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8 些事

 畑に行ってスイカに水を上げていたら、小さなバッタの赤ちゃんが沢山出てきました。水に驚いたようです。小さいだけで可愛いものです。みんな元気に生きていくのだぞ。 いやいやそれでは私の畑が荒らされる。みんなほどほどに元気でな。

 おじいちゃんとおばあちゃんは仲が悪いと思っていたが、最近の出来事を振り返ると、そうではないと考えを改めた。

 おじいちゃんもおばあちゃんもお互いを大事に思っている。そうなると、散歩も二人で一緒に行くようになるのではと期待したが、現状に変化なし。残念なことに、私の1日8回の散歩業務は継続中である。

最近の日常に変化はなく、単調な毎日を過ごしている。

 私の仕事に業務日誌と言うものがあれば「〇月〇日 晴れ 散歩8回 異状なし」が毎日続いていることだろう。

 これは多分良い事だと思う。

 特記するような事ではないが、単調な毎日でも些細な事ならある。


 散歩の途中、畑の隅で、バッタの赤ちゃんが、生まれていた。体長3ミリ程しかない小さなバッタが、10匹以上いた。

 私が鼻を近づけると、慌てて四方へピョンピョンと逃げていく。可愛い。

 私が、動かずに一か所を見つめていると、おじいちゃんも腰を低くして、バッタの赤ちゃんを見つめています。

「おや、これはショウリョウバッタの幼生だな」

 おじいちゃんは博学かもしれない。たった3mmのバッタの赤ちゃんを見て、その種類まで特定するなんて。

 私が尊敬の眼差しでおじいちゃんを見上げていると。

「ウソじゃよ。わしの目には小さな緑色の虫が跳ねているしか見えていない。バッタなのかもよく見えない」

 なんだ。ウソかよ。まあ、信じた私もだめだな。でも直ぐにバッタの種類が出て来るのは、大したものだ。

「でも、からっきし嘘だという訳でもない。昔、わしが子供の頃は、この場所でショウリョウバッタを捕まえたものだ」

 おじいちゃんが子供の頃と言えば戦時中じゃないか。まさか捕まえておやつにしていたとか、少し失礼な考えが浮かぶ。


「あら、新谷さん。どうされたのですか?こんな所で、しゃがみ込んで具合でも良くないのですか」

 南原のおばあちゃんが、声を掛けて来た。私とおじいちゃんが、畑の隅でしゃがみ込んでいるのを見て、心配したようだ。

「ああ心配いらないよ。マルがバッタの赤ちゃんを見つけたので、それを見て昔を思い出していただけだよ」

 おじいちゃんは南原さんの声に気が付き、すっと立ち上がる。いつもなら「よっこいしょ」と掛け声が必要なのに。やはり、おじいちゃんは南原さんに気がある。

「あら本当に、バッタの赤ちゃん、可愛いね」

「「キャンキャン」」

 何だ。俺たちにも見せてくれ。

 南原家のチワワたちも興味を持ったようだ。

 私は彼らに場所を譲って上げた。

 南原家のチワワたちは、我先にとバッタを見ようと覗き込む。

「クッシュン、クッシュン」

 どうやら、バッタの赤ちゃんに鼻を近づけすぎて、バッタの赤ちゃんが鼻の穴に飛び込んだようだ。

「あら大変、どうしたの、大丈夫?」

 南原さんは苦しんでいるチワワの背中をさすって上げている。

「クッシュン、クッシュン、ハックシュンン」

 最後に大きくくしゃみをすると、鼻の穴から、一匹のバッタが飛び出して来た。鼻汁でベトベトにされて、地面に張り付いている。何とか生きてはいるようだ。

「キャンキャン」

 おえー、大変な目にあった。

 いやいや、大変な目に合ったのは、バッタの方だ。いきなり鼻に吸い込まれて、挙句は鼻汁でベトベトにされた上、地面に叩きつけられた。

 私は気の毒とは思ったが、鼻汁でベトベトになったバッタを舐めて綺麗にしてあげる気にはなれなかった。

「マル、行こうか」

 おじいちゃんにとってもバッタの災難は取るに足らない事だったようだ。何事もなかったように歩き出した。私もトコトコとおじいちゃんの後に続く。


 日常何が起こるか解らない。今日の事は他山の石として気を付けることにする。




 毎日が穏やかに過ごせますようにと思う反面、刺激が欲しいと思うこともあります。

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