訪れた異世界
メインではありませんが、番外編的に異世界の話を書きました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
ーー次の日
授業も終わって俺と竜崎は放課後の部活に来ていた。
いつもと空気が違うのは大会が近いからで、皆ひたすら試合をしていた。
「お願いしまーす!」
挨拶をすると練習試合が始まった。俺が出るのはダブルス(二人組)の試合で、ペアを組むのは速水(違うクラスの部活仲間)だと言われていた。一応ペアを調節中だとは言っても、この時期だしほぼ決まりだった。
高校で最初の大会だし、行けるとこまで行ってみたい。
俺はそう思って練習をしていたけど、「今まで組んだ事がないし弱点が似ているペア。」正直言うとそうなってしまうのが今の状況だった。
もしこのままなら、シングルス(個人)で大会に行った方が良いかもしれない……。(ちなみに、竜崎はシングルス)
パーンッ、バシュン。相手のスマッシュ(バレーでいうスパイク)を返せずに点が入っていく。
俺たちも点は取り返すけど、相手を引き離すまでいけない。
本当に悔しいけど、いいペアとは言えなかった。
「(まずいなこれは。)」
結局、調子が出ないまま部活は終わっていった。
ーー放課後の帰り道
俺と竜崎は、部隊の事も気になってたけどバドミントンの事を先に話した。
今のペアが上手くいかなくて落ち込んでたものの、竜崎と話してるうちに気づいたら治っていた。
そのおかげで気持ちが暗いまま家に帰らずに済んだし、部活の事も前向きにとらえられた。
「(竜崎は、悩みなんて無いのか……?)」
俺がそう思う位に、竜崎は明るい。ポジティブすぎて突っ込みたいくらいだ。
そして二人で話してるうちに、最寄りの駅に着く。
駅定番のあのコンビニ以外に目立つ物といえば、待合室くらいしかないごく普通の駅だった。
フワリ、フワリ……。
「(ん……!?)あ、ケセランパサランだ!」
「どこだ?……あ、本当にパサランだ。」
今までパサランを見た事がなかった俺は、少し嬉しかった。
けど竜崎は見たのが二度目らしくて……。
「気になってつい見ちまった(汗)……パサランは二度目に見ると幸せが逃げるらしいんだよ。ついてねえ……。」
普段落ち込みにくい分、こういう変な時にズドーンと落ち込むのが竜崎だった。
まあ、パサランでここまで落ち込む奴は竜崎以外居ないだろう。
俺はさっきとは逆に竜崎を慰めた。
「(あーあ、どっちが慰めてんだか(汗))」
ーー電車内
何故かあの有名ファストフード店のにおいがする車内で揺られながら、俺は部隊に会うために竜崎と相談していた。
「(誰だよこのポテト臭。まあいっか。)そういえば、部隊と会うのは良いけど時間とかどうすればいいんだ?」
「正直どうすればいいのかわかんねえ(汗)。」
時間の指定がないから俺達なりに考えた結果、いつもどうりに寝ればいいんじゃないか?という事になって家に帰った。
こんなに軽く決めて良いのかと思った一方で、しょうがないかと諦める俺がいた。
竜崎と別れた後、俺は家から最寄りの駅に着くと軽い眠気に襲われた。
あれ?さっきまで全く眠くなかったのに……。
なんだか変な感じだな、と思っているうちにどんどん眠気が増してくる。
「(やば……い。早く帰ら……な……いと。)」
眠気でフラフラしながら、俺は必死で家に向かった。
ーー輝の家
「ただいま。」
「おかえり、遅かったな?」
「……部活だったから。」
家に帰ると、珍しく仕事が早く終わった輝の父親が居た。
なんだか急に眠くなってきて危機感を感じた輝は、一言いうと自分の部屋へ行ってしまったのだった。
「(しかし、なんでこう急に眠くなるんだ?)」
部屋着に着替えるのがやっとだった輝は、また昨日みたいにベットに倒れて寝てしまうのだった。
ーー夢の中
「(zzz……。)」
輝は夢の中に入ったことに気づかなくて、まだ寝ていた。
すると、そんな輝に誰かが近づいてきた。
その誰かは、ニヤリとすると輝を起こそうとして輝の脇をくすぐりだした。
「う~?」
しかし輝は起きない。そこで誰かは、近くに川があったのでその水をくんできて輝の顔にかけた。
「!!?」
確かに輝は起きたが、一度こちらを振り返ると冷めた眼差しで見つめて、再び寝る姿勢に入った。
「(ええぇ~っ!?)」
誰かは、仕方ないので隊長を呼んで来る事にした。
こうして隊長達が来る間に、輝は寝てしまったらしく……。
「(なんだ?あいつ本当に寝ちゃったのかよ?)」
竜崎がそう思っているうちに、隊長は輝に呪文を使いだした。
この前のものとは違い、軽い衝撃波で眠気ざましのショックを与えた。
どんな人物でもこれで起きない筈はないのだが……。
「(おい、嘘だろ!?起きない……。って事は!!)まずい!このままじゃ輝が引きずりこまれるぞ!!」
まだ原因は分からないが、輝の意識は別の場所に引きずりこまれようとしていた。
ーーAkira in ???
「ふぁ~っ……うん?」
目が覚めたと思ったら、俺は暗い場所にいた。なんだか、いろんなものが混ざって、混沌としてる感じの場所だ。
あれ……!?腹の部分があったかい?仰向けに寝ていた俺は、軽く体を起こして自分の腹部を見た。
「へっ?な、なんだお前は~っ!?」
「カウ?」
暖かさの正体は、まだ子どものドラゴンだった。ドラゴンが居るなんて、ここは一体どこなんだ!?
「カウ?ってなんだよカウって(汗)……まさかチビ、お前が俺を連れてきたんじゃないよな?」
「カ、カウ!ギャーウ(汗)」
「……違うのか?」
このチビドラゴンは、綺麗な赤い鱗をしていて角もそれなりにドラゴンらしかった。
翼も見た感じは飛べそうだ。
チビドラゴンを見ながら考えこんでいると、何かが歩いてくる音が聞こえ始めた。
ズシンッ、ズシンッ……。
「フギャーッウ!」
何かの足音が聞こえだすとチビドラゴンは暴れだした。
もう何が何だかさっぱりだ。
それにしても、チビドラゴンの暴れ方が変だな?。
足音が段々近づいてくる。もしかしたら、これ……まずいパターンか?
グルルルルル……ギィオエエエーーン!!!
俺の前に現れたのは、暗い紫の鱗をした大人のドラゴンだった!
その牙が現れて、俺達に向けられる。
「で、ででで〜た〜っ!!(涙)」「ギエエーッ!!」
ガルルルル……ギエエーッン!
ドラゴンは、吠えると俺達を追いかけだした。
俺は叫びながら、暗闇の中をただひたすら逃げた。
もちろんあのドラゴンに捕まったら後はない。
ドラゴンから逃げていると目の前に赤いカーペットが見え始めて、その上を歩いていると俺の横を懐中時計を持ったウサギが走って行った。
チクタクチクタック。
「俺はアリスか(怒)」
なんか、昔姉(麻里子)と見たことがあるシーンだ。
思い出したくもないが、姉のせいか昔からデ◯◯ニーはよく見せられた。
さらにそのウサギを追って行くと、楽しげな音楽が聞こえるお茶会の会場に着いた。
お茶会をしているのは、「いかれた帽子屋」とこれまた「いかれてそうなウサギ」だった。
「兄ちゃん茶しばいてくかい?」
「ことわるっ!!」
人がドラゴンに追われてる時にお茶にさそうあいつらは、やっぱりいかれてる。
本当に不思議の国はあったんだな……。
いや、今はそんな事を考えてる余裕はない。とにかく逃げるんだ。
俺はお茶会の会場からのびる草原を、ドラゴンから追われるままに逃げていた。
そのうち草原は芝生に変わって、俺達は赤い薔薇が咲いてる庭にでた。
「あれ?ドラゴンが追ってこない……。」
庭に入ると、さっきまで俺を追ってきたドラゴンは何処かに行ってしまった。
ちょっと気になったけど、まあ助かったんだしいいか。
安心したチビドラゴンと俺は、その場に座りこんで少し休む事にした。
「(ふう(汗)一休みしたら、元の世界に戻る方法を探さないとな。)」
「カウ〜ッ、クルルルルル……。」
そんな俺の気持ちとは裏腹に、チビドラゴンは寝る姿勢に入った。
「か、かわいいからって全て許される訳じゃないんだからな!?出発する時起きなかったら、置いてくぞ?」
チビドラゴンが寝た事で、周りに気が向きだした俺はあることに気づいた。
赤い薔薇の庭……薔薇の隙間から見えるゴルフ場のような場所。
もしかしてここは、不思議の国で一番危険な人物が住む場所じゃ……。
つまり、首はねで有名な「赤の女王」が使ってる庭!
「チビ、やばいぞ……すぐにここから出なきゃ!(汗)」
「ZZZ……。」
「だーっ!出発する時は起きろって言ったじゃんか〜っ!(泣)」
俺は起きないチビドラゴンを右腕で抱えた。
「ギュウッ!?」
それに驚いたのか、チビドラゴンもギュウッ!?と言って起きた。
「逃走再開だ、逃げるぞチビ!」
俺はチビを離して、飛ばせた。とにかく急を要する。
そして庭からの出口を探して走っていると、にぎやかな声が聞こえてきた。
大勢が集まって、パーティーでもしてるような声だ。
明らかにこのまま進んだらまずい。
けど、パーティーをしてる横を通らないと、出口は無さそうだ。
「しょうがないか。よし、チビ行くぞ!」
小声でチビにそう言うと、俺はパーティー会場の横にある垣根に隠れた。
チビも隠れ終わると、俺は走りだした。
このままいけば、気づかれずに通り抜けられそうだ。
と思ったその時……。
ゴツーンッ。
右手のパーティー会場から飛んできた何かが、チビに直撃した。
「(嘘だろ!?)」
「カ、カウウゥ……。」
「(あーっ!チビしっかりしろ〜っ!(泣))」
チビは完全に気絶した。
俺が暫くぼーぜんとしていると、誰かが近づいて来た。
「女王様〜っ、ボールを探してまいります。」
「(まずい!)」
がさっと薔薇の垣根が動いて、トランプの兵士がこっちを見つめてくる。
「だ、誰だお前はっ!?」
「うっ!」
「侵入者だ〜っ!皆来てくれ〜っ!」
「うわあーっ!!」
気絶したチビを右腕で抱えると、俺は走りだした。
俺は垣根に進路を阻まれながらも、必死に城内を逃げまわった。
勿論俺が一番会いたくなかった人物も追ってくる。
「ま〜て〜〜っ!!打ち首じゃあ〜っ!」
「うおっ!?」
結局俺は、アリスと同様赤の女王に追われる事になった。
「ふっふっふっ、アリスのように逃がしたりはせんのじゃあ!」
ヒュウォオオオオ……バサンッバサンッ。女王がなにやら合図をすると、さっきの紫ドラゴンが現れた。
「あのドラゴン、女王の手先だったのか!?(だから俺達が城に入った時追ってこなかったんだ!)」
あのドラゴン……女王の城まで誘導して、俺達を女王に引き渡したつもりだったらしい。
陸からは女王と兵士が、空からはドラゴンが追ってくる。
「あ〜〜あ〜あ〜っ!!(泣)」
女王の城付近、花園、巨大青虫が住んでいる場所……俺はあらゆる場所を逃げまわった。
そして、全速力で逃げる中ふと気づいた。
あれ?そういえばあのチビドラゴンは……。いつの間にか、腕からいなくなってる。
「カ〜ウ〜ッ!」
「あっお前!さっきから足が重いと思ったら人の足にくっついてやがったな!?」
もう怒る気にもならない。とにかく今は逃げるのが第一だ。
けど、全速力で走り続けるのも限界がある。
女王達とドラゴンは失速しないで追ってきてるから、ペースが落ちていったらそのうち追いつかれる。
これはもう、諦めろってことなのか?
「誰か助けてくれ〜っ!!」
ーーその頃あの草原では
「輝起きろ!!おい輝!」
謎の場所に引きずり込まれた輝の意識を呼び戻そうと、隊長が必死に声をかけていた。
このままでは輝の意識は戻らなくなってしまう。
「隊長、俺水持ってきます!」
竜崎はさっき輝を起こした方法を、もう一度試してみようと思っていた。
それにしても、輝を引きずりこんだのは誰なのか?
もしかして、とんでもない奴だったりして……。竜崎の脳裏を不安がよぎる。
「(だーっ!今はそんなの関係ない。輝を起こすのが優先だ!)」
竜崎が川に向かっている途中、輝の様子が変わった。
「うぅ……。」
「?、なんだ、うなされてるぞ!?」
輝は苦しそうな顔をして、うなされていた。
一体、輝の引きずりこまれた先で何が起きてるのか?
ーーその頃輝は……
「ハアハア……(やばい、あいつら近づいてきてる!)」
まだまだ諦めない追っ手から、必死に逃げていた。
すると奇妙な歌声が聞こえだし……。
「ランらら〜ら〜、これはこれは何かお困りかにゃあ?」
「(チェシャ猫!)困ってるどころか、死にかけてるぜ(汗)」
「そのようだにゃあ。ぼうや、俺様に助けて欲しいかい?」
「(ぼうやか、一応15なんだが?(怒))」
輝の様子を見て、チェシャ猫がニタッと笑う。
「ダァーッ!(怒)助けて欲しいけど、その笑い方やめろーっ!(泣)」
「しょうがないにゃあ〜。まあ楽しませてくれてるから、助けてやるにゃあ?」
そう言うと、チェシャ猫の姿は消えてしまった。
本当に助けてくれるかは分からないが、チェシャ猫だけが頼りだから信じる事にした。
チェシャ猫が消えても、追っ手からは逃げ続けないといけない。
この世界の道は以外にアップダウンが激しくて、輝の体力は確実に消耗していった。
何処か隠れられる場所があれば……
アリスは確か、食べ物で小さくなって……?それだ!!
「(けど、俺食べ物持ってねえじゃんか(汗))」
いろいろ考えていると、輝の前にちょっと変わった双子が現れた。
丁度いい所に双子が現れたので、輝は道をきいてみた。
「おーい、どっか食べ物がある場所知らないか?」
「あっちだよ!」「こっちだよ!」
「ダメだこりゃ(汗)」
チェシャ猫が消えた後も輝はこんな風に走り続けていたが、いっこうに助けてくれる気配はない。
気分屋だから、助ける気が無くなったのかもしれない。輝はそう思い始めた。
グワアアア……ドゴーン!!輝がそう思いだした時雷のような音が鳴り、真っ暗だった空に上へ続く大きな縦穴が現れた。
輝は驚きすぎて、目を点にして上を見上げた。
「“入口が閉じる前に、早くこっちへ来るにゃあ〜?"」
空に、半透明なチェシャ猫のアップ顔が浮かぶ。
チェシャ猫の魔力か?輝の体が浮き出し、縦穴の方へ向かっていく。
「う〜わ〜っ!?」
ぐるぐるグルグル……輝はきりもみ状態で飛んで行く。
チビドラゴンも必死に翼を動かして輝を追っているが、魔力による風で上手く飛べない。
「カ〜ウ〜ッ!」
輝に近づいた後で、チビドラゴンは急降下していく。
その姿を、バドミントンで動体視力を鍛えた輝の目が捉えた。
ガシッ。
一瞬だけ最大限に腕のリーチを伸ばして、輝はチビドラゴンの前足をキャッチした。
「チビ、しっかりつかまってるんだぞ!?」
輝がチビドラゴンを捕まえると、それを待っていたかのように風が吹き荒れた。
そして輝たちは一気に上昇していく。
「“それじゃあお別れだにゃあ。俺様に感謝するんだにゃ?”」
バヒュウウンッ。
「うわあああああぁぁ!」
輝の悲鳴が暫く響き、それはやがて聞こえなくなった。
ーー縦穴の中
「ああああぁぁぁ〜っ!」
輝が居るのは、不思議な穴だった。土の穴なのに暗くないし、変なおもちゃと雑貨?が壁にある穴に大量に散乱している。
バヒュウウウンッ……。
普通に上がっていくなら大丈夫なのだが、上昇するスピードが速すぎて、壁の凸凹がもはや凶器だった。
その凶器をかわしていく一人と一匹。
飛び慣れてるチビドラゴンはまだしも、大変なのは輝だった。
「(いや、冗談でやってる訳じゃないぜ!?本気で避けられねえんだってば!(汗)」
ガコーンッ、ガラガラ……。時々岩に当たってしまうのは、この状況ではしょうがないだろう。
何故なら、壁に当たらなくても上から大中小様々な岩が落ちてくるのだから……。
この穴を無傷で通過したアリスは何者なんだ……輝は岩が当たって意識が飛びかけた頭で、そう思っていた。
それでも、輝たちは上昇し続けてやっと出口らしい場所が見えだした。
白く光っていてはっきりと見えないものの、縦穴がそこで途切れてるのは確かだった。
「(出口だ!やっと帰れる。)」
ほっとして縦穴の出口へ向かっていく輝とチビドラゴン。
しかし……。
「あれ、なんだこのドア?」
出口へ着いたものの、そこは真っ白いドアで封鎖されていた。
ガチャガチャ……。ドアノブを回してみるが鍵がかかっていた。
目を点にして、一瞬動きを止める輝。
「頼む開いてくれっ!」
そう念じてドアノブを握っていると、ガチャっという音がした。
「開いたな……!?」
まあこれも、不思議の国だからな。輝はそれで納得した。
不思議の国……ひたすら逃げてただけなんだけど、以外に楽しかった。
「さてと、帰るか。あ、チビお前はどうする?……たぶん、俺と来ると魔界の部隊の所に行くしか……。」
「カウッ!?カウ〜ッ!」
驚いた表情をすると、そのあとは喜んだ表情をしたチビドラゴン。
何やら上機嫌で扉の向こうに入っていってしまった。
「あ、待てよっ!」
輝もチビドラゴンを追って、扉に入っていくのだった。
ーー部隊のいる草原
「(眩しいな……。?、そうか戻ってこれたんだ!)」
意識が戻り、輝が起き上がろうとした瞬間……。
バシャアッ。
「へっ!?」「わっ!?(あれ、竜崎!?)」
輝が視界に捉えたのは、バケツを構えた竜崎だった。
※竜崎が輝を起こそうと思って、丁度顔に向かって水をかけた。
丁度起き上がろうとした所だったので、輝は上半身ずぶ濡れになってしまった。
「りゅ〜ざき、お前なあ(怒)」
「ビクッ!!……ち、ちがっ!。」
竜崎が誤解を解こうとする暇もなく、輝は竜崎を追いかけだした。
「待て竜崎!」
「だから違うんだってば、なんでこうなるんだよ〜っ!(泣)」
必死で逃げる竜崎をよそに、部隊のメンツは楽しそうに見物する。
※何とか竜崎が誤解を解くと、輝は素直に謝った。部隊にも助けてもらったのでお礼を言った。
「ところで、お前が引きずりこまれた所って何処だったんだ?」
「えっ?あ、ああ。不思議の国みたいだったぜ?」
「嘘っ!?いかれ帽子屋には会えたか?(笑)」
「わ、笑うなっ!俺がどれだけ大変だったと……。」
そんな風に話す竜崎と輝を、部隊は楽しそうに見ていた。
そしてふとした時、輝はあのチビドラゴンの事を思い出していた。
草原を見渡すものの、赤い鱗は見えない。
「(……あそこの住人だったのかな?雰囲気が違ったけど。)」
「なーに考え事してんだ?」
「いや、ちょっとな……。」
「?」
また一人で考えこんでるのか?と思った竜崎だが、輝の表情は硬くなかったので大丈夫だろうと判断した。
チビのこと、部隊に聞いてみるか……。なんか、異界の事は詳しそうだしな。
そう思った輝は、部隊がいる辺りに竜崎と歩いていった。しかしそこに居たのは4人。
エレナが居なかった。
「ああ、エレナなら暫く戻ってこない。ちょっとモンスターが出たみたいでな。」
以外な理由に少し驚く輝達。
こんな所にも、モンスターがいるのは以外だった。
部隊の中でモンスター討伐に行ったのは、エレナ1人。部隊がエレナの強さを信用して、安心して任せてるのが分かる。
きっと、この部隊だったらさっき俺が会ったドラゴンも楽勝で倒せるんだろうな……。
輝はそんな風に思って軽く落ち込んだ。
「(待てよ?あのドラゴンが楽勝だったら、チビの方はどうなるんだ?)」
輝の頭の中で、チビドラゴンがあっけなくやられるシーンが再生された。
「(うあああっ!だめだ、あっけなさすぎる!)」
輝がそんな想像をしてしまった頃、モンスター討伐からエレナが帰ってきた。
見たところ機嫌良さげだ。
「隊長たっだいま!みてみて、ちっちゃいドラゴン捕まえたの!」
「(ちっちゃい……ドラゴン?)」
頭を抱えてしゃがんでいた輝は、「ちっちゃいドラゴン」という言葉に反応した。
まさか、ちっちゃいドラゴンはあのチビドラゴンでエレナにやられたんじゃ!?
はっとして声の聞こえた後ろを振り向く輝。すると。
「カァウ?」
「へっ!?」
ズドーンッ。輝は見事にずっこけた。
輝が見たのは、エレナの腕で丸くなっているチビドラゴンだった。
竜崎はチビドラゴンを見て驚いたものの、すぐに慣れたようだ。
「あちゃ〜っ(汗)大丈夫?輝君もしかして、このチビドラ知ってるの?」
「えっ、そうなのか?(……なんなんだそのゲームタイトルみたいな略し方は(汗))」
竜崎とエレナが輝に聞く。
「(これは一部始終を話した方が良さそうだな(汗))」
輝は引きずりこまれた先であったことを、この場にいる皆に説明するのだった。
チビドラゴンと一緒に逃げた事や、チェシャ猫に助けられた事……
「なるほどね〜、引きずりこまれた先でなかよくなった訳だ!」
「ていうかー、俺このチビさん只者じゃない気がするんですけど?」
「同感だ。」
「このレアドラゴンに偶然会った輝も、只者じゃないわね。」
エレナに続いて、リフが珍しく確信を持ったように言う。
ハクタクが同感だと言ったのは、以前から二人がイレギュラーな事に気づいていたからだろう。
アイラもまたその事に気づいたようだ。
「まあ、そう騒ぐな。……うーむ、紅い鱗の竜か。!、待てよ?紅だと!?」
隊長はそう言うと、チビドラゴンをマジマジと見つめた。
じぃーっ。
「カ、カウッ!?」
「……本物としか思えん。」
「?」
「そうか、まだ輝達は魔界の神話を知らないんだよな?……まあ、簡単に言えば今“魔界に危険が迫ってる”って事だ。」
「えええぇ〜っ!?(それ、簡単に言った事になるのかよ!?)」
チビドラゴンが現れた=魔界に危機が迫っている
輝と竜崎にはこの式が理解できなかった。
こんな子どものドラゴンが、魔界にとって危険なのか?
そんな2人の様子を見て、アイラがため息をつく。
「違うわ。“神獣が危機を呼ぶ”んじゃないのよ。“危機が神獣を呼ぶ”の。」
「神獣は、神様の御使いだから俺らの味方っす!」
キョトンとした2人だったが、すぐに納得した。
「チビ、お前ってそんなに凄い奴だったのか!?」
「(輝すげえの連れてきやがったな(汗))」
チビドラゴンの正体が分かったはいいが、部隊には魔界でしなければならない事があるらしくそろそろ魔界へ帰らなければいけなかった。
「すまないな、そろそろ魔界へ帰投しないといけないんだ」
「俺のせいで魔界の説明が……すいませんでした(汗)」
「まあ神獣の話ができたし、気にするなって!」
そんな話をし終わると、部隊にチビドラゴンを任せて輝たちは草原の切れ目に向かって走り始めた。
「またなーっ!」
「チビをお願いします、さよならーっ!」
「隊長、また今度神獣のこと教えてくださいっ!それじゃっ。」
「バイバーイ!」
輝は、エレナの声の後にチビドラゴンの呼ぶ声が聞こえた気がしたが、確認する間も無く夢から覚めてしまった。
ワンダーランド編が終わったところで次話に移ります。
区切りが悪くなってしまうので、範囲を変更しました。




