第9話 有能な迷子センターの人だな~(泣)
「食料品も2人分だと、いつもより多いな」
ショッピングモールの出口にほど近いベンチで、横に並ぶ買い物袋2つを見やりながら、私は呟いた。
いつも持ち歩いている買い物用のエコバッグでは足りずに、ビニール袋まで必要だった。
なお、たくさん買い込んだタマモの生活用品は、宅配サービスを頼んだ。
「さて、タマモの買い物はまだかな」
カフェで何とかタマモをなだめた後は、私は食料品の買い出しで、タマモは買いたい物があると言って別行動になった。
別行動にしたいと言い出したのはタマモからだ。
私も付き合うよと言ったんだけど……。
「他の人に買うのを見られるのは恥ずかしい物だから……」
と言われてしまったので、即、別行動を了承しました。
まぁ……、うん。
女の子には色々とあるよね。
「それにしても、遅いなタマモ」
食料品のレジが混んでいたので、てっきり私の方がタマモを待たせてしまっているかと思ったんだけど、待ち合わせ場所のベンチにはまだタマモは居なかった。
女の子の買い物は長くなるとは言え、随分と時間が……。
『ピンポンパンポ~ン♪ 迷子のお知らせです。白鳳学園よりお越しの、白玉桃萌さん。白鳳学園1年の白玉桃萌さん。お連れ様がお待ちです。至急、迷子センターへお越しください』
「…………は?」
ベンチの上で思わず固まる私。
そして、仕事や学校終わりに慌ただしく夕飯の買い物をしている人達も、館内アナウンスの内容に思わず足を止める。
「え? 高校生で迷子?」
「白鳳学園って、あのエリート校の?」
「あれ? あのベンチに座ってる子、白鳳学園の制服だけどもしかして」
おかしい……。
何で、待ち合わせ場所にちゃんといる私が迷子になっている扱いなのか?
そして、なぜわざわざ迷子アナウンスで、学校名を⁉
ああ、そういやタマモは私の家の住所をまだ憶えてないのか。
その点、白鳳学園の制服は地元ではよく知られてるしな。
周りの人にも気付いてもらえるし。
有能な迷子センターの人だな~(泣)
そんな事を現実逃避気味に考えながら、私は、直ぐにタマモのスマホを買おうと決意するのであった。
◇◇◇◆◇◇◇
「ヒック……。エグッ……」
「泣かないで、お姉さん」
「お菓子やるから泣き止めよ姉ちゃん」
「ありがと……。ズビッ……」
迷子センターに入ると、奥から一際大きい声量でしゃっくり上げている声が聞こえた。
覗いてみると、案の定タマモだった。
同じく迷子になっている子供達が、泣きじゃくるタマモのことを励ましていた。
ああ、これ、自分より泣いて不安がっている子がいたら、寧ろ自分は冷静になるパターンだな。
「タマモちゃ~ん。お友達来たわよ~」
「はっ!? 桃萌。も、もう。どこ行ってたの!」
グジッグジッと目元の涙を拭うと、シャンと背筋をのばして座り直すタマモ。
だけど、さっきまで泣いてて子供たちに慰められていたのを見てたから、意味のない行動である。
「良かったな姉ちゃん」
「帰る家族が居るっていうのはいい……」
「ここは、お前みたいなカタギが来るところじゃないんだ。二度と来るなよ」
「はい。ありがとうございました。皆さんもお元気で」
ペコリと丁寧に同志たちにお辞儀をして、タマモと共に迷子センターを後にする。
「ゴメンねタモマ。待ち合わせ場所が分からなかった?」
「うん……。聞いてた一階の場所にベンチがなくて探しまわっている間に、自分がどこにいるのか分からなくなっちゃって……」
帰り道を歩きながら、タマモが申し訳なさそうにする。
「ああ。多分、別館の方の出口と勘違いしたんだろうね。あそこ、連絡階通路が広くて、いつの間にか別館に移動してたのに気付かないんだよ」
「そうだったんだ。ここのショッピングモールは広くて、ランジェリーショップまでなかなか辿り着けなくて」
「そ、そう……」
あえて聞かなかったのに……。
迷子状態から解放された安心感から言っちゃったよ、この人。
「……? …………あ」
黙り込んだ私の様子を見て、一拍遅れで気付いて赤面し、ランジェリーショップの紙袋を抱きすくめて、今更隠し赤面するタマモ。
「桃萌のエッチ……/// 」
「い、いや別に私も女だし! 」
そんなタマモを見て、私も何故か赤面。
そのまま赤面した2人は無言で、それぞれの袋を抱えて帰路についた。
──下着の洗濯は別にするか……。
じゃあ、洗濯機の使い方を教えなきゃなとか、下着用の洗濯ネットは数が足りてたかな? と、あらぬ方向へ思考を飛ばすことで平静を装うのであった。




