第14話 そういうドキドキじゃないし……
「日本での生活も落ち着いてきたから、そろそろ私がとり憑くべき人を探そうと思うの!」
夕飯が終わった所で、何やら改まって決意表明をするタマモに対し。
「じゃあ、男をダメにする有能なタマモさん。自分の食べた食器は、ちゃんと流しに持ってきてくださいね~」
「はーい。分かりました」
お母さんが子供にお片づけを教えるみたいに号令をかけると、洗い物をしている私の所に、トテトテと皿を運ぶタマモ。
何やら自信をつけているタマモだけど、まだまだ抜けた所が多いんだよな。
男をダメにするには程遠い。
まぁ、言われたら素直に動くところは良い子ではあるんだけど。
「学園で、誰か気になる人でもできたの?」
「いや、全然。男の子とはほとんど喋ってないし」
「じゃあ、ダメじゃん」
「だからお願い桃萌。ちょっと付き合ってよ」
「は、はぁ!?」
な、何を言ってんの、この子は。
そ、そんな……いくら私が有能だからって、女の私をそういう対象に見るんじゃ……。
「街中で有能男性を探す冒険に出よう!」
「却下。はよ風呂入れ」
何かと思ったら、要はナンパされに行くって事?
そんなの、絶対ダメだから。
私もタマモも確かにビジュは良い方だから、街中で所在なさげにキョロキョロしてたら、格好のナンパの餌食になるよ。
ったく。
あの子ったら、本当に危なっかしいんだから。
「ふ~っ。いいお湯だった」
「随分お風呂の時間早かったけど、ちゃんと洗った~? って、髪ちゃんと乾かしなさいよ~」
「熱いから扇風機の前でやる~。あ~あ~。我々は宇宙人、ではなく玉藻様だ~」
「扇風機で乾かしたら、髪傷むでしょ。ちょっとこっち来な」
食器の洗い物が終わったその足で、冷蔵庫に向かい、棒アイスを取り出しビニールを開けつつタマモの方へ向かう。
「え~。ドライヤーは暑くてめんどい~」
「ほい、アイス。これ舐めてな」
「わ~い♪」
扇風機の前で体育座りしながらソーダ味の棒アイスをしゃぶっている隙に、タマモ用のヘアドライヤーで根元から髪を乾かしていく。
──まったく……。適当なケアしてきた割に、髪質柔らかいんだから……。
ちょっぴりタマモの亜麻色髪の才能に嫉妬しつつ、髪を乾かしていく。
髪が私以上に長いだけに、結構時間かかるんだよな。
「ありがと桃萌。はい、これあげる」
「あげるって何を……って、んぐっ!?」
振り返りざまに、タマモが私の口の中に何かを突っ込む。
口の中にヒンヤリとした冷気とソーダ味の爽快さが拡がる。
溶けかけていたそれは、あっという間に口の中で儚く溶けた。
「んっ……。溶けかけだから、私に最後押し付けたな」
「えへへ。バレた~?」
「急に口の中に突っ込まれたから、アイスの溶けた汁が少しタマモの髪についちゃったじゃん」
そう言いながら、タオルでタマモの髪を拭く。
拭きつつ、ちょっと心拍を整える。
──べ……別に。急にアイスを口に突っ込まれてビックリしたからなだけだし……。そういうドキドキじゃないし……。
そう自分に言い聞かせながら、私はタマモの髪を乾かした。




