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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
~ 第一部最終章 ~ 新たなる時を刻み始める世界
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第四話 会議は踊るされど進まず

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 井草の香りが微かに漂う平屋の大部屋には傑物共が一堂に会して皆一様に顔を顰めている。


 体の前で腕を組んで深く思考を凝らす者、輪の中央に置かれている大きな紙に描かれた作戦図を只管睨む者、目を瞑り己の思考をより完璧に仕上げようとする者。


 会議が始まった当初に話した作戦内容は既に彼等の頭の中に深く刻まれており、今は恐らく自分達の種族にどの程度の被害が及ぶのか。


 その被害予想の計算に勤しんでおるのじゃろう。奴等の顔を見れば一目瞭然じゃて。


 昼食を摂ってから重苦しい雰囲気は軽く明るい方向へと向かうかと思われたが、話が進むに連れてより重いモノへと変化。


 今となってその空気は視認出来てしまう程の質量を帯び各々の双肩に重く圧し掛かっていた。



「「「「……」」」」


 誰かが口を開くのを待っている。


 そんな空気が漂い始めたので儂が鉄の扉よりも硬く閉じられていた口をゆるりとした速度で開いた。



「作戦の概要は理解出来た様じゃの。儂らは東西南北に陣取り魔力を放出して戦場の上空の対空魔法陣と城全体を包んでいる結界を弱める。その間、お主達が儂らを守る。そしてマイ達が城に突入して魔女……、いいや。マリル先生の命を絶って脱出する。誰にでも簡単に理解出来る作戦じゃが何か質問はあるか??」


「作戦は全て完璧に理解していますよ。只、人間達がどう行動するのか。その不確定要素にどう対応するのか考えている最中です」


 テスラが輪の中央の作戦図に向かって視線を送りつつ大変落ち着いた口調で話す。


「恐らく人間達は三方向に分かれて攻撃を仕掛けるでしょう。城の北、北東、東。この三方向が有力ね」


 エルザードが人の軍団に見立てた大きな石を作戦図に置く。


「そうなるとオーク共はその三方向へ向かって行く可能性が高いな」


「ボーの言う通りじゃ。儂ら魔物連合の本部は海岸線に近い南の方角に置く。城の西側、南側はオーク共の守備が薄くなる可能性があるので魔物連合の主戦力は北と東に置く予定じゃ」



 人間が攻めて来ればオーク共はそれを迎撃する為に各方向へと進行を開始し、儂らは人間とオークが戦いを始めてから数日後に作戦を決行する。


 開戦初日から作戦を開始しても良いが作戦を確実に成功させる為。流動的に動く戦場の様子を確かめなければならぬからな。


 儂の弟子は戦い初日から戦場に身を置く事となる。優しい奴の事じゃ……。自分の身よりも仲間を救う為に無理をする事が目に見えておる。


 その点に付いて後でキツク言い聞かせておこう。


 お主の命はそこで使い切るべきではないのだ、と。



「イスハさんが提案した作戦は……。北にはフィロさんが陣取り、東はエルザードさん。南はイスハさん、そして西側はフォレインさん。各々が魔力を開放して娘達の突入と各戦場に対する対空魔法陣の威力を弱めて此方の戦いを優位に進める。僕も完璧だと思われる作戦なのですが、兵の配置はどうしますか??」


 やはりそこが気になるじゃろうな。


「テスラ、お主は本部から各戦場に念話を使って指示を送る役目を担って貰う」


「おぉ!! お前が俺達の総大将か!!」


「昔の様に俺達を顎で使う時が来たみたいだな!!!!」


 テスラの左右に座るボーとネイトが彼の肩を軽快に叩く。


「いたた……。御二人の力はちょっと異常ですのでもう少し優しくして下さいよ」


「それはお前が鍛え足りない証拠だ!! イスハ!! 俺達ミノタウロス一族は激戦が予想される東の戦場に向かうぞ!!」


「いやいや!! 機動力と攻撃力に優れた狼一族こそが主戦場に相応しいからそこは譲れぬな!!」



 全く……。独りよがりに勝手に話を進めおって……。


 こ奴等は若い頃からちぃ――とも性格や思考が変わっておらぬわ。


 フェリスとファールも苦労するじゃろうな。



「あなた。勝手に話を進めるのは構いませんけどね?? 里の者達の被害を考えていますか??」


「フェリスさんの仰る通りです。貴方の馬鹿の所為で帰らぬ人も出て来るのですよ??」


「む、むぅ……」


「そ、そうだな……」


 はは、補佐役である妻にこっぴどく叱られた所為で覇気が一瞬で吹き飛んでしまったな。


「だっさ――。また奥さんに叱られてやんの――」


「エルザード!! 貴様!!」


「言って良い事と悪い事があるだろうが!!」


「私達は一族を纏める地位にある者達だし、別に遜った台詞なんて必要ないじゃん。そうよねぇ?? フェリス、ファール――??」


「彼女の言う通りです。あなたは短絡的な考えを持たない様に細心の注意を払って作戦を練るべきですね」


 フェリスが怒りを籠めた手でボーの右肩をグっと掴むと。


「ッ!! あ、あぁ。分かった。慎重に話を進めようじゃないか」


 飼い主に叱られた飼い犬みたいに大人しくなってしまった。



「儂らで相談して考えたのじゃが、 北の戦場は龍一族を率いるグシフォスを主戦力として置き、機動力に富んだ雷狼の一部と魔法戦に特化した淫魔を後方支援に置く。 東はミノタウロスと雷狼を主戦力として置き、後方支援に淫魔の一分を置く。 南は狐一族とラミア一族が守り、 西は蜘蛛一族が守る。そして制空権を奪った後にハーピー一族を配置して本部から各戦場を見守りつつ守備力が弱まった場所へ援軍を送る。何か質問はあるか??」


 何か月も掛けて阿保淫魔達と共に練り上げた作戦の概要を伝えると。



「龍一族は俺のみが増援に向かう。それ以外の増援は期待するな」


 グシフォスが険しい顔を浮かべたまま作戦図へ視線を送って口を開いた。


「わはは!! グシフォス!! 突撃ばかりを繰り返す愚将に民は従わなかったか!!」


「喧しいぞボー。俺は各里の者達へ己の里を守る様にと伝えて来たのだ」


「ちょっとあんた……。世界が崩壊するかもしれないって瀬戸際なのに自分の土地を守る様に伝えたの??」


 驚きというよりも呆れた感情が勝る口調で阿保淫魔がグシフォスを睨む。


「その通りだ。大体、それだけの大軍勢を前に訓練を受けていない者は真面に戦えぬだろう。有象無象の連中を引き連れて戦うよりも己の力を存分に発揮出来……。な、何だフィロ。肩が痛いぞ」


 先程から沈黙を貫いていたフィロがおもむろに彼の肩をグッと掴むと。



「イスハ。ちょぉぉおお――っと個人的な家族会議を開いて来るから話しを進めておいて」


「ん――、分かった。会議はまだまだ続くから手加減するのじゃぞ??」


「は、放せフィロ!! 俺は龍一族の事を想ってだな!!」


「言い訳は後で聞くからこっちに来なさい」


 目の端に少しだけ涙を浮かべたグシフォスを引きずる様に平屋を後にしてしまった。




「龍一族の増援が期待出来ないとなるとまた兵の配置を練り直さなきゃいけませんよね」


 友が泣き叫んで引きずられて行ったのにも関わらず平静を保つテスラが難しい顔を浮かべて話す。


「大魔以外の種族にも増援を要請したのですよね??」


 フォレインの補佐役であるシオンが周囲の空気に溶け込む様な大変静かで丁寧な口調で話して儂を見つめる。


「勿論じゃ。東のマルケトル大陸の鷲一族に増援を要請したが彼等はグシフォスと同じ様に己の大陸を守る事に専念したいと断られ。南の大蜥蜴一族にも話を通したが同じ理由で断られたわ」


「左様で御座いますか。では、北の大森林に居る虎一族にも話は……」


「あぁ、儂が直接向かったがあ奴等は己の強さだけを求めている種族じゃからな。興味が無いと一蹴されたぞ」



 まぁ断られた本当の理由は……。虎一族は群れる事が嫌いじゃからな。それが原因じゃろうて。


 そんな事を気に掛けている場合では無い、と。声を大にして叫んでも奴等は聞く耳を持たなかった。


 拳で無理矢理分からせても良かったが実力行使に至った場合。儂は無傷で戦いに臨めなくなってしまうからのぉ……。


 全く、独りよがりの馬鹿種族には困ったものじゃて。



「そうなりますと……。実力のあるミノタウロス一族を北に再配置してボー様とグシフォス様で北側を守り、東側はネイト様に一任させるべきですかね??」


「シオン?? 頭の中にまで筋肉が詰まった者に東側の主戦場を任せる事がどれだけ危険か分からないでもないですよね??」


「おい!! フォレイン!! 貴様……。俺には荷が重いと言いたいのか!?」


 ネイトがフォレインの言葉に直ぐに噛みつく。



「あぁ、失礼しましたわ。我々には失敗が許されていないので一分の隙も見当たらない作戦を遂行する必要があるのですよ。ですから少しでも多くの杞憂を排除しておきたいのです」


「それが人を馬鹿にしていると言いたいのだ!!」


「クハハハハ!! 何だぁ、ネイト。一人で荷が重いと感じるのなら俺が東側に向かってやろうか??」


「あなた、それは絶対止めて下さい。只でさえ制御困難な馬鹿力を持った人が二人に増えてしまっては戦場に作戦を伝達するテスラさんの負担が増えてしまいますので」


「ははっ、大丈夫ですよ。フェリスさん。この二人の扱いには慣れていますので」


「「言い過ぎだッ!!!!!!」」


 少しでも目を離すとこ奴等は阿保みたいに叫んで場を乱すから質が悪いぞ……。


 それとフィロ。



『あれだけ厳しく言ったのにどうして貴方は彼等を説得出来なかったのですか??』


『説得は勿論試みたぞ。だが奴等は自分の土地を何よりも愛しているからな。恐らくそれが原因で……』


『まさかと思うけどぉ……。もしかして釣りばかりに現を抜かしている貴方には従えないって言われませんでしたか??』


『……ッ』


『図星の様ね。そうやって私の視線から逃れる様に視線を逸らすのが良い証拠よ。と、いう訳で!! 貴方にはもう一度龍一族を説得して貰う為に愛の指導を受けて貰うわ!!』


『や、止めろ!! 俺はこれから会議を受ける義務か……』


『私が会議の話を聞いててあげるから取り敢えず地面と抱擁を交わしなさい!! この釣り馬鹿がぁぁああああ――――ッ!!!!』


『どわぁっ!?!?』


 話がややこしくなるから指導は適度に与えるべきじゃぞ??


 フィロの激昂した叫び声が刹那に響くと激しい衝撃音が平屋の天井を揺らし。



『おぉうっ!? と、父さん!! 一体何をしたらあぁも母さんを怒らせるのよ!!』


『し、知らん。それと少し頭を冷やしたいから俺が使用する天幕まで案内しろ』


『あ、はい。此方です……』


 それから微かに遅れて我が弟子達の驚く声がそっと鼓膜を揺らした。



「――――。ふぅっ!! スッキリしたぁ!! と、言う事で。覇王様は龍一族の作戦参加に今一度説得を試みるそうよ??」


 フィロが頬に付着した返り血を右手の甲でクイっと拭いつつ平屋に足を踏み入れ、本来であるならば族長が座るべき座布団に腰掛けた。



「あの様子じゃあ龍一族の増援は望み薄じゃな……。よし、これから兵の再配置に取り掛かる。各族長は参加出来る兵の人数を述べよ」


 喜々としたフィロを尻目に各族長へと視線を送る。



「僕達海竜は二人だけの参加になりますね。北の海以外の海を統べる各海竜達に作戦打診を送りましたが拒絶されてしまいましたので」


「ミノタウロス一族はこれから兵の取捨選択に入るが……。約百名を予定しているぞ!!」


「我々狼一族は、そうだな。戦える者は凡そ六十名といった所か」


「淫魔は五十名よ。全員が前衛で戦える力を持っていないから主に後方支援を担当するわ」


「蜘蛛一族は約二百名を予定していますわ」


「龍一族は一応、今の所私と釣り馬鹿の二名ね」



 やはりと言うか、ある程度予想していたがかなりの寡兵で大軍勢の挑みそうになりそうじゃなぁ……。


 残すはハーピー一族じゃが制空権を制す彼等の奮闘次第で戦況が大きくされそうじゃて。



「儂ら狐一族は凡そ百名じゃな。これ、ラミア一族はどれだけの兵を派遣出来るのじゃ」


 会議が始まってから一度も口を開かずに静観を決めているミルフレアへと問うた。


「ラミアは五十名を予定しているわ」


 ふんっ、もう少し愛想の良い声で話せ。


「分かった。お主は何処の戦場で戦うのじゃ?? 希望があるのなら聞くぞ」






「私は…………。申し訳無いけどこの作戦には参加出来ない」


 この大馬鹿者が。今、何んと申した……。






「おい、貴様……。儂らがどれだけ逼迫した状況に追い込まれているか分からないでも無いよな??」


 ドスの利いた声で問うものの、奴は儂の睨みを流す様にして答えた。


「当事者の一人ですもの。重く、そして深く理解しているわ。頭の中で何度も自分を納得させようとしているけど……。やっぱり作戦には参加出来ない」


「ミル、聞いて。エルザードとイスハとの間に軋轢があるのは知っているわ。でもね?? 今はそれを乗り越えてでも問題を解決しなきゃいけないのよ??」


 フィロが他者の心を汲む様な優しい声色でミルフレアに声を掛けるがそれでも彼女の心は揺るがぬ様だ。



「それも理解している。それでも……、それでも。実の家族よりも私を愛してくれた……。そして深い絆で結ばれた人を殺す事は出来ないわ」


 奴は唇の端を強く噛んで畳の目に視線を落としたのだから。


「あんたの個人的な感情なんてこの際ど――でもいいのよ。私だって自分の感情を押し殺して作戦に参加しているんだから。いい?? 先生は自分を殺す様に私達に頼んだ。今こそその遺言を……。って!! あんた何処に行くのよ!!!!」


 エルザードの声を聞いている途中でミルフレアが平屋の戸へと向かう。


「ラミアからは兵を五十名派遣するわ。ライネ、悪いけど私の代わりに会議の内容を聞いておいて」


「か、畏まりました。しかし私等で宜しいのでしょうか??」


「構わないわ。会議で得た情報は後で纏めて聞かせて。それじゃ失礼するわ……」


 ミルフレアが静かに溜息を放つと平屋の戸を潜りその姿を消してしまった。



 それから数秒後、ミルフレアの側近であるライネが居たたまれない表情を浮かべて儂らに対して頭を垂れた。



「皆様、大変申し訳ありませんでした。全ての責任は私が負いますので何卒我が主の粗相をお見逃し頂ければ幸いです」


 ふんっ、あ奴の下の者じゃが礼儀だけは弁えておる様じゃな。


「構わん。元より奴には話を通さぬ予定じゃったからな」


 門前払いを食らうかと思ったが儂の予想は良い意味で裏切られた。しかし、結局の所で話は決裂してしまったがな。


 じゃが、兵を派遣するという確約を得たのは大きいぞ。少ないながらもラミア一族の兵は寡兵である魔物連合にとって貴重じゃからな。


「おほんっ、話が逸れた。では引き続き兵の再配置について詳しく話を進めよう」


「「「「……っ」」」」


 儂の言葉を受け取ると各々が更に険しい顔付きに変化する。


 その表情を受け取ると儂は輪の中央に置かれている作戦図に視線を戻し、恩人……。いいや、ミルフレアが申した通り本物の家族よりも太い絆で結ばれた者を効率的に殺害出来る方法を模索し始めたのだった。




お疲れ様でした。


いやいや……。最近の花粉、酷過ぎませんか?? 何もしていないのにくしゃみや鼻水が止まらないんですけども……。


一応、薬を飲んで症状を抑えていますがそれでも花粉症の症状が出てしまう次第であります。花粉の飛散が収まるその時まで耐え忍びましょうかね……。


野球世界一を決めるWBCの決勝戦が行われ、日本を破ったベネズエラがアメリカを下して見事世界一となりましたね。家に帰って来てから試合を見ていたのですが、どちらが勝ってもおかしくない内容で中々見応えがありました。もう間も無く日本のプロ野球も開始されますので今からワクワクが止まりませんね!!




そして、ブックマークをして頂き有難う御座いました!!


花粉症で参っている体に嬉しい知らせとなりましたよ!! 本当に有難う御座います!!



それでは皆様、お休みなさいませ。

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