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第21話

 整髪料でととのえた頭髪は乱れ、数百万円のスーツも崩れていた。真城コウタロウはもう、なりふり構っていられなかった。

 通路の角を曲がると、かつて儀式のために生贄に捧げた浮浪児の少年が、腹部からはらわたを(こぼ)しながら立っていた。

「ひゃああッ」

 真城は情けない声を出して逃げ惑う。

 階段を降りようとしても、かつて売春宿で買って捨てた少女──片目が腫れ、顔には多数の皮下出血の痕、首には指圧痕がある──が、途中で立ち塞がり、それを許さなかった。

 真城は、行く先々で、亡霊に追われた。いつも冷徹に振る舞っている真城の顔は、恐怖で歪んでいた。

 亡霊たちに追い詰められた真城は、階段を上へと昇りつづけ、はげしく息を切らせながら、本社ビルの屋上に出た。振り返ると亡霊たちがまだ追ってきていた。カヲリが亡霊たちを従えて迫ってくる。

「やめろ。来るな。来るなァ!」

 二メートル以上ある転落防止用の金網フェンスを、何度も滑り落ちながら、やっと乗り越えた。亡霊たちは難なく金網フェンスを透過する。

 真城はとうとう、ビルの(ふち)ギリギリのところまで追い詰められた。もう逃げ場はない。

 カヲリの恨めしそうな眼差しが、真城をねめつける。

「やめ……やめて……」

 亡霊たちが真城に襲いかかる。真城はバランスを崩し、ビルの縁から足を踏み外した。

 三〇〇メートル下のアスファルト上で発見された真城の死体は、肉片になってバラバラに飛び散ってしまったせいで、身元が特定されるまで二日間以上かかったという。

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