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玉藻とタマモは甘やかしたい  作者: マイヨ@貞操逆転男友達【5/29発売】


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第10話 お揃いで

「んあ~、ようやく帰って来たね。よし、夕飯作るか」

「だから、そこでソファに寝っ転がってくれないと、玉藻である私の存在意義が無いんだってば!」


 買い物袋から、今日の夕飯に使う材料はそのままキッチンに出して、他は冷蔵庫や食料棚に入れた所で、タマモが頬を膨らませて不平をもらす。


「ソファで一休みすると根が張っちゃうから、直ぐに動いた方が、結果的に楽なんだよ」


「だから、なんでそう、桃萌はスーパー家政婦みたいなの⁉ もっと家ではダラダラしてよ! これじゃあ、立派な玉藻になる練習にならない!」


 そうは言っても、身体に染み着いた日頃のルーティンは、やらないと寧ろ落ち着かないんだよね。


 そもそも食料品の買い出しをしたのは私で献立の組み立てもしたのだから、必然的に私が作った方が効率がいい。


「まぁまぁ。今日の夕飯は簡単だからさ。納豆チーズのはさみカリカリお揚げだよ」


「え? お揚げでそんな遊園地みたいなメニューを!?」


 油揚げに反応するタマモ。

 しかし、油揚げに納豆、チーズのメンバーで遊園地とは、過分な評価である。


「油揚げにとろけるチーズと納豆、大葉を入れて揚げ焼きにするんだ。美味しいよ~」


「し、仕方がないなー。そのメニューのレシピを知らないから、今回の私は桃萌が作ってるのを見せてもらおっと」


 妖狐を釣るなんてチョロいもんである。

 油揚げがあれば、ほいほいこちらの言うことを聞く。


 それも、今まで油揚げの味を知らない生娘なんて特に。


 って、何か変態オヤジみたいだなと思いつつ、私は油抜き用のお湯を鍋で沸かす。


「油揚げは最初はお湯にくぐらせるんだ」

「油抜きのための下茹でだね」


 タマモに油揚げの扱いについてレクチャーしながら、私は箸でつまんで油揚げをザルに上げる。


「茹で時間は短いんだね」

「今日のメニューは揚げ焼きだから、そこまで油抜きしなくていいからね」


「あれ? でも、先生。まだ鍋にはお揚げがたくさん茹でられたままですが」

「よく気付いたね。料理によって油抜きの時間は異なるんだよ」


 料理教室の生徒であるタマモの疑問に、講師の私が答える料理教室コントをしながら料理は進む。


「じゃあ、まだ茹でてるお揚げは別の料理に使うの?」


「そうだね。煮込み料理に油揚げを使うなら数分茹でた方が、出汁も染み込みやすいから。まだ茹でてるのはいなり寿司用だね」


「キャ~~‼ いなり寿司‼ 桃萌の手作りの!」


 おおう。

 テンション高いな。


 カフェでケーキを前にした時よりも、何倍も喜びを爆発させてる。


「いなり寿司はお揚げに味が染みた方が美味しいから、明日用ね。さて、油揚げにチーズと大葉と納豆を入れていくよ」


「ふわぁ……。納豆って本当にネバネバするんだ」

「和食はある程度知ってるみたいだから、納豆にも挑戦してもらおうかと思ってね」


 物珍しそうに納豆を混ぜ混ぜするタマモだが、さて、食べられない人はマジで無理という納豆、タマモはどうだろうか?


 そんな意地悪な事を考えながら、さりげなく納豆抜きの物も作りつつ、中身が出ないように油揚げの口をつま楊枝で止める。


「本当は、桃萌を男性に見立ててダメダメにしなきゃなんだけど、こうしてキッチンで並んで料理を作るのっていいね。まるで……」

「なんか、新婚さんみたいだよね」


「それ、恥ずかしいから言わないようにしてたのに」


 プクゥッと頬を膨らませつつ、横から身体をコツンとぶつけて抗議してくるタマモ。


 あ、早速、料理のためにさっき買ったシュシュで髪を結わえてる。


「いや、だってエプロンもピカピカの新品だしさ」


「桃萌のエプロンは使い込まれてるけど、私のは買いたてで、いかにも私が料理し慣れてない感じが出ちゃってて何か嫌だ」


「料理は経験値だしね。さて、揚げ焼きしてこうか」

「既に美味しそうな匂いがしてきたよ~」


 包み終わったお揚げ達をフライパンで揚げ焼きし始めると、タマモは目を輝かせながら見いっていた。




 ◇◇◇◆◇◇◇




「さて、換気はこれくらいでいいかなっと」


 揚げ焼きとは言え、揚げ物をした時特有の臭いが充満していたために開け放っていたリビングの窓を閉めて、クーラーを入れ直す。


 最近は、夏じゃなくても暑いもんね。


「タマモのお風呂はまだ終わらないか。女の子のお風呂って時間かかるんだよね」


 髪に油の臭いがついてるから、早く洗い流してきなと、後片付けをしたいのにと恐縮するタマモをお風呂に突っ込んでおいたのだ。


 後片付けの他に、明日のいなり寿司の下準備もあるし、宅配を頼んだショッピングモールの荷物の受け取りもあったし。


「お風呂、お先……」

「うん。お、新しいパジャマ買ってたんだね」


 少しモジモジしながら浴室から出てきたタマモが着ていたのは、襟つきシャツタイプで、ホットパンツの夏仕様のパジャマだった。


 昨夜は、白無垢の着物姿で寝てたんだから、そこから偉く楽ちんなスタイルになったな。


「うん。ええと、それでその……」

「なに?」


 言いにくそうにするタマモが、後ろ手な隠していた物をおずおずと取り出す。


「お揃いで桃萌のパジャマも買ったんだけど……」


「おお、ありがと。いくらだった?」


 私の知らぬ間に買っていたということは、ショッピングモールで別行動で買い物をしていた時に買ったものか。


「いや、これは私が勝手に買ったものだから」

「いやいや、そういう訳には。私が着るものなんだし」


「だから……もうっ! プレゼント! 桃萌は、女の子からのプレゼントも無下に断るの!?」


 私がパジャマの代金を払おうとすると、珍しく本気で怒ったタマモに反論される。


 なぜ、本気で怒っているのが解るかと言うと。


「タマモ。キツネ耳と尻尾が出てるよ」


 ピーン! と張りつめたように耳と尾が立っていたのだ。


「わわっ! やっちゃった」


 私の指摘に、慌ててお尻の方に手をやるタマモ。


「感情が高ぶると出ちゃうんだ」

「うん。私は未熟な玉藻だから……。でも、一般の霊力を持たない人間なら、出ていても見えない幻術をかけてるんだけど」


「そうなんだ」

「あれ? そう言えば、桃萌は私のキツネ耳が見えるんだ? 最初の白無垢の時には、私が玉藻だと伝えるために、あえて幻術はかけていなかったんだけど」


 あ、しまった。


「……それは、私が有能だから」

「なるほど。流石だね桃萌は」


 タモマは素直な子なので、雑な言い訳でどうにかなった。


 有能キャラで良かったな、私。


「それじゃあ、話は終わりってことで。桃萌はお風呂に入ってきて」


 そして、タマモも雑にパジャマのお金の払いについての話を終わらせる。


 こりゃ、一本取られたかなと苦笑いし、私は大人しくプレゼントのお揃いのパジャマを手に風呂場へと向かった。


10話まで来ましたね。

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