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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
~ 第一部最終章 ~ 新たなる時を刻み始める世界
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第十二話 政治的扇動に翻弄される民衆 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「レイドです。レフ少尉、いらっしゃいますのでしょうか??」


 コホンと一つ咳を払って喉の調子を整え、経年劣化した木製の扉を数度叩く。


「――――。ん――、入ってよぉ――っし」


 俺の杞憂を良い意味で裏切ってくれる呑気な声が扉越しに聞こえたので。


「失礼します!!」


 覇気のある声で入室を上官に伝えると扉を開いて本部に足を踏み入れた。



「よう!! 久々だな!!」


 人の心に陽性な感情を与えてくれるレフ少尉の笑みよりも俺は机の上に広げられた沢山の資料とアイリス大陸全土の地図に視線を奪われてしまった。



「任務開始前ですが長い休暇から帰還した事を先ず伝えに参りました」


「相変わらずクソ真面目だな。まっ、そうなると考えて私も此処で待機していたんだけどね」


「はぁ。所で……。その資料の山と地図は一体何ですか??」


「あぁ、これ?? 三日後に始まる任務に付いて色々精査しておこうと思っていたんだよ」



 彼女の視線を追い地図に視線を落とすと王都から三つの線が激戦を繰り広げるであろう禁忌の森に向かって進んでいた。


 一本目は王都から北西へと進みそのまま西へ、二本目は真西に進み、三本目は一度南へと下りそこから西へと向かっている。



「気付いたと思うけどこの線は我が軍の進行方向だ」


「三つに分かれているのは……。恐らく、と言いますか確実に三軍に分かれての行動を指し示しているのですよね??」


「その通りっ!!」


 人の顔を指差すのはちょっとお行儀が悪いですよ??



「第二軍は王都から北西に進みそれから西へ。第一軍は真西へ。そして我々第三軍は一度南へと下りレイテトールに寄ってから西へと向かう予定だ」


 話しの流れからして、俺とレフ少尉は第三軍に編成されたのね。


「軍を分けたのは多過ぎる人員を統率するのが難しいから。それは理解出来るのですが移動先を三つに分けた理由は??」


「ば――か。総勢約三十万人が一度に移動してみろ。飛蝗の様に行き着く街の食料を食い尽くしてしまうだろうが」


 あ、成程……。補給や兵達の食料の問題もあったか。


「私達第三軍が立ち寄る街には既に通達が発せられている。それともう既に第一軍、二軍は出発済み。残すは我々第三軍の出発を待つばかりって事さ」


 レフ少尉が笑みとも辟易とも受け取れる微妙な表情を浮かべて椅子から立ち上がり、壁際の棚へと向かって行く。


 その際、俺はとんでもないモノを見付けてしまい素直な驚きの声が口から漏れてしまった。



「え?? ちょ、ちょっと待って下さい。何で中尉に階級が上がっているんですか!?」


「は?? あ――、お前さんは知らなかったのか。増え過ぎた人員を統率する為にパルチザンの兵士達の中から人を選んで階級を上げるんだとさ。ほれ、お前さんの新しい階級章だ。任務開始前までに右上腕に付けておけ」


「っと……」


 レフ少尉……、基。


 レフ中尉が棚から紋章を取り出すと俺に向かって紋章を放り投げて来たのでそれを受け取り新しい階級を確認した。


「そ、曹長ですか」


「そっ。これでお前さんは分隊長から幾つかの分隊を纏める小隊長に就く事が出来る。私と一緒で仕事が増える事になるから覚悟しておけよ――。あ、それと……。これは右肩に縫い付けておけ」


「中尉、これは一体何ですか??」


 次に手渡された緑色の細長い布製の紋章を手に取りつつ問う。


「今回の作戦は馬鹿みたいに人が多いからな。誰が何処の隊に所属しているのか分かり易く判別する為に支給されたものだ」


 指揮系統をハッキリさせる為にも必要な物という訳ですね。



「我々が所属する第三軍の総勢は……。約十万名だ」


「じゅ、十万ですか」


 大方の数字は予想出来ていたけども改めて正確な数字を聞かされるとその規模に圧倒されてしまいそうになるぞ。


「その殆どが戦う事を義務付けられた軍人では無い。第三軍のパルチザンの兵士は約五千名。この五千で残りの九万五千を引率しなきゃならんのだ。お前さんと私が昇進したのも頷けるだろ??」


「えぇ……。まぁ……」


 手渡された曹長の紋章に視線を送りつつ話す。


「続けるぞ。第三軍は大きく十の師団に分かれる。師団一つで一万名。そしてその師団はこれまた五つの連隊に分かれる」


「一連隊で約二千の編成ですね??」


「頭が悪いお前さんでもこれ位の計算は出来るか」


 いや、簡単な計算なのである程度の教養がある人なら誰でも答えられますよ??



「第一軍は赤色の紋章、第二軍は青色、そして第三軍は緑色と指定されている。つまり……」


 レフ中尉がそこまで話すとこれ以上はもう分かるだろ?? という視線を此方に送る。



「自分が所属するのは第三軍、第十師団、第五連隊。という事ですね」


 緑色の中の 『十―五』 という数字を見つめて言う。



「私の説明が良いお陰で頭が空っぽなお前さんでも一発で理解出来た様だな!!」


「はぁ……」


「折角私が冗談交じりに褒めてやったのに気の無い返事をするな」


「あいたっ」


 レフ中尉が唇を尖らせたまま俺の脛をポンっと蹴り飛ばす。



「約二千の連隊は五つの中隊に分かれる。その中隊は四つの小隊に。そして最後に小隊は四つの分隊に細分化される。はい、それじゃあ各隊の人数を言ってみようか」


「えっと……。中隊は四百名で、小隊は百名、そして一分隊は二十五名ですね」


「正解!!」


 あのぉ……、先程もそうなのですが。大変お行儀が悪いので人の顔に向かって何度もビシっと指を差すのは止めましょう??


 貴女はもう立派な士官なのですから。



「んでお前さんが所属するのはえぇっと……、あったこれだ。第三軍、第十師団、第五連隊、第四中隊、第四小隊所属。そしてぇ……。第三、第四分隊を纏める小隊長だとさ」


「えぇ!? 二つの分隊の隊長なんですか!?」


「だってそう書いてあるんだもん」


 寝耳に水なんですけど!?


 レフ中尉が机の上にポンっと放った指令書を慌てて拾い上げて舐める様な視線で文字を読んで行く。



「――――。本当ですね」


 ちょいと草臥れている紙の中央には確かに俺の名と所属する隊。そして小隊長の任を与えると四角四面の文字でそう書いてあった。


 唯一の救いと言えば第一、第二分隊を纏める小隊長と二人で第四小隊の指揮系統を任された事か……。


 一人よりも二人の方が負担は軽減されますからね。




「まっ、幸か不幸か知らないけど。私達が請け負う任務はほぼ後方支援だ。そこまで重大な任務は与えられないだろうさ」


「後方支援の任務を尋ねる前に何故それを知っているのですか??」


「細かい男は嫌われるって相場が決まってんの。お前さんの直属の中隊は……。ほれっ、私が中隊長を務めるんだっ!!」


「嘘ですよね!?」



 今まで犯して来た軍規違反の数々の事を考えるともう既に嫌な予感しかしないんですけど!?


 レフ中尉から手渡された彼女の指令書に視線を落とすと……。


 あぁ、畜生。本当に書いてあるじゃないか……。



「なぁに安心しろ中隊を纏めるのは私一人では無い。それに?? 私はちゃぁぁんと命令には従うからな」


「本当ですか?? 納得のいかない命令でも俺達は素直に従う義務があるんですからね??」


「軍属の者なら上の指示に従うのは当り前さ。それが例え理不尽な内容でもな。………………、多分だけど」


「最後の方をしっかりとした口調と声量で言って下さいッ!!!!」


「五月蠅いなぁ――……。二つの分隊の小隊長であるお前さんは中隊長である私の命令に従わなきゃ駄目なんだぞ??」


「その態度ですよ!! 態度!! 兎に角!! レフ中尉の下には四百名の尊い人命が居る事をお忘れにならないようにくれぐれも気を付けて下さいね!!!!」


「はいは――い」


 こりゃ駄目だ。全く聞く耳を持っていないし……。後でしっかりと与えられた責務の重大性をこれでもかと説明しないと。



「基本的に我々は四百名の中隊単位を基に行動する。分隊長からの報告はお前さんが受け取り、小隊長であるお前が私若しくはもう何名かの中隊長に報告する……、という簡単な指揮系統だ。分隊の構成は恐らくというか確実に寄せ集めの集団になる蓋然性がある。知っているか?? 戦いに必要な物資を運ぶ為に大量の人員を動員した事を」


「いいえ、知りませんね」


「そうか。第一軍から三軍までその殆どがパルチザンに入隊して日が浅い者。戦いに志願した者や傭兵、果ては農民や一般人と多種多様な人員で構成されている。その中で戦地まで荷物を運ぶ者が大勢含まれている。戦いの前までに彼等は部隊から離れそれぞれ帰路に就く。つまり……」


「――――。決戦の前に今一度軍を再編成するのですね??」


 恐らくというか確実にそういう事でしょう。



「正解!! 軍の上層部は恐らく二割から三割が離脱すると考えているな。まっ、戦いに参加すればもっと金が貰えるんだし。私の丼勘定でもその程度の減少数だと見込んでいるけどねっ」


「何故その事を知っているのです??」


 俺達第三軍の予定されている行程を見つめつつ問う。



「ん?? 三日前くらいかな?? 軍の本部に御用伺いに参った時にさぁ――」


 はい、もう既に嫌な予感しかしませんっ。



「某大佐の部屋にちょ――巨大なトンボが入って行くのが見えたんだ。大佐の部屋に虫が入って仕事に支障を来したら不味いだろ??」


「えぇ、それが真実!! であればそうなりますね」


 この際、四ノ月にトンボの成虫が居る訳ないと突っ込むの野暮だから止めよう。


「だろ?? 私は、それは大変だぁ!! っと考えて部屋にささっとお邪魔して……。窓からトンボを追い払おうとした時に偶然!! 机の上の資料に目が留まった訳なのさ。だから私は悪くないっ」


「そんな事を続けているといつか捕まりますからね?? それと、この季節にトンボの成虫はいません。居るのであればそれはトンボではなくヤゴです」


「あはは!! 馬鹿真面目に突っ込んで来るのを待っていたのさ!!」


 レフ中尉がケラケラと笑いながら俺の脛を蹴って来る。


 その痛みが何故か心に虚しい一陣の風を齎してしまった。



「はぁ――……。中尉の犯罪行為はもう慣れてしまったので深くは追及しませんが、軍の大半を構成する一般人の方々は戦力になりますかね?? 戦いを義務付けられた俺達と違い彼等はその手に時に筆を、時に鍬を、時に紙を持って日常生活を謳歌しているのですよ?? お金を貰えるからといって剣を持たせて今からあの大軍勢と戦え!! と隊長格が叫んでも真面に戦えないのは目に見えているじゃないですか」



 パルチザンの兵と言えどもオークの大軍勢の目の当りにしたら後ろ足加重になってしまい、恐怖に駆られた心には否応なしに死という文字が浮かび上がり普段通りの力を発揮出来ないだろう。


 戦う事を生業としている傭兵と違いそれが一般の方々の場合どうなるのか。恐らく彼等はその手に持つ武器を放棄して戦場から逃げ遂せるだろうさ。



「腕っぷしに自信がある連中は第一軍、第二軍に配属され我々第三軍の約半分は後方支援という采配だ。戦場に到着するまで約一か月。その間に我々が必要最低限の指導を施して一般人を簡易的な兵士に仕上げろという通達が来ている」



 移動の普段だけじゃなくて指導もしなきゃいけないのか。


 一般人に対しての指導、指揮系統の構築、各分隊から寄せられる不平不満、更に!! 己に課せられた魔力の扱いの訓練等々……。


 こりゃ決戦地にまで到着する間は休めなさそうだな。



「第三軍の約半数の主な任務は各部隊の後方支援及び負傷者の救護だ。と、いっても?? 上から命令があれば戦いに参加しなきゃいけない事もあるのでそれは留意しておけ」


「はい、分かりました。部隊員に施す指導要領の通達は来ていますか??」


「上の連中がそんなもの一々書いていたらとてもじゃ無いけど仕事にならないさ。指導内容は各々が決めろという意味合いも込めた通達だ。それに?? 指導に困ったのなら街の方々で鬱陶しい位に響いている政治的扇動の謳い文句を叫べば士気も自ずと上がるだろう」


「政治的扇動の謳い文句??」


「何だ、此処に来るまで聞かなかったのか?? ほら、来たれ勇者達よ!! その手に真の平和掴み取る為に!! って奴さ」


「あぁ!! 街に入る時に聞きましたね」


「ったく……。上の連中も無責任だよなぁ。体の良い政治的扇動で民衆を奮い立たせて無理矢理にも近い形で戦いに参加させるんだからさ」


「今回の戦いは徴兵制では無く、あくまでも志願制でしたよね?? 無理矢理とはちょっと違うのでは」


「ば――か。それこそ上の目論見なんだよ」



 中尉殿、馬鹿は付ける必要は無かったと思います。



「先ずは西のオーク共というこの大陸に住む者にとって共通の敵を作って大衆を団結させる。これまで奴等が行って来た凄惨な場面を伝えれば団結力は強固なモノになるだろうな。この場合、少しの装飾を加えればもっと効果的だろう」


「装飾って……。これから戦いに臨む者達に嘘を付いても良いのですか??」


「人は小さな嘘よりも大きな嘘に騙されるの。ほら、よぉく考えてみろ。敵がこれまで殺害して来た人の数を多少多く計上したとしても大衆はその数字よりもその後ろに居る悪に目が行くだろ?? 理性に訴えるのじゃなくて感情に訴えるのさ」



 悲しみや怒りという人の感情に訴えかけるのはこの際、致し方ないと思うけれどもそれを利用するのは如何なものかと思う。


 これから始まるのは人の命が大勢失われてしまう戦いになるのだから。



「それに謳い文句を聞いている限り行政の奴等は敵の正確な数字を大衆やパルチザンの木っ端兵士共には伝えていない。その代わり我々の総戦力は総勢三十万名を超えた!! 悪を打ち滅ぼす勇者達は日に日に増えている!! とか。大衆に都合の悪い情報は一切与えられておらず都合の良い情報は拡大させて伝わっている。 するとどうでしょう?? なぁんの力も持たない大衆が一致団結して死が蔓延る戦場に向かおうとするではありませんか。全く…………。自分の命が掛かっているというのに大衆の熱気に流され、剰え目の前の情報を精査しないとは愚かだとは思わないか??」


 レフ中尉がそう仰ると肩を竦めて大きな溜息を宙へと放った。




「必要な情報が与えられてないのは仕方ないと思いますが……。この高まった熱気を利用しない手は無いと上の連中は考えているんですよね??」


「そのとお――り。惨たらしい真実を知っている私達が声を上げて真実を伝えようとしてもその声は大衆の熱気、熱量、絶叫の中で掻き消されてしまう。 人は愚かな嘘で塗り固められた甘美な声に耳を傾け続け死が蔓延る地へと足を運びその命を落とす。予想よりも遥かに多い戦死者が出たとしても行政は勇者達の尊い命を讃えろ、名誉の戦死に祈りを捧げろ等々。体の良い謳い文句を放って喪に服すつもりなのだろう」



 あの敵の大軍勢の目の当たりしても軍の高まった士気と奴等を上回る物量で誤魔化して戦いに臨む。それから予想されるのはレフ中尉が今仰った途方も無い数の戦死者が戦地に積み重なるのは容易に想像出来る。


 此度の戦いによって計上される戦死者は紙の上に確かに残るだろう。行政の上に立つ者達はその紙に印された無味乾燥な数字を見つめて只々溜息を漏らすだけ。


 その数字にはそれだけの人生の数が有りそれに関わる大勢の人も当然いるのだ。


 敵から向けられる憎悪の目と死の恐怖から逃れる為にこれらは必要な犠牲。


 そう端的に考えている連中の言葉に扇動される人々は愚かなのか、それとも勇気ある者達なのか……。


 永遠に解けない難解な問題を提示された気分だ。



「だが、奴等を駆逐する為に大衆の力が必要なのも理解しているんだ。惨たらしい死体の山が連なる戦地を想像すると私は今から寒気が止まらないよ」


 レフ中尉がそう仰ると地図上のアイリス大陸南西の方へ向かって小石を放り投げる。


 そしてその小石は勢いを保ったまま地図の上を滑らかに滑り続け机の上から消失してしまった。



「我々の仕事は敵を倒す事、そして少しでもその犠牲を減らす為に指導を施す事ですよ。自分の命は最低限守れる力を付けて貰う為、自分は彼等に全力で指導を施すつもりです」


「ん、そうか。悪いな……。入隊して間もないお前にまで命を賭ける仕事を与えてしまって」


「はは、中尉らしくないですよ?? いつもみたいに揶揄いついでに任務を与えて下さいよ」


「こ、この!! 上官が折角励ましてやっているのにその態度は何だ!!」


 レフ中尉が頬を朱に染めて椅子から勢い良く立ち上がると俺の頭を脇に抱えてギュウギュウと締め付けてきた。


「い、痛いです!!」


「ふん!! 兎に角。任務開始は三日後だ。集合時間は午前八時、並びに集合場所は此処だ」


 彼女が荒い鼻息を放ち拘束を解くと女性らしからぬ速度で再び椅子に腰かけた。


「それまでに遺書を書いておくように。集合後、私とお前は王門前へと移動する」


「いてて……。何故王門前に移動するのですか??」


「これから出発する栄えある兵士達に向かって国王様からありがたぁい御言葉を送って下さるのさ。お前は知らないと思うが第一軍、二軍に所属するパルチザンの兵士達にも送って下さったんだ」


 へぇ、そうだったんだ。


 南の島で死に物狂いで訓練をしていたので知らないのは当然っちゃ当然だけどね。


「それから西門へと向かい厩舎から馬を引き取り西門の外へ。配属された部隊と共に大群衆が待つ南門へ、それからその足で南へと向かう。レイテトールに到着後、そこで二日休んで西へ……。立ち寄る街は決められているがこれだけの大軍勢だ。予定は確実に遅延するという事を頭に入れておけ」


「はい、了解しました」


「説明は以上!! 死地へと出発するのは三日後。それまで精々余生を楽しむ事だな!!」


 余生って……。


「もう少し言い方があるのでは?? まぁ、レフ中尉が仰った様に残り僅かな時間を謳歌させて頂きますよ」


「おう!! 任務開始前に必要な物を買い揃えておくのも忘れるなよ??」


「了解しました。それでは失礼しますね」


「ん――。お疲れ――」


 もう少し覇気のある声で見送って貰いたかったのが本音ですが、レフ中尉は恐らく中隊の事を思って作戦行動を精査しているのだろうさ。


 ほら、今も鋭い目付きでアイリス大陸の地図を見下ろしているのが良い証拠……。



「おっ、この店。大戦割引してんじゃん!! 軍服を着ている者なら三割引きだからお得なんだよねぇ――」


 全然違った。


 彼女は俺の気持ちを一切汲む事無く利己的な行動に専念している様だ。


 地図の上に新聞の一面を大きく広げて広告欄を舐める様に見つめていますもの……。



 約四百名の中隊の命を預かる者としてその行動は如何なものかと思います。だが、俺がそう叫ぼうが彼女にとって部下の声は馬耳東風。


 右から左から流されるのは目に見えて居るので俺は上官の行動に倣い、自分がすべき行動に専念すべきだ。


「失礼しますねッ!!!!」


「うるさ。十分聞こえているからもっと静かに退出しろよ」


 若干の憤りを籠めた声を放ち木製の扉さんが顰め面を浮かべてしまう力で扉を閉め、俺の心の空模様と真逆に酷く晴れた空に向かって疲労と重責を籠めた溜息を吐き尽くし。此処からでも喧噪が聞こえて来る表通りへと向かって歩んで行ったのだった。




お疲れ様でした。


これから暫くの間は人間パートとでも呼べば良いのでしょうかね。魔物では無く人間達の話が主となります。そして先日も御話した通り、第二部に繋がる御話を挟みますので御了承下さいませ。


その先に待ち構えている最終決戦なのですが……。とある場所にて行われる戦いの順番について毎日苛まれていますね。最終決戦の口火を切る人は決まっているのですがその後がまだまだ決まらない感じです。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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