表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/39

29 サミット

 今日も元気に、畑に出かけます。途中カラスに出会いました。私の畑を荒らす奴です。暑さのため、口を開けています。真っ黒の羽は熱を吸収するため、大変暑いのだろうと推察します。ざまあです。




 午後3時、外は蝉が合唱しています。

 ジーンジンジン、ジー。ジーンジンジン、ジー。

 蝉の鳴き声が、太陽光線が降り注ぐ音の様に聞こえます。

 今、外に出たら焼き殺されそうです。

 聖なる光に、焼き殺されるのは、死霊やアンデットの悪者たちです。決して私たちは死霊やアンデットではありませんが、(おばあちゃんは怪しい)・・・と思いますが、浄化される予感がします。


「マルちゃん、行くよ」

 意を決した、おばあちゃんからのお誘いです。

「キャンキャン」

 おう!いざ参らん。

 私も、決死の覚悟をして応じます。


 おばあちゃんは、大きめの日傘をさし、玄関を出ます。私もその陰から出ないように、おばあちゃんの半歩後ろを就き従います。

 目的地は、白山さん家です。


「こんにちは、」

「もうそろそろ来るかなと思って、冷たいカルピスを用意してまっていたよ。マルちゃんは例のものでいい?」

「キャンキャン」

 ありがとう、智子さん。

 私が、おばあちゃんの誘いに素直に従っているのは、このためです。


 今日は、おばあちゃんたちの定例会の日です。彼女らはこの定例会をサミットと呼んでいます。週に1度開かれる重要な会議です。

 この会には、おばあちゃんと智子さんの他にも南原さんが来ています。なので、犬は南原さんのチワワ2匹も一緒です。


 このサミットの議題は、世界情勢(ご近所の噂話)についてです。


「この前の救急車、遠藤さんよ」

「知っている。でも次の日ピンピンしていたね」

「年を取ると、心臓が止まる事があっても、また自然と動き出すことがあるらしいよ」

「それは、一度死んで生き返るの?脳に障害が残るのでないの?」

「それは、アンデッド化しているのかも」

「三途の川を見たか聞いてみようか」

「それは、ちょっと聞きづらいでしょ」

「そうよ、噛まれたら、私たちもアンデットになるかもよ」

「見た感じ、ミイラみたいだから、酸素や栄養を必要としない体になっているのじゃない」

「私の旦那も同じような感じ」

「障害といっても、どこからが障害で、どこからが老化なのか解らないよね」

「病院行っても、悪くなった原因は老化の一言で説明されてしまう」

「うちの旦那は、ゼンマイで動いている感じ。シャキシャキ動いていたと思ったら、突然止まってしまう」

「そうそう、うちのも同じかな」

「この町全体が、同じ状態かも」

「外から見たら、私たち3人もゾンビと変わらないよね」

「「「あはは」」」


 誰が何を喋っているのか、重要ではありません。中身のない会話です。

 しかし、会議は白熱する。侃々諤々、喧喧囂囂。


 そして、彼女らの直ぐ近くで開かれている別のサミットでも同じです。

 私たち犬の議題は、労働と対価(散歩とワンチュール)についてです。


「キャンキャン」

 最近のワンチュール、種類が多くなったね。

「キャンキャン」

 そうそう、ベースのとりささみは変わらないけど、緑黄色野菜とかチーズが入っているのがあるよね。

「キャンキャン」

 もともと美味しいのに、どんどん美味しいのが増えるね。

「キャンキャン」

 私たちの労働は、変わらないのに、全体的に報酬が上がっているのはなぜかしら。

「キャンキャン」

 それ聞いた事がある。ベースアップと言うらしいよ。経済成長に伴う全体の賃上げなのさ。

「キャンキャン?」

 何のため?

「キャンキャン」

 人材確保のためだよ。

「キャンキャン」

 私たち優秀な犬を雇い続けるための報酬アップか、なるほど、納得だ。

「キャンキャン」

 そうだ。井筒屋のゴン太君は、ステーキを貰っているよ。

「キャンキャン?」

 何それ、食べれるの?

「キャンキャン」

 うちのおばあちゃんと同じことを言っている。勿論食べ物さ。最高に美味しいらしいよ。

「キャンキャン」

 私も食べたい。どうすれば食べるるの」

「キャンキャン」

 我々では無理だ。ゴン太君は元盲導犬だ。我々のような一般労働者では口にできない。

「キャンキャン」

 でも、ワンチュールも最初は、王侯貴族の食べ物だったじゃない。それが今では私たちも口にしている。可能性はあるわ。

「キャンキャン」

 そうだな。ステーキより美味し物が、開発される可能性だってある。

「キャンキャン」

 そうだよ。人間は、私たちペットがいないと生きていけないのだから、必死で商品開発するよ。

「キャンキャン」

 そのとおりだ。今は、彼らの努力に期待しよう。


 会議は白熱する。侃々諤々、喧喧囂囂。ただ、五月蠅いだけです。



 今は暑いです。私の部屋はエアコンがありません。扇風機だけ。辛いです。カラスの気持ちが解ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ