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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
~ 第一部最終章 ~ 新たなる時を刻み始める世界
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第十三話 想定外の出来事は起こるもの その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 一体何があぁもロティさんを駆り立てたのだろう??


 恐らく自分の恥ずかしい私生活を聞かれたくなかったのでしょうね。ほら、普段はしっかり者だけど家の中では部屋でだらしなく過ごしているぞ――とか。


 まっ!! それはさて置き!!


「先ずは腹ごしらえですよね!!」


 若干行儀が悪いと思われるが偶には食べながら歩くのも乙なものさ。


 自分に体の良い言い訳を言い聞かせつつ紙袋の中から件の品を取り出した。



「ほぉ……。太陽の下で見るとまた一段と美しく見えるな」


 こんがりと焼かれたチーズに太陽の光が当たると美しい艶とテリが視界を喜ばせてくれる。


 酸味の利いたチーズの香が鼻腔に届けばあら不思議、只でさえ空腹なお腹さんが更に減ってしまうではありませんか。


「それでは頂きます」


 食に、そして職人に感謝を述べてパンを一口頬張ると幸せな香が鼻の穴をスっと通り抜けて行った。


「うん!! 美味しい!!」


 奥歯で噛み応えのあるパンをぎゅっと噛むとパン本来の甘味を感じる。それから微かに遅れてチーズの酸味が甘味をキュっと引き締めて美味さの相乗効果を生み出す。


 二口噛めば唾液とパンとチーズの味が複雑に絡み合い言葉ではとてもじゃ無いけど説明出来ない旨味が口内に生まれた。


「ふぉん……。んっ……。プハっ!! はぁ……。まだまだ食べられそうだな」


 ものの数分で一つ目のパンを食べ終えるとお次はあまぁい粉砂糖が塗されたパンが御目見えした。


 ふふっ、チーズの酸味でちょっと舌が疲れている所にこの甘味はきっと響くだろうさ。



「ふぁむっ!! ふぉむ……。んんむ……。やはり大正解だ」


 これ単体で食べるとかなりの甘さなのだろう。しかし先程のチーズの余韻もあってか、甘い物が苦手な人でも美味しく食べられる優しくもちょっとだけ強い甘さが舌に嬉しかった。



 油で揚げられたパンを前歯で裁断するとジュクっとした食感が歯と舌を喜ばせ。酸味によってぜぇっぜぇっと息を切らして俯いていた舌に甘味という名の補給剤が届くと舌が面を上げて再び前へと走り出す。


 ちょっとした味変のつもりで買ったけど……。次からは肉系とチーズ系の御供としてこの甘いパンを買うのも一考だな。



「ふぅっ、美味しかった。そ、そしてぇ!! 本日の主役の出番ですよ!!!!」


 意を決して紙袋の中からお目当ての品を勢い良く取り出すと、神に捧げる供物の様にクルミパンを青き空へと向けて掲げた。



 ふふっ、ほぉら……。もう美味しそうに見えるぞ……。


 天から降り注ぐ陽光にパンの表面が照らされると美しい艶を放ち街の匂いに紛れて小麦の香りがふわぁっと漂いそれが鼻腔に届くと我儘な食欲さんが早くそれを口に含めと叫ぶ。


 分かっていますよ?? 今から体内に入れてあげますのでもう少しお待ち下さいませ。



「それでは!! いっただきま――す!!」


 人目も憚らず勢い良くクルミパンに齧り付いたその刹那。


「ふ、ふ、ふま過ぎる……」


 歩道のド真ん中で思わず立ち止まってしまい口から素直な言葉が零れてしまった。



 小麦の風味、パンの程よい柔らかさ、そして乾燥させたクルミの硬い食感。


 その全てが舌の上で混ざり合うとどうでしょう?? 世界最高の幸せが口内に溢れてしまうではありませんか。


 優しい硬さのパンを奥歯で噛むとその中のクルミが食欲をグングン増進させるコリっとした音を奏でる。


 パンの甘味にクルミの微かな苦みが良く似合い二人は手を取り合い口内という舞台の上で美しい舞いを披露してくれた。



 あぁ……、何んと言う幸せだろうか。


 クルミパンを食すというありふれた行為だというのに俺は今、世界で一番幸せな者であると自負してしまう。


 願わくばこのままこの幸せがずぅぅっと続きますように……。



 一つ目をあっと言う間に食べ終え、続いて二つ目のクルミパンを食していると南通りから北へと向かって来る騎馬隊の姿を視界が捉えた。



「「「「……」」」」


 全身を包む鎧と兜には一切の汚れが見当たらず太陽の光がその穢れ無き白銀に拍車を掛け、騎手を乗せる馬の鬣も前から流れて来る風によって華麗に泳ぐ。


 十名の騎士達が駆け抜ける様は正に圧巻と言う文字が良く似合い街道沿いには。



「おぉ!! 国王親衛隊の騎馬隊か!!」


「相変わらず美しい出で立ちだな……」


 彼等を見学しようとして態々歩みを止めて見学する者達も居た。



 へぇ、久し振りに拝見しましたけども。規律を重んじると言った言葉が良く似合う御姿ですね。俺達、パルチザンの様な武骨な姿とは真逆ですもの。


 歩道の脇に併設されているゴミ箱に空っぽになってしまった紙袋を入れ、口内に残る最後のクルミパンをモッチャモッチャと咀嚼し続けていると騎馬隊の先頭が徐々に馬の足を遅らせ俺を悠々と見下ろせる位置に馬を停止させた。



「……」


 あ、あのぉ――……。私、何かしましたでしょうか??


 犯罪若しくは法に触れる不法行為は一切していませんよ??


 王都内の規律を守る彼等に対して若干居たたまれない雰囲気を醸し出しつつ鎧の塊を見上げていると、その中から陽性な声が零れ出て来た。



「まさかとは思ったけど!! レイド君じゃあないか!!」


 うん!? この声って……。



「やあ!! 私だよ!!」


 騎馬隊の先頭の騎手が兜を脱ぐとそこから現れたのは以前、大勢のパルチザンの兵士達を集めて行われた大規模な訓練中に出会った国王親衛隊の隊長。


 ヘインズ=レーゼンビーさんであった。


「あぁ!! お久し振りですね!!」


 取り敢えず口の中を空っぽにして随分と高い位置に居るヘインズさんに向かってキチンと頭を下げた。


「あはは!! まさかこんな所で出会うとは思わなかったよ!!」


 短く纏まった茶の髪は少し汗ばんで濡れ、額から頬へ伝い落ちて行く汗が明るい笑みに良く似合っている。


 彼が華麗な所作で下馬すると笑みを浮かべたまま右手を差し出したので彼の右手を軽く握った後、取り敢えず軽い質問を投げかけてみた。


「自分も同じ感想ですよ。今まで訓練だったのですか??」


「国王親衛隊の任務の一つである王都内の見回りを終えて今戻って来た所さ」


 ほぉ、そうなのですか。


 だから額に汗を浮かべ、馬も若干疲れた顔を浮かべているのですね。


「レイド君は……。あぁ、そうか。君は第三軍に編入されたんだね」


「詳しくは軍規で言えませんが……。御想像にお任せします」


「ふふっ、規律を重んじるその姿。変わっていないね」


 これこそが軍属足る者の姿なのですよ。どこぞの上官みたいに犯罪行為スレスレの行為を行うなんて以ての外ですから。


「所で……、レイド君。これから時間はあるかい??」


「これからですか?? えぇ、一応」


「良かった!!!! これは何んと言う僥倖なのだろう!!!!」


 ヘインズ隊長殿、此処は公共の場なのでもう少し声量を落とすべきかと思います。


 現に。


「「「「……??」」」」


 歩道を歩いている人達が不思議な目を浮かべて隊長の笑顔を見つめていますからね。



「実はこれから王宮内の訓練場で訓練を行う予定なんだけどね??」


 はい、物凄く嫌な予感がしますっ。


 彼は一度かの地にてしがない木っ端兵士である俺を国王親衛隊に誘ってくれた。ヘインズ隊長の言葉を受け取るとあの時の記憶が鮮明に思い出されてしまった。



「隊員達に訓練を施してくれないかな!!」


 ほら、当たった。


 どうして嫌な予感ってのは物の見事に当たるのでしょうかね。この世の不思議の一つに加えても良いんじゃないか??



「じ、自分には分不相応だと思われます。そ、それに急用を思い出してしまいましたの……」

「安心したまえ!! 文句を言う隊員達は私が言い聞かせるから!!」



「い、一般人が王宮内に足を踏み入れるのは流石に不味いの……」

「それも気にする必要は無い!! 活動範囲は訓練場に限定すれば大丈夫だしそれにあの絶死帯から生還した英雄ならきっと国王様も喜んで迎える事だろうさ!!」



 あぁ、畜生……。どんどん退路が塞がれて行くぞ……。


 足りない頭でこの珍事を回避出来る算段は無いか?? と。物凄い勢いで頭を回転させて理由を探していると。


「絶死帯から帰還?? おぉ!! 隊長!! その者が以前仰っていた者か!!」


 他の隊員と比べて恵まれた体格の男性が下馬して俺を悠々と見下ろした。



「初めまして英雄殿!! 俺はヘインズ隊長の下で副隊長を務めるヴァイゼルだ」


 ヘインズ隊長と同様に兜を脱ぐと俺に向かって右手を差し出してくれる。


 黒色の短髪に豪快な笑い声、鎧を身に纏っていても体に積載している筋力量は普通の男性と一線を画すと容易に伺い知れる。


「は、はぁ。どうも」


 取り敢えず差し出された右手を掴むと嬉しい力が右手を通して体に伝播した。


「ほぉ――……。貴様、噂通り中々やるみたいだな??」


「その噂が色々気になりますけどヴァイゼルさんが考えている様な人物ではありませんよ??」


 俺の右手を取ったままニっと笑っている彼にそう話す。


「そう謙遜するな!!!!」


 だから声量ですよ!! 此処は公共の場なのですから大きな声を出して通行人を驚かせてはいけません!!


 それと!! やけに目立っちゃっているからそろそろ解放して下さい!!


 通行人達から興味津々といった感じの好奇の目を寄せられて居たたまれない感情を胸に宿しているとヘインズ隊長がヴァイゼルさんと何ら変わりの無い声量で彼に命令を下した。



「よし!! それじゃあ行こうか!! ヴァイゼル!! レイド君を脇に抱えて移動するぞ!!」


「はい?? 自分はこれから先程思い出した急用に赴くので……」


「了解した!!!!」


「ちょ、ちょっとぉ!!!!」


 兜を被り直したヴァイゼルさんが大きな腕で俺の体を脇にガッチリ抱えるとそのまま馬に跨り、此方の意見を無視したまま北上を開始してしまった。



「ヘ、ヘインズ隊長!! 流石に一般人が王宮内に入ったら不味いですって!!」


「だから安心したまえ!! 私が後で話しを通しておくから!! それに隊員達も君の指導をきっと気に入るさ!!」


 ほ、本当に人の話を聞かない人だな!!


「ヘインズ隊長は宜しいかも知れませんけど!! 自分の所為で軍に迷惑を掛けたくないんです!!」


 王宮内で無関係の一般人が由緒正しき国王親衛隊の方々に指導を施している姿をお偉いさんが見付けたらどう思います!?


 きっとあの大馬鹿野郎は誰だ!! 無許可で王宮内に足を踏み入れた責任を取らせてやる!! と考えるに違いないですからね!!



「文句を言う奴が居たら私が捻じ伏せてやる!! ははっ!! 今日はきっと最高な訓練になるぞ!!!!」


「お願いですからは、は、話を聞いて下さ――――いッ!!!!」


 俺の前を軽快に駆け続け行くヘインズ隊長にそう叫ぶものの彼の耳にもう俺の声は届かないのか、巧みな手綱さばきで馬を操り石畳の上を駆け続けて行く。


 俺はさながら猟師が艱難辛苦を乗り越えて狩りで得た獲物。


 ヴァイゼルさんに抱えられたまま馬の疾走に合わせて激しく上下に揺られ、徐々に近付いて来てしまった王宮の高い城壁を戦々恐々の想いを胸に抱き地面と平行になったまま茫然と眺めていたのだった。




お疲れ様でした。


人によってはゴールデンウィークが始まったかと思われますが、読者様は如何でしょうか??


楽しい連休の始まりに相応しいお出掛け、若しくは時間を楽しんで下さいね。



さて、これから始まる数話は第二部に繋がる御話となります。見方によっては完全なる蛇足ですがどうしても執筆しなければなりませんのでどうか温かい目で見守って頂ければ幸いです。




沢山応援、いいねを。そして!! ブックマーク並びに評価をして頂き有難う御座います!!!!


連休の始まりに嬉しい知らせを受け取り執筆活動の励みとなりました!!!!


本当に嬉しくて読者様が想像している以上にニヤニヤしてしまっているので、この顔を引き締め引き続きプロット執筆に取り組もうと考えております。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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