23 シルバーさんはカッコいい
梅雨は開けそうにありません。それよりも、台風7号と8号が梅雨前線に沿って移動しました。何だこれは、合体するのか?仮面ライダーV3だ。
ビィーン、ビィーン、朝から草刈り機の音が聞こえてきます。週末はよく耳にする音なので気にはなりません。
あぜ道や、休んでいる畑の雑草を定期的に刈っているのです。
私は今日も、おじいちゃんと一緒に散歩中です。
いつものコースを歩いていきます。当然、いつもと同じ、白山さんの畑に差し掛かります。
ビィーン、ビィーン、聞こえて来る音が大きくなります。先ほどから聞こえていた草刈り機の音は、白山さんの畑から聞こえていたようです。
「おはよう。精が出るな。」
「おはよう。いやいや、今のわしには、草刈りは無理だ。今回はシルバーさんに頼んだ」
近づいてみると、知らない人が草を刈っている。
よく見ると、刈っている人は、おじいちゃんと同じくらいの高齢者だ。ああ、だからシルバーさんなんだ。外人さんではないのです。
シルバーさんの作業は手際よく進んでいます。とても高齢者とは思えません。私とおじいちゃんはその作業を眺めています。
「マルちゃん、今日の散歩は終わりだ。帰るぞ」
どうした事か、おじいちゃんは突然、早足に帰宅します。私は小走りでついて行きます。
「ただいま」
「あら、おじいさん、随分と早かったね」
おばあちゃんが玄関で出迎えてくれました。
「ばあさん、わしは、シルバーで働くぞ」
「あんた、80にもなってまだ働く気かい、作業中怪我でもして、年寄りの冷や水と言われるのが落ちだよ」
「さっき白山の所の畑に寄ってみたんだが、わしと同じ位のシルバーさんが草刈りをしていた。その姿を見てカッコいいと思った。わしも散歩ばかりしておれん」
「キャンキャン」
凄いおじいちゃん。私は応援します。
おじいちゃんの散歩がなくなれば、半分の4回になる。ここは是が非にでも頑張ってもらいたい。
「人から直ぐ影響を受けるのは相変わらずだね。できるものなら、やって見な。マルちゃん、次はわたしと散歩に行こう」
「キャンキャン」
今駆け足で戻って来たばかりだよ。少し休ませて。
「何へばっているのさ。智子の所へ行くから、ワンチュールがもらえるよ」
「キャンキャン」
直ぐに出発だ。
私はおばあちゃんに連れられ、散歩に出ました。また白山さんの畑に差し掛かります。
「あれが、カッコいいシルバーさんだな。なるほど、なかなかのものだ。高倉健風だな」
おばあちゃんは、良い男がいると聞いて、駆け付けた様です。ミーハーです。恋愛に年齢は関係ないようです。いいえ、年を取るほど遠慮が無くなるのです。
声を掛けるのかと思ったが、すんなりと通り過ぎます。
それから寄り道せずに真っ直ぐ歩き、白山さんの家に着きます。
「智子いるかい」
「京子、久しぶり。まあ上がって」
「キャンキャン」
こんにちは、智子さん。
「マルちゃんも、上がって、ワンチュールでいいかしら」
よし!おばあちゃんの言ったことは嘘ではなかった。
私は、おばあちゃんに足を拭いて貰って居間に上ります。
智子さんが、御茶菓子を用意すると女子会が始まった。
勿論、私も女の子なので、当然参加します。
「智子の所の畑、今、シルバーさんに草刈りしてもらっているよね」
「あぁ!なるほど、京子、見たのね。良い男でしょ」
「キャンキャン」
元気なおじいさんだね。
「見た見た、高倉健だね」
「でしょう。年をとってもカッコいい人はカッコいいね」
「それでね。うちのじいさん、その人に当てられて、自分もシルバーで働くって言い出しているのよ」
「良いじゃない。京子の旦那さん、まだまだいけそうじゃない」
「キャンキャン」
そうだそうだ。おじいちゃんは、まだまだいける。
「全然だめよ。智子の旦那さんは、常日頃から畑仕事をしているから、大丈夫だけど、うちのは散歩だけよ。万が一働いても1日で腰が痛いの、腕が上がらないのと言いだして、稼ぎより、治療費が多くなる」
「そうだった。年寄りが怪我すると、長引くからね。うちのは医療費以外にも何かと物入りで大変だった。それに、リハビリはまだまだ続きそうよ」
「ああやっぱり、大変なんだ。でも、うちのじいさん、言っても聞かないから。いくらシルバーで頑張っても、高倉健にはなれないのにね」
「そうね。シルバーで働いて、高倉健になるのなら、尻を蹴ってでも行かせるね」
「「あははは」」
確実に、おばあちゃんたちは、おじいちゃんたちよりも元気です。それに、若輩の私は、おばあちゃんたちの女子会には、ついて行けないと思いました。
そして、おじいちゃんには、無理をせず、健康でいてほしいと思います。
梅雨の中休み、今日は久しぶりに晴れです。畑に行くと、この連日の雨で、雑草が生い茂っています。草刈り機の出番です。私は、自分で何とかします。やりたかないけど。




