れていた。
「さて、レディ・サラ…でいいのかな?」
「ミスの方が嬉しいかもね」
「んじゃ、ミス・サラ。一応命は見逃してやる。だが、恐怖は刻んでもらおう」
空に浮かんでいた光の短剣を手に取った千騎が、その光の短剣をそのままサラの右手の甲に振り下ろす。
「いっッ⁉︎」
「おいおい、たかが手だけだろ?まだまだ拷問は始まったばかりだぜ」
「いっつつつ⁉︎」
光の短剣を抜くと、サラは傷口を抑えて呻き声を上げる。
「さて、色々吐いてもらおうか?」
「さ、流石ヤクザの甥っ子だね。それとも<皆既日食>はスキルヤクザなのかな?」
「スキルヤクザって語呂悪いな。まあ、完全な不正解でもないか」
千騎が手のひらで光の短剣を弄ぶ。
「組織の概要に構成人数。幹部の情報に保有戦力。ああ、スキル保持者が何人いるかも聞いておこうか?」
「流石に仲間になってくれないと話せないね」
「立場が分かってないようだ」
「ぐっ⁉︎」
サラの左手の甲が光の短剣に貫かれる。今度はすぐには抜かず、ゆっくりとぐちぐちと傷口を広げる。
「あっ、ぎぃっ…」
「俺は拷問役でお前は捕虜だ。しかもここじゃあ国際法もクソもない。人権なんて気にせず拷問できる」
千騎が光の短剣を抜く。
「さて、次はどこを」
光の短剣を振り上げた瞬間。光の短剣を持っていた右手が吹き飛ぶ。狙撃。それも対物ライフルとかそのレベルの口径であった。
「ぐぁあああ⁉︎腕、俺の腕が⁉︎」
「ふぅ、急死に一生ってやつだね」
地面に倒れ伏したサラが額を拭う。
「てめぇ‼︎狙撃手を隠してやがったな‼︎」
千騎が周囲に光の短剣を展開させる。
「これで痛み分けとしないかい?こっちの手勢はほぼ全滅だし、私もこのザマだしね」
「舐めるなよ‼︎この俺を‼︎俺達を‼︎
ーーー≪慈悲深き 聖癒≫」
千騎の失ったはずの肘から上の右腕が、光と共に再生していく。
「…光の短剣に回復まで。まさかダブルスキル保持者?いや、君は本当に面白いね」
「こっちはいい気分のところを腕吹き飛ばされて、ブチ切れてるがな」
「拷問しようとしてたってかしてた人間の言うことじゃないね」
千騎はブチギレながらも、情報から戦況を判断する。
「(明らかに狙撃手がいる。しかも、無音で対物ライフル並みの口径の攻撃をぶちかます奴だ。スキル保持者?厄介な相手だが、もっと火力を上げれば何とでもなる。だが、ここは日本。後が面倒になる)」
「今夜はここまでにしないかい?流石にそろそろ人が来る。他人の目に触れるのは君の本意でもないだろう?」
「ちっ、次会ったときは覚えてろよ」
千騎は光の短剣を全て消すと、サラ達が撤収を開始する。
「それとこれは私の連絡先。うちに移籍とか相談があるなら連絡をくれると嬉しいな」
「両手と両足の腱を切られた奴とは…お、もえ、な」
そこで気がつく。サラは普通に立っている上に両手に怪我もなかった。
「私もスキル保持者だからね。このくらいはできるさ」
「へっ、どの口がダブルスキル保持者だとかほざいてやがったんだ。まあ、連絡先はもらっておこう。連絡するかは知らんがな」
こうして夜の激闘は幕を下ろしたのであった。
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エンド
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