↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/14

第十二章 帰宅


翌朝、ホテルを出た。


「帰るのか」

 ギャレットが問う。

「はい」

 クリスティアーナは、しっかりとうなずいた。


 ホテルにピアノはないし、いつまでも他人の金で泊まり続ける気にはならなかった。


 自宅の前まで来て、クリスティアーナは立ち止まる。側のギャレットが、無言で見下ろした。家にはきっと、妹コーデリアがいる。もしかしたら、シモンも。変装し、クリスティアーナを襲撃したかもしれない彼らが。


ギャレットがクリスティアーナの肩に手を置いた。かかる重みは、温かい。


 クリスティアーナは、ゆっくりと呼吸した。私は、一人ぼっちじゃない。ギャレットも、マエストロも助けてくれる。敵を恐れる必要はない。


ギャレットを見上げ、微笑んでみせた。

「ありがとうございます。大丈夫です」

「ああ」

  言葉は少なかったが、肩にかかる圧がわずかに増した。その手を握り、クリスティアーナは言った。

「私は、あなたのために演奏します。あなたにもマエストロにも恥ずかしくない演奏をするために、今できることに精一杯尽くします」


 そうして彼の手をやんわりと退け、我が家の扉を叩いた。



 両親は、朝帰りした娘を叱りつけたが、夜に何があったのかは聞かなかった。


 もし聞かれたら、妹の悪事を打ち明けてやったのに。いや、妹贔屓の両親は、私の言葉など信じもしないか。


 コーデリアが不在なのをいいことに、クリスティアーナはピアノを弾いた。召し使いの迷惑顔を無視し、何時間も譜読みに費やした。与えられた猶予は一ヶ月。その間に一曲仕上げなければならない。


 夜になっても、翌日も、シモンは姿を現さなかった。クリスティアーナにとってもその方が都合良い。余計なことで集中を乱さずに済むから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。