7 おじいちゃん倒れる
娘が、孫をつれて帰ってきた。遊びに行くので預かってくれと言う。思い出せば、私もこの娘を母に預けで映画を見に行った事がある。
しかし、孫を抱いての執筆は無理だった。次の日も筋肉痛で無理だった。ようやく今から書きます。
散歩の帰りはいつも通り、ゆっくりとした足取りで家に向かって歩きます。
やがて新谷家が見えてきました。
救急車が止まっている。赤色灯が点滅している。
「あれは、さっきの救急車だ。うちの前に止まっている」
おばあちゃんは、足を速める。私も一生懸命に走ります。
家にたどり着くと、若奥さんが、救急隊員と話している。おばあちゃんは、お構いなしに話しかける。
「早苗さん、これは、どうしたの?」
「お父さんが、突然苦しみだして、今、救急車の中、意識はあるから、多分大丈夫。念のため今から県立病院へ搬送するそうです。」
「そう。大丈夫そうね」
おばあちゃんは、少し落ち着きを取り戻します。
「それで私、一緒に付いて行こうと思います。お母さんは留守番をお願いします」
おばあちゃんは少しの間、考えてから、
「いいえ、私が付いて行く。病院から連絡するから、車で迎えに来て」
「分かった。正さんには、これから連絡します」
救急車はおじいちゃんとおばあちゃんを乗せて走り出した。サイレンの音が聞こえなくなるまで、私は、救急車が走り去った方向を見ていた。
私がどうでもいいなどと思ったから、バチが当たった。
おじいちゃん、ごめん。おばあちゃん、ごめん。
涙目になりながら、若奥さんを見上げると、
「マルちゃん、心配しなくても、大丈夫。きっと元気に帰って来るよ」
「キャン」
うん。
1時間ほど経ち、この家の大黒柱、正さんが帰ってきた。
仕事を早退したようだ。
「親父は、どんなぐあいだ」
「まだ、お母さんからは、連絡がないの」
「そうか、なら心配ないようだな」
新谷家の若旦那は冷静だ。そして詳細を妻から聞く。
事の顛末は次のとおり。
若奥さんが、夕食の準備をしていると、突然、奥の部屋からゲホゲホと苦しそうな咳が聞こえる。若奥さんが駆けつけると、おじいちゃんは、四つん這いになって大きな咳を繰り返している。顔は真っ赤だ。背中をさすって上げても咳は止まらない。これは異常だと思った彼女は躊躇せずに救急車を呼んだ。
駆け付けた救急隊員は状況から誤飲だと判断して、応急処置した。
おじいちゃんの口から大福餅が出てきた。
「救急隊員が判断した、その状況とは、何だ」
「おじいちゃんは、おばあちゃんのお菓子を入れてある例の甕から盗み食いをしていたらしいの」
「ああ、なるほど」
若旦那は納得し、私は呆れた。
「キャンキャン」
糞爺、私の心配と反省を返せ。
ブルブルブル、若奥さんの携帯が震えている。
「お母さんからだわ」
「そう、良かった。直ぐに迎えに行くからね」
「検査した結果、全く異状ないそうよ」
「「はー」」
若旦那と私は長い溜息を吐いた。
家に戻ってきたおじいちゃんは、おばあちゃんの部屋を気にしている。大方、盗みに入った現場がそのままになっていると思っているのだろう。
「キャンキャンキャン」
そこは若奥さんが綺麗に片付けているから、直ぐにばれる心配はないよ。でも大福餅が無くなっている事までは隠せないから、正直におばあちゃんに謝った方がいいよ。
「そうだな。正直に謝るか」
えっ、初めて私の言う事を聞いてくれた。
「キャンキャン」
それなら、心配させたお詫びに、ワンチュールをおくれよ。
「何だ。マルも一緒に謝ってくれるのか」
「・・・」
何故、私が謝らなければならない。謝ってほしいくらいだ。
おじいちゃんは、その後、おばあちゃんに謝った。
後日、おじいちゃんはおばあちゃんと餡蜜を食べに出かけた。
許してもらえたようだ。
その日は1日、私は有休休暇となった。散歩から解放され、ゆっくりとした休暇を過ごすことができた。
おじいちゃんの恥ずかしい事件だったが、結末として悪くない。
私の父は庭師だった。木から落ちて、自分で救急車を呼んで、病院へ搬送された。検査を受けて異状なかった。そして独りでバスで帰ってきた。父の黒歴史です。
人生の黒歴史は年をとっても、更新されます。私も気を付けたいと思います。




