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第9話 スクールカースト

 入学式から数日、クラス内では徐々にグループとともにスクールカーストが形成され始めて来ていた。

 ちなみに、スクールカーストという文化を俺は大嫌いである。

 よくわからんカーストに縛られ、上位層の人間に逆らってはならない。なにそれ、どこの独裁国家だよってな。


 正直、茜と秋、瑞稀以外の人間と仲良くする気はないので、ひとまず茜に話しかけに行く。


「おはよう。茜──」

「茜ー! おっはよー!」


 茜に挨拶に行き、眼の前まできたとき、横からクラスの女子が割り込んできた。


 一瞬蹴飛ばしてやろうかと思ったけれど、紳士的な俺にとってレディを殴ったり蹴ったりなんてすることはできないので、ぐっと堪える。


 これが男だったら容赦なく蹴散らしてたのにな、などと思いながら、再度茜に話しかけようとする。


 けれど、茜はそのクラスメイトの女子に話しかけられ続けていて、入る隙がない。……どうしたものか。本当に蹴飛ばしてやろうか。


「じゃあねー! 茜」


 すると、茜に話しかけていた女子は一、二分ほど話したらさっさと退散していった。

 その女子が退いたことによって見えた茜の顔は、どこか疲れ切っていた。


「おはよう。茜」


 次こそ割り込まれまいと、空いた隙を狙ってすぐさま茜の机へと近づいた。


 そして、茜に軽く朝の挨拶をする。


 ……話しかけに行ったはものの、全然女の子慣れをしていない俺にとって、この先どんな話題を振ればいいのか、一ミリもわからなかった。


「な、なんか疲れてそうな顔してるけど、大丈夫か?」


 話しかけると、茜はバッと顔を上げて顔に笑みを浮かべた。

 けれど、その笑みはどこからどう見ても心からのものではなく、愛想笑いや自分の心の内を隠しているような感じがした。


「そうですか? 大丈夫ですよ……」


 茜の声には、全くと言っていい程覇気がなかった。


 茜はやはり顔が良いせいなのか、俗に言う一軍と言える連中から度々絡まれていた。茜がつかれているのはそのせいなのだろうか。


 ましてや、あの入学前の出会いから今までで、茜はグイグイいかれるのに慣れていないのだろう。


 入学式のときに秋と瑞稀に質問攻めにあっていた時、今と同じような顔をしていた。

 

 そんな人間にとって、強引に話しかけられるというのは拷問に相当するであろう。


「あんまりグイグイ来られるのに慣れてないのか?」


 そう問いかけると、茜は観念したように「はぁ……」とため息を吐いた。やはりそうであるらしい。


 そして、この茜の姿を見て、俺はすこしばかり心が痛んだ。


 小学生の頃の、天道茜ならば質問攻めにあってたじろいだりなどせず、何なら自分からグイグイと行くはずであった。


 俺の知っている茜はもういないのだと再認識し、さらに心が痛む。


「それにしても……あいつらはすごいよな」


 秋と瑞稀の方へと目を向ける。俺に連動するかのように、茜も二人の方を見た。


 秋と瑞稀は、教室後方の窓側。俗に言う主人公席の周りに高校に入ってから知り合った連中と共に屯っていた。


 まだから差し込む光が、秋たちを照らし、輝かしい青春の一ページと言えるような構図になっていた。


 秋と瑞稀は、持ち前のコミュ力と高い顔面偏差値を武器にして、クラス内スクールカーストのトップへと君臨していた。


 ……待てよ、秋と瑞稀は一軍に所属し、茜もクラスメイトとの友好関係がある。……あれ、これって俺、俗に言うボッチなのではないか……?

 なんか、三人に置いていかれてるような…………

 

「ですよね……頼樹さんと白神さん、すっかりクラスの人たちと打ち解けてますよね……」


 茜も、秋と瑞稀を見て関心している様であった。


 実際、あの二人のコミュ力には目を見張るものがある。入学式の翌日には隣の席の奴と仲良くなり、徐々に徐々にと範囲を広げていき、恐らくクラス内じゃ一番最初に全員にフルネームを覚えられたであろう。


 ちなみに俺はいまだに担任の先生に名前を間違えられるんだけどな。俺は間宮じゃないです、雨宮です。先生……


 その時、教室の扉がガラッと開いた。それと同意に、教室の中へと大柄な男が入ってくる。担任の高坂先生だ。


「お前らー席に着け。ホームルームを始めるぞ」


 高坂先生は、見た目とは相反するような覇気のない声で、朝から慌ただしい教室の喧騒を鎮める。

 

「じゃあな、茜。またあとで」

「はい」


 茜はこちらを向き、やさしい笑みを浮かべる。


 この笑みは、先ほどの作り笑いではなく、心の底からの本心の笑みだと、勝手に思ってしまった。


 高坂先生が教卓に立つとともに、秋の一味も散り散りに自席へと帰っていき、教室内にはしばしの静寂が訪れた。


「え、えーもう入学してから一週間が経ちます。授業も本格的に始まったりして、少しずつこの学校になじんできているでしょう」


 高坂先生がよくある定型文的な入学一周間の言葉を話すが、俺はさらりと聞き流し、窓の外へと視線を向ける。

 

 気が付けばホームルームは学級委員の号令と共に終了していた。


 とりあえず、さっきは茜と話したので、秋と瑞稀のもとへと向かうことにした。

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