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第12話 喫茶店と予想外の出会い

「いらっしゃいませ〜」


 お店の中に入ると、俺たちと同年代に見える可愛らしい女店員さんが迎えてくれた。

 初めて入るオシャレな喫茶店に驚き、店内をぐるりと見回す。


「何名様ですか?」

「す、すごい……あ! 二人です」


 店内に夢中になっていて店員さんの話を無視しかけてしまった……

 地元にはこんなオシャレな喫茶店なんてないのだ。

 そんな動揺しまくりな俺とは打って変わって、茜は慣れているようでいつもと変わらないような感じでいる。


 俺もいずれはかっこよくこう言う喫茶店でブラックコーヒーでも嗜めるようになりたいところだ。

 

 あ、俺苦いの無理だったわ。


「二名様ですね、こちらの席にどうぞ」


 店員さんに案内されて、俺と茜は道から見える窓際の席に座った。


 それぞれ机の端に立てられていたメニューに手を伸ばした。

 メニューを開くと、そこには一切写真のない、商品名と金額しか書かれていなかった。

 

 どうしたものか……コーヒーの名前なんて分からない俺からしたらかなり難解である……

 どれくらいかというとサイゼの間違え探しくらい鬼畜だ。


 メニューの上から下へと、一つ一つ商品名を見ていく。見ていくが……さっぱりだ。全く分からん。

 メニューに書いてあるのは見慣れないオシャレそうな名前の横文字商品ばかりで、何ひとつとして分からなかった。

 なんだよウインナーコーヒーって、コーヒーにウインナーでも入ってるのか?


「雨宮さん、決まりましたか?」


 茜がメニュを閉じ、俺にそう問いかける。茜はこういうお店に慣れているのだろうか。もしくはコーヒーに詳しいのかは分からないが特に悩んだりもせず即決であった。


 デートでこうやってスマートに注文する品物をいめられたらかっこいいんだろうな。と思いながら、メニューを閉じ、茜の方を向く。


「俺、こういうのよくわかんないから茜とおんなじのでいいよ」


 安牌だ……実に安牌だ。

 正直、ここで「俺こういうとこ行き慣れてますし?」なんてイキって変なの頼むより、こうやってわからないことを伝えたうえで茜に合わせる方が良いに決まってる。実にパーフェクトだ。


 多分、都会の女の子ってあれだろ?なんか砂糖ばっかの甘い、およそコーヒーと呼べる代物かすら怪しいもん飲んでるんだろ?別に、甘ったるいのなら大丈夫だ。


 実を言うと、俺はかなりの甘党なのだ。ガムシロップを直飲みしようかと考えるほどのイカれた人間である。そんな俺からすれば、余裕も余裕。なんならガムシロップを追加しようかと考えるくらい余裕だ。

 まぁでも、同時に苦いものが大嫌いなんだがな……ここで茜がブラックコーヒーなんざ言い出したら俺、どうしようか。


「分かりました。店員さん、呼びますね」


 そう言って、茜は店員さんと目を合わせて手を上げた。茜に気がついた店員さんが、俺たちの机に駆け寄る。

 

 お盆に乗っけられた、氷水を俺たちの前に置く。


「はい、ご注文お伺い致します」


 店員さんは、エプロンのポケットから伝票を取りだす。

 この情報社会に未だ手書きで注文を受けてるのなんて、俺の田舎の店だけだと思ってたんだが……東京でもこう言う店があるのか。

 俺の思ってた以上にまだまだ電子機器というものは普及しきれていないんだな。

 

 澄ました顔で、先ほど店員さんが持ってきてくれた水に口をつける。


 ここまで談笑しながら歩いてきたせいでのどがカラカラだったのだ。

 はぁ……生き返る……


 そして、茜が店員さんに向かって注文を始める。どうせ、ふ、ふらぺちーの?とかなんとかいうやつだろ?


 優雅に水を飲んでいると、茜の口から聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。


「えっと……ホットコーヒーのブラックでお願いします」


 ……固まってしまった。それはもうガッチガチに。よりにもよってブラック。

 苦いものが大の苦手な俺にとってはもはや天敵とも言える代物だ。


 けれど、茜と同じものにすると言った以上、もう後戻りはできない。そもそも、ここで「あ、俺苦いの無理で……」なんて逃げるようなこと、できるはずがない。


 平静を装い、さっきと同様に澄ました顔で水に口をつける。


「以上でよろしいですか?」

「はい」


 茜が微笑みながら店員さんにそう言うと、店員さんは俺たちに一礼してから戻って行った。

 ちょうどその時、カフェの扉が開いた。


「いらっしゃいませ……今日も来て下さったんですか」


 先ほどの店員さんが体を傾け、ドアから入ってきた新たなお客さんにそう言う。

 話からしてここの常連さんなのだろう。こう言うオシャレな喫茶店の常連なんて、大抵は渋いおじさんか、お上品なマダムくらいだと偏見を持ってい他のだが…… 


 俺のそんな偏見とは裏腹に、そのお客さんは、俺達と同じ制服を着ていた。

 同じ制服を着ている人なんて、嫌でも気になってしまうものだ。ほぼ無意識に目線が行き、足元から少しずつ上へと目線を動かす。


 そして顔へとついたとき、そこには可愛らしい女の子の顔があった。なんだかふわふわとした雰囲気の人だ。

 どこか見覚えのあると思っていたとき、向こうもこちらに気付いたみたいであった。


「あ!茜!……と確か……拓翔君だったかな?」

「晴美お姉ちゃん……?」


 そのお客さんの正体は、茜の里親のところの子供で現茜の姉の晴美さんであった。

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