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○第四話 「ギャングワールド」

第四話

「ギャングワールド」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


千羽 千騎がスキルガチャボールで手に入れた異能。それは【異世界門】と呼ばれる、異世界と異世界を繋ぐ門を作り出す能力であった。


そしてこの能力で行ける異世界は、そのスキルレベルに比例する。そして異世界門のレベルは5。5つの世界へと渡航が可能であった。


第一世界地球。

第二世界迷宮世界。

そして今。第三世界への門が開かれた。



*********

*********

●第三世界●

●大陸共和国●

●とある街の裏道●



「ぐぁ⁉︎」



スーツ姿の男が吹き飛ばされ、壁に激突して意識を失う。



「これで全員か?」

「み、みたいだね」



スーツの男から奪ったアサルトライフル片手に、千騎は周囲を見渡す。周囲には同じくスーツ姿の男達が倒れていた。



「たく。カツアゲかと思えば銃を抜きやがって」

「こいつらギャングとかそっち系か?護身用のナイフくらいしかなかったから、結構ボコっちまったが…」

「殺しをしたわけじゃないから、文句を言われる筋合いはないな。謝罪金代わりに銃はもらうがよ」



千騎達は武装解除の意味合いと略奪も含めた銃器の回収(没収)を行う。



「ーーーおいおい。連中自滅してやがるぜ」

「あ?」



突如として現れた新たなスーツ姿の一団が、銃口を向けつつ千騎達に歩み寄っていた。



「すまないな少年達(ムチャーチョス)。足元のそいつらは俺らのシマでやんちゃした奴らでな。ケジメをつけさせなきゃなんねぇ。譲ってはくれねぇか?」

「お好きにどうぞ?我々に銃を抜いた分は回収しましたので」



千騎が奪った拳銃を見せる。代表して話していた白いシルクハットを被った恰幅のいい中年の男が、厳しい表情から一転して笑みを浮かべる。



「金じゃなくて銃ならいいぜ。当然の権利だからな。手間を省いてくれたお礼に、今ならおまけも付けてやるぜ?」

「…ならばお言葉に甘えて」



連行される男達を尻目に、代表の男が千騎達に語りかける。千騎が少し考えた後、代表の男に提案を行う。それは事情説明も含めた物であった。



「実は我々は別の国から来たのですが、交易をしたくてですね。出来れば売れそうなものなどを教えていただけると幸いなのですが」

「交易?商売したいってことか?」

「店舗や拠点を作る気はありません。多少自国からの品を持ち込んで、売れれば程度です。昔で言うところの行商というところでしょうか?」

「ふむ…」



代表の男は少し渋い顔で考え込んだ後、笑みを浮かべて千騎達に答えを返す。



「そのくらいなら俺達のシマで好きにやるといい。俺らに害がなければ見逃すさ。んで、何が売れるかだったな。やっぱ密造酒と密造タバコと武器だな」

「密造酒とタバコですか?」

「ああ。政府がやった禁酒法と禁煙法のせいでな。うちは秘密酒場で儲けてる。いい酒があるなら買ってやるぜ?」

「真一」

「う、うん?な、何?」



千騎に声をかけられた真一がぴくりと反応する。



「土産に買った酒あったろ」

「あ、う、うん」



真一が手荷物からワインボトルを取り出す。代表の男の表情が変わる。



「こりゃあ…ワインか」

「ええ。【銅葡萄酒】というワインです。まだ買えますし、試飲してみますか?」

「それなら近くの秘密酒場に行こう。酒飲みの意見も聞きたい」

「ええ、勿論」



*********

*********

●第三世界●

●地下秘密酒場●



薄暗い店内で5人程度のスーツ姿の男達と2人のスーツ姿の女達が、ワンショットグラスに入れられた銅葡萄酒を見つめている。



「こいつは…」

「匂いは薄いけど、随分と綺麗な色」

「かなり丁寧な仕事だな」



代表の男が一口飲む。その瞬間に表情が驚愕一色に変わる。他の人間も次々とワインを飲み干す。



「…こいつは、密造酒として出していいレベルを超えてやがる。高級酒ほどじゃあねぇが、ただの客には惜しくなるレベルの酒だ。富裕層向けだな」

「丁寧な仕事だな。相当な酒好きが作ってるぞ」

「いいわねこれ」

「いかがでしょうか?」



代表の男が全員の顔を見渡す。そして決定を下す。



「…いいだろう。ちょうどいい酒をどう仕入れようかと頭を悩ませていたところだ。買えるだけ買ってやる」

「では、3日後の夜までにはご用意させていただきます。よろしいでしょうか?」

「の前に値段だ。いくらで売る気だ?」



当然の疑問であった。しかし、重要な問題である。



「逆に聞きますが…おいくらで店頭に出すおつもりで?」

「ふむ…店主、どうだ?」

「へい、ボス。最低1グラス3共和国ドルそこにいろいろ手間を考えると…」

「5共和国ドルか。んじゃあ、こっちの提示は1樽1200共和国ドル。うちにしか下さないと約束できるなら、1500共和国ドルでもいい。もちろん1樽あたりだな」



代表の男が葉巻に火をつけると、千騎が問いかけを行う。



「ところでお名前をお聞きしても?」

「ん?ああ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺はここら辺をしめてる<ルノータ・ファミリー>のボスで【ルノータ・カポーネ】だ。ドン・カポーネと呼んでくれ」

「では、ドン・カポーネ。1200共和国ドルで構わないですが、独占契約はこの銅葡萄酒のみにしていただきたい」

「ほう?他にも種類があると?」

「仕入れは可能です。しかし、余所者の我々には、ドン・カポーネと<ルノータ・ファミリー>の経済力と勢力。そして度量の判断ができない。他の手段は残しておきたいのが本音なんです」

「…」



ルノータが葉巻の煙を天井に吐き出す。



「ふっ、ふふ…がははは‼︎このドン・カポーネ相手にテメェなぞ知らないから保険をかけさせろと言うなんてな‼︎しかもそれを本音と言う‼︎

ーーーいいなお前さん。その取引、1500共和国ドルで契約しよう。勿論、その酒…銅葡萄酒だけで構わねぇ」

「ボス、いいので?」

「ああ。このドン・カポーネにここまで物怖じせずに話す胆力と、取引への真摯さを俺は買う」

「では、至急ワインの手配をしてきます」

「ちょっと待て」



ルノータが護衛の男に耳打ちする。



「どのくらい貿易をする気かは知らねぇが、拠点があることに越したことないだろう?ちょうど空いた倉庫がある。そこを拠点に使うといい。それと片付け含めて新人の準構成員を貸してやるから、しばらく自由に使え」

「ご厚意感謝いたします」



千騎が書類を取り出す。



「では取引契約書の作成を」

「悪いが、商品を確認してからだな。こっちも不安要素はあるからな」

「かしこまりました」



千騎が書類を仕舞う。



「いいビジネスパートナーになれることを祈る。それといい加減名乗ってもバチは当たらないと思うが?」

「そういえば名乗りがまだでしたね」



ごほんと千騎がワンテンポ入れる。



「私は<太陽の民>リーダーで家名が千羽、名前が千騎と申します」

「センキ・センワだな。覚えておこう」



両者が握手を交わした後、千騎が立ち去るとルノータは安堵の息を吐き出す。



「これでやられた酒造場の補填は効くか?」

「やられたのがワイン製造の酒造場でしたからね。ちょうどいいと言えばいいのか…」

「それとも、罠に嵌められてるか、か」



そう、あまりにも状況が噛み合っていた。


始まりは同盟していたはずのギャング<シークル・ウィッカー>による酒造場への襲撃であった。酒造場は壊滅的な被害を受け、復旧までは時間がかかる。おまけにその酒造場は数少ないワイン用の酒造場であったのが不幸であった。


だが、襲撃者は全員生け取りにされ、酒の手配もできそうである。あまりに全てが上手くいきすぎている。正直いって、<太陽の民>は怪しい。



「ただの踊らされる間抜けなピエロで終わるか。それとも幸運の女神にキスを決めてもらった超ラッキーな男か。かけてみようじゃねえか」

「ボスほどラッキーな男は組織にいませんぜ」

「その通りだ。ルノータ・"ラッキー"・カポーネと呼ばれた俺の幸運を信じろ」

「「「うっす‼︎」」」



1人の部下がニヤニヤとした表情でルノータに問いかける。



「シークルの連中はどうしやすか?」

「襲撃した以上、その結果は敵対だ。襲撃部隊を酒場に突撃させろ。酒造場も見つけ次第荒らせ。奴らの構成員は見つけ次第殺せ」

「「「うっす」」」

「さあ、野郎ども‼︎忙しくなってきたぞ‼︎」



*********

*********

●第二世界●

●アルターエゴ商会・ラグナ支部●



「これはこれは<太陽の民>の皆様。本日はどのようなご用件で?」



<アルターエゴ商会>の支部長が千騎に問いかけを投げかける。多少朝イチに来た千騎への皮肉も含めた挨拶であった。



「先日購入させていただいたワインの件でして」

「銅葡萄酒のことですか?何か問題でも…」



支部長の表情が曇る。確かにあの商品には多少の問題があったからである。


そもそも銅葡萄酒は、獣人と呼ばれる種族の民が作って輸出している品である。しかし、この世界の人間…【ヒューマン】の人々は異種族に対して差別的である。つまるところ、銅葡萄酒に対して差別的であり購入する人間は少ない。故に輸入量も少なかった。そう、今までは。


国の方針変換。獣人国家との友好政策により、過剰輸出されていた銅葡萄酒を含めた獣人製の酒が大量に国内に流れ込んできた。明らかに消費しきれない量の獣人製の酒が市場に溢れかっていたのである。



「(うーん、異民族だし獣人の作った酒でも大丈夫かと思ったんだが、やはり受け付けなかったか?だけど説明した時は大丈夫だったんだが)」



倉庫を圧迫する銅葡萄酒に困り果てた支部長は、異民族たる千騎達に銅葡萄酒を販売したのである。勿論、全て説明してである。



「いえ、実はお土産に持ち帰ろうとしたのですが、別の方が試飲されまして」

「そういえば、親戚へのお土産にされると話されておりましたね。ということは、改めてのご購入でしょうか?」



支部長が微妙に欲を見せる。



「その通りですね。その方が是非うちで大量に買い取りたいとおっしゃっておりまして。

ーーー銅葡萄酒と余ってると話されていた獣人の作った酒を、在庫全て買い取らせていただきたい」

「す、全てですか⁉︎」

「ええ。全てです」



驚く支部長の前に、義景がパンパンに物が入った皮袋を積み重ねていく。



「近隣の場所で集められる物も集めていただきたい。これを金に変えて買えるだけね」

「し、失礼します」



支部長が袋を開けると、そこにあったのは同じ重さの砂金と取引されるという胡椒がパンパンに詰まっていた。それが8袋。



「こ、こんなに⁉︎ものすごい量になりますが」

「構いません。あちらもそれなりの需要を見込んでるでしょうし」

「…かしこまりました。責任を持って手配いたします」

「一先ず、明日用意できる分だけ取りにきますので、用意をお願いします」

「かしこまりました」



千騎達が立ち去ると、支部長はすぐに指示を飛ばす。



「獣人達の酒を全て出荷する‼︎明日すぐに出せるように用意‼︎それと獣人の酒で困ってる商人連中に声をかけろ‼︎代金はうちもちだ‼︎」

「「「「「はい‼︎」」」」」



供給過多であった獣人の酒が<アルターエゴ商会>ラグナ支部店に流れ込む。供給と需要が噛み合った時。それは利益を生み出す瞬間であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エンド

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