第十三話 想定外の出来事は起こるもの その一
お疲れ様です。
本日の前半部分の投稿になります。
目に優しく無い明るさを放つ太陽と初春の季節に誂えた様な青き空、そして王都の道を覆い尽くす人の群れが放つ陽性な音の数々。
本日も王都は喧噪という言葉が可愛く思える程の音と好環境に包まれており人々はその中で思い思いの方向へと向かって足を進めている。
「いっけねぇ!! 忘れ物しちゃった!!」
歩道上で流れ行く人波の中を逆走しながら駆けて行く青年。
「あそこの店なら今日は二割安くしてくれる筈よね」
鼻息を荒げつつ今晩の献立を考えながら目的の店へと大股で向かって行く女性。
「まぁ……。そちらの主人も??」
「そうなんですよ。物資を運ぶだけでお金が貰えるからと言って第二軍と一緒に西へ向かって行ってしまったんです」
「大丈夫よ。戦いは強制じゃあないんだし。それに?? 二か月もの間、旦那の鬱陶しい顔を見れなくて清々するじゃない」
「いや、そこまでは……」
歩道の隅で井戸端会議を開いている主婦の方々等々。
此処、アイリス大陸最大規模を誇る王都は歩道を歩いているだけでも多様多種の人が住んでいると教えてくれている。
各々が放つ熱気と明るさは王都の広さを加味すれば砂粒程度のモノだ。しかしそれが交わり膨らんで行くと、とても人が放つモノとは思えない程の轟音と熱気に昇華していた。
そしてそこで井戸端会議を開いている主婦さん??
もう少し旦那さんの心配をすべきだと思いますよ??
チラっと聞こえた話の内容からして家を支配しているのは貴女達なのでしょうが、旦那さんは家族構成を築き上げる必要な要素の一つなので存外に扱うのは如何なものかと思いますっ。
仕事に行きたがらない、稼ぎが少ない、中々家に帰って来ない等。
文句を挙げたら枚挙に暇が無いと思いますが愛を誓い合った者なのですから愛しむ心を持って接するべきなのですよ……。
「うっそ!! 運賃って帰りの分も貰えるの!?」
「えぇ、その様に聞きましたけど」
「くっそ――。あの駄目夫めが!! 私にその事を黙って出て行ったな!? 帰って来たらとっちめてやる……」
今、この瞬間。一つの家庭で悲劇が起こってしまう事が確定付けられてしまった。
拝啓、名前も顔も知らない旦那様へ。
世の女性、特に主婦と言う肩書を持つ女性に嘘は決して通じない仕組みなっておりますので次からは正直に話すべきです。そうすれば不必要で理不尽な痛みを享受する事もありませんので。
彼女の夫に対して人知れず鎮魂の祈りを捧げていると暴食龍が縄張りとしている王都中央の屋台群が見えて来た。
「うっわ……。何だよアレ……」
人一人の体さえも入り込む事が出来ぬ人口密度の流れが屋台群の前を時計回りで蠢き続け、人々が踏み鳴らす足音が地鳴りの様に響く。
その熱気と来たら……。
四ノ月だってのに人の群れの上にモヤモヤとした蜃気楼が出現する程だ。
「先に荷物を宿に置いて来て正解だったな。あそこに向かって突貫する勇気は流石にありませんよっと」
自分の行程の要領の良さに自画自賛しつつ当然の如く呆れた人口密度から迂回を開始した。
「焼きたてホカホカのお肉は如何ですか――!! 今日ならなんと二割引き!! 食べなきゃ損だよ――!!」
屋台の裏側から聞こえて来る店主の威勢の良い声と炭の優しい香り。
「カラっと揚がった揚げ物は美味しいに決まっている!! お腹が空いたら是非当店に起こし下さいね――!!!!」
此処からでも聞こえて来る油のフツフツとしたカラっと何かが揚がる腹の減る音。
人々が放つ喧噪に紛れて聞こえて来る腹の空く音と匂いの数々の直撃を受け取った俺のお腹が大変不機嫌な叫び声を上げてしまった。
そりゃあ朝から何も食べず数時間歩き続ければ腹も空きますよね。人の流れに乗って適当に屋台の食べ物を摂取すれば体の目的は達成出来る。
だが!! 此処は我慢の一択だ。
空腹は最高のおかずと言われている様に目的の品を食すまでに腹を、そして心を仕上げておかなければならないのですよ。
俺の大好物であるクルミパン。
それを快く提供してくれるパン屋さんまで後少しなのだからもうちょっと我慢して下さいね?? 我儘なお腹さん。
己の腹を軽く擦りつつ王都中央から北大通りに到着し、逸る足を懸命に抑えながら素敵なパンを提供してくれるココナッツへと向かって歩み続けた。
「はぁ――……。今から気が重いぜ」
「何がだよ」
「ほら、これから一か月の間。ず――っと荷物を運ばなきゃいけないんだろ??」
「この大陸の命運が掛かった戦いが始まるんだ。俺達はそれの手伝いをするんだからもう少しやる気を出せよな」
北大通に併設してあるベンチに腰掛けて寛ぐ数名の男性達の声が鼓膜をそっと刺激する。
「んな事分かってんだよ。お前は荷物を運んでからどうする?? 戦いに参加すればまたお金が貰えるらしいけど」
「それも結構な額だぞ!! 十日間戦えば更に三十万ゴールド貰えるんだからな!!」
「ば――か。それで死んじまえば本末転倒だろうが。俺は荷物を運び終えたらさっさと帰るね。帰りの移動費も貰えるんだし」
「えぇ――。折角だから一旗揚げようとは思わないのか??」
「思わん!! 命あっての物種さ!!」
そこの男性さん、俺も貴方の意見に賛成ですよっと。
限りある命を失ってしまえば折角稼いだ貨幣は無意味になってしまいますし、それにこれからも続いて行くであろう人生の奥ゆかしい深い味を味わう事も出来ない。
戦いに不慣れな者があのオークの大軍勢を目の当たりにしたら十中十、体が竦み思う様に行動出来なくなるのが目に見えている。
まぁそうならない為にも一般人をある程度戦えるにまで鍛えるのが俺達の仕事なんですけどね……。
オークの中には魔法を使用する個体やら強化された個体、更には巨躯のオークも居る。
アイツ等相手に人間はどうやって戦うのだろうか??
以前、レフ中尉が仰っていた様に隊列の最前線に盾役を置いて後方から矢で穿つのだろうか??
恐らくそれが最も効率的に敵の数を減らす事が出来る戦術だろう。盾役の穴が開いてそこから敵が侵入して来たら後方で待機していた兵達が敵を蹴散らし、空いた穴を防ぐ為に新たなる盾役を投入する。
一気苛烈に敵を殲滅出来ない代わりに兵の命を守れて尚且つ敵の戦力を削る。
ある程度相手の戦力を削ったのなら騎馬隊を敵の群れの中に突入させて戦力を分断させ、歩兵の最大火力で叩き潰す。
それを呆れる程何度も繰り返して敵を殲滅……、か。
圧倒的物量がある事を前提とした戦術だが、恐らく上層部の方々もこの戦法を取るでしょうね。
数十万の兵が全てパルチザンの様な戦士達ならまた違った戦術を取る事が出来るが彼等は戦う事を義務付けられていない言わば戦いの素人なのだから。
でもなぁ……。それはあくまでも高い士気を保った状態での話だし……。
隊全体の士気を保つ方法も考えなきゃいけないよね……
たかが下士官の階級の者が大局の流れをアレコレと考えても意味が無いと思われるがそれでも否応なしに戦局がどう動くのか考えざるを得ない。
これでも一応、第三、四分隊約五十名の命を預かる隊長ですからね。戦局を考える事は隊員の命を守る事に直結しますので悪い事じゃないと思います。
「う――ん……。やっぱり無難過ぎる作戦だよなぁ」
ブツクサと独り言を唱えつつ体の前で腕を組んで歩く。
見方によっては気持ち悪い所作で目的地に向かって進んで行くと鼻腔が小麦のあまぁい香りを捉えた。
「本当に良い匂い!!」
「うん!! 早く食べたいよね!!」
おっ!! いつの間にか到着しましたね!!
お昼時を過ぎた所為かいつもよりも客足は少ないものの、素敵な外観の扉から数名のお客さん達が紙袋を大切に抱きつつ出てくれば。それを捉えた外に居るお客さん達が期待感を籠めた瞳を浮かべて扉の中へと吸い込まれて行く。
俺の目の色も客達と同じ様にキラキラと輝いている事だろう。
花の甘い香りに誘われる蜜蜂の様に、沢山のお客さん達の期待感溢れる手で何度も触れられた扉を開いて店内にお邪魔させて頂いた。
「いらっしゃいませ――!! どうぞご自由にお選び下さいね――!!」
ほぉっ、今日も相変わらず元気一杯で何よりです。
店内に足を踏み入れるとほぼ同時にココナッツの看板娘。
ロティさんの快活な声が体の中をスっと通り抜けて行く。
鼻をスンっと動かせば腹が減るパンの香りとチーズの若干の酸味の匂いが嗅覚を楽しませ、店内の中央及び壁際に設置してある机の上に並べられているパン達が視覚を通して空腹を刺激した。
沢山食べるだけでは無く味にもそして雰囲気にも五月蠅い腹ペコ龍が王都の屋台群だけでは無くこの店を贔屓にしているのも理解出来ちゃうよ。
だが、見ているだけでは心は満たされても腹は満たされない。
取り敢えず御盆を取って本日の朝ご飯兼昼食の取捨選択に取り掛かりましょうかね!!
入り口付近に置いてある御盆を手に取ると先ずはココナッツの主戦力がドッシリと腰を据えて鎮座している店内中央へと向かって行った。
「いらっしゃいませ!! 本日のおすすめは……。あぁ!! レイドさん!! お久し振りですね!!」
ロティさんが俺の姿を見付けるといつもと変わらない素敵な笑みを浮かべて此方を出迎えてくれた。
「お久し振りです。今日も元気そうだね」
茶の髪をフルっと楽しそうに揺らした彼女へ向かってそう話す。
「はいっ!! でも、最近は滅法忙しくて……。自分でも気付かぬ内に疲れているのか何だか外に出る元気が無いんですよ」
「いつもより忙しい感じなの??」
むっ!! このチーズパンは外せないな!!
視界の中央に飛び込んで来たたぁくさんのチーズを乗せて焼かれたパンを一つ取ると御盆の上に乗せてあげる。
「ほら、大勢の人達が西へ向かうじゃないですか。王都に住む人だけじゃなくて外から来た人達もこの店に訪れてくれるのは嬉しいのですが……」
「あぁ、成程。想定外の忙しさで体が驚いている感じなんだね」
このパンはどうしよう……。油で揚げられて沢山の粉砂糖が塗されているパンを見付けたものの俺の腹は判断に迷っていた。
『これから沢山食べるのだから味変も必要だぞ??』
肉やガッツリした物を所望するお腹さんに対し。冷静沈着な頭脳さんからの有難い意見を受け賜り一度二度取ろうか、取らないでおこうかと甘い判断の所作を取った後に件のパンを御盆の上に乗せた。
「仰る通りです。パーネも文句ばっかり言って……。私だって疲れてるんだから我慢しなよと言っても聞く耳を持ってくれないんですっ」
あはは、頬を膨らませて怒っても全然怖くないからパーネさんはお姉ちゃんの憤りを流すんですよ??
「稼ぎ時何だから嬉しい悲鳴じゃないのかな」
「両親的にはそうだとしても私的にはも――ちょっと慎ましい忙しさを所望したいです。レイドさんもえっと……。その……」
何だろう?? その先を妙に言い難そうにしているな。
んおぉぉぉおおおお!!!! クルミパンが残っているじゃあないか!!
これは絶対外せないので二個取りましょう!!!!
「西へ向かうのですよね??」
「へ?? あ、あぁ。うん。それが俺の任務だからね」
い、いかん。真面目な話の途中だってのに浮かれた顔でクルミパンを取ってしまったぞ。
どこぞの腹ペコ龍じゃあないんだから此処は一つ、彼女の御話を真剣に聞きましょうかね。
「これまで沢山の人達が西へ向かって行きました。私も街の人々の喝采を浴びて出発して行く彼等を見送ったのですが……。果たして何名の方が帰って来られるのか。そういった不安な感情が歓喜に湧く街の雰囲気よりも勝ってしまったんです」
「ロティさんがそうやって想ってくれるだけで西へ向かう者達は嬉しく感じる筈ですよ。誰だって葬式の時の様にくらぁい顔で見送られるよりも笑顔で見送って欲しいですからね」
「それはレイドさんもですか??」
「俺?? まぁ……、そうですかね」
左手で御盆を持ち、右手を顎に添えてそう話す。
「ふふっ、それではパーネと一緒にとびっきりの笑みで見送りますね!!」
「有難う御座います。その笑みを力に変えて粉骨砕身、任務に励みます」
「もう大袈裟ですよ。あっ!! そうだ!!」
おっと、いきなりどうしました?? ちょっとだけ距離感を間違えていますよ??
此方に向かって数歩歩み寄って来た彼女から取り敢えず一歩分後退して話し易い距離感を保ったまま尋ねた。
「何か思い出したのですか??」
「ウマ子ちゃんですよ!!」
うん?? 足が妙に遅い俺の相棒がどうかしたので??
「ほら、いつかウマ子ちゃんに乗せてくれるって言っていたじゃないですか。明日は久し振りにお休みなのでその休みを利用して何処か出掛けようかなって考えていまして」
あぁ、そう言えば言っていたな。
最近の目の回る忙しさと地獄の業火すら生温い特訓の所為で忘れていましたよ。
「明日はお休みなのですか?? それなら構いませんよ。俺も明日、厩舎に一度寄ろうと考えていたので」
いきなり現れてさぁこれから決戦に向かうぞ!! と鼻息を荒げてウマ子に伝えても。
『貴様……。突然顔を出して無理難題を押し付けるとは何事か!!』 と。
分厚い唇をクワッ!! と開いて俺の髪の毛を前歯で食んで来そうですものね。
「やった!! それじゃあウマ子ちゃんが居る厩舎にお邪魔しますね!!」
「足が遅いからそこまで楽しめませんよ?? あ、それと……。厩舎の位置は……」
人に聞かれても不味くは無いが一応軍規ですのでね。
微かに腰を曲げて耳打ちをする仕草を取るとロティさんが右耳を傾けてくれる。
『この街の北西に厩舎はあります。そこで午前十時に集合しましょうか』
『えぇ、分かりました』
今度は彼女から耳打ちを受け取り、そして漸く通常あるべき男女間の距離感にお互い身を置くと柔らかい笑みを浮かべた。
「今から楽しみですよ。ルピナスさんも居るかもしれませんのでパンの差し入れを御持ちしますね」
「有難う御座います。では、そろそろ会計に向かいますね」
「はいっ、沢山お買い上げ有難う御座います」
ロティさんから接客業に携わる者なら誰しもが百点満点を越える点数を付けるであろう笑みを受け取るとその足で会計へと向かう。
乗馬に慣れていない者にとってウマ子の足の遅さはお誂え向きなのだが、その……。ウマ子は大変賢い馬なので足が遅い事を好都合だと知られたら絶対怒るだろうなぁ。
『私の足が遅い事を見越してこの者を乗らせたな!!』
人目も憚らず御主人様に襲い掛かる愛馬の姿が容易に想像出来てしまいますよ。
受付の列に並びつつ乗馬初心者でも楽しめ尚且つ馬の機嫌を取る難しい方法を頭の中で思い描いていると。
「次の方――!!」
「あ、はいっ」
支払の番が訪れた事を知らせる腹の奥にドスンと重く響く女性の声が響いた。
「おっ!! いらっしゃい!! あんたが例の人だね??」
はい?? 例の人とは一体何の事でしょうか??
「私はロティとパーネの母親。ロワンって名前さ。頼んでもいないのにいつも二人があんたの事をアレコレと楽しそうに伝えて来てねぇ」
二人の看板娘さんの母親が手慣れた手付きと所作でパンを紙袋に詰めていく。
小豆色の頭巾に白色の前掛けを着用し、彼女の手先は程よく厚みが有りこの仕事に長く携わっている事を物言わずとも証明している。
柔和な線を描く眉と目元とちょっとやそっとの出来事じゃ狼狽えない圧を身に纏う。
俺が理想とする主婦像を具現化したかの様な外見に思わず頷いてしまいそうになってしまった。
「あ、初めまして。自分の名前はレイド=ヘンリクセンと申します。この店をいつも利用させて頂いております」
目上の人には敬意を。
オルテ先生から体の……、いいや。魂にまで刻み込まれた指導に従いロワンさんに向かってキチンとお辞儀を放った。
「あはは!! 軍人なのに本当に礼儀正しい人だね!! こんなおばちゃんに向かって態々挨拶を放つ必要なんてないのに」
「目上の人に対しては敬う様にと、幼い頃から指導を受けて来ましたので」
「へぇ、良く出来た人じゃないか。えっと、お会計は千ゴールドになるよ」
うむっ!! 本日も良心的な値段で恐れ入ります。
懐から使い古された財布を取り出してお会計の机の上に現金をそっと置く。
「毎度あり!! ふぅ――……。しっかし、最近の熱狂はどうにかならないのかねぇ。忙しいのは店としては大助かりだけど……」
ロワンさんが現金を机の下に仕舞うと漸く空きが目立つ様になって来た店内へ視線を送る。
その瞳の色は嬉しい忙しさというモノではなく、何処か寂し気な印象を人に与えるものであった。
「何か御不都合でも??」
「お前さんも知っていると思うけど既に第一軍と二軍が西へと出発した。その時の熱狂と来たら……。この大陸に渦巻く平和を勝ち取る声は日に日に増して行くんだけど、それだけでどうにかなる問題なのかと心配しているのさ」
「……」
彼女が言っている事は的を射ている。
あの大軍勢を人間だけの力でどうにか出来るのかと問われてその答えに詰まっているのが良い証拠さ。
だが、市井の方々に安心と安全を届けるのが俺の仕事だ。
「お任せ下さい、と声を大にして言えませんが……。平和を勝ち取る為、自分達が死力を尽くします」
一人でも多くの人を街に帰してあげたい。ありきたりな答えだが俺の心に浮かんだそのものの言葉を一切の装飾を加える事無く彼女に伝えてあげた。
「その目を見て安心したよ。あんたの様な人達が大勢いればきっと大丈夫。あ、それと娘達が気もそぞろで仕事にならないと思うから早い内に帰って来て無事を伝えてあげなよ??」
優しい声色と相手の体を真に労わる瞳。
ロワンさんの優しい心を受け取ると俺の心に柔らかい光が灯った。
「それは何故です??」
「ぶっ!! あはははは!! おっかしい!! 今時、こんな朴念仁が居るとはねぇ!!」
いや、急に大笑いされましても……。自分としては本心で尋ねたんですけど。
「いいかい?? 此処だけの話さ」
ロワンさんが耳打ちをする所作をするのでそれに従い右耳を傾けようとするが……。
「わ、わ、わぁぁあああああ――――――ッ!!!! お、お母さんそれ以上先は話しちゃ駄目だよ!!」
ロティさんの緊急参戦によってそれは叶わなかった。
「レイドさんいつも有難う御座います!! はいっ!! どうぞ!!」
「ど、どうも……」
ロティさんが実の母親からパンが詰められた紙袋を強奪するとかなり強引な形で此方に渡してくれた。
「明日楽しみにしていますね!! またのお越しをお待ちしております!!」
「あ、はい。それでは失礼しますね」
「何だよ、これからが面白い所だってのに」
「お母さんは黙ってて!!」
店内に居るお客さん達の目が大きく縦に開かれる喧噪を背に受け取ると、御馳走を脇に抱えまだまだ元気一杯の太陽の下へと歩み出た。
お疲れ様でした。
これからお出掛けした後に後半部分を執筆しますので、次の投稿まで今暫くお待ち下さいませ。




