刻印の下で
雪誠は村の外れにある石造りの小屋に閉じ込められていた。 三日間——尋問もなく、会話もなく、残飯と冷たい視線だけ。
魔族たちは彼を好まなかった。 罵ることも、殴ることもなかった。 ただ、「穢れを見た」ような目で彼を見ていた。
だが雪誠は気にしなかった。 彼はもっと酷い目を知っていた。 ——宝奥村の人間たち。 かつて彼を「化け物」と呼んだ者たち。
それに比べれば、この軽蔑は風砂のようなもの。 吹き過ぎれば、それで終わる。
—
一日目は冷えた根菜のスープ。 器の縁には誰かの歯形が残っていた。
二日目は硬く乾いた肉。 誰かの皿から拾ったような代物。
三日目、彼は何も口にしなかった。 ただ、壁を見つめて座っていた。
—
黄昏時、ついに扉が開いた。
あの少年が入ってきた。 相変わらず不機嫌そうな顔で、手には短槍。
「立て。村長が会いたがってる。」
雪誠は黙って立ち上がった。
少年は眉をひそめる。 「なぜ理由を聞かない?」
雪誠は淡々と答えた。 「君は答えないだろう。」
少年は口を歪め、先を歩き出した。
—
村長の家は村の中央にあった。 石の壁には蔓と獣骨が掛けられ、火盆には紫の炎が揺れていた。
村長は石の椅子に座っていた。 老いて、静かで、その瞳は夜のように深かった。
彼は雪誠を見つめ、すぐには口を開かなかった。 少年は腕を組み、傍らで見物するように立っていた。
「お前は人間だな。」 村長は低く言った。
雪誠は頷いた。
「なぜここにいる?」
「人を探している。」
「戦士か?」
「違う。」
「その手の傷は、どうした?」
雪誠は自分の包帯と古傷を見つめた。
「誰かを守った。」
村長はしばらく沈黙し、やがて静かに言った。
「お前は、他の人間とは違うようだ。」
雪誠は顔を上げ、穏やかな瞳で言った。
「あなたも、他の魔族とは違う。」
村長は微笑んだ。 何かを理解したような笑みだった。
彼は肩の外套を外し、左肩を露わにした。
そこには古い刻印があった。 星環と炎に囲まれた紋章——それは、基帝の印だった。
雪誠は目を見開いた。
彼はゆっくりと上衣を脱ぎ、胸元の刻印を見せた。
右半分は銀白の光痕。 神聖な羽のように輝いていた。
少年は目を丸くした。 「それ……何だ?」
村長は答えず、雪誠の前に歩み寄った。
「お前は……基帝の民か?」
雪誠は低く言った。
「わからない。かつて祂を裏切った。 でも、祈った。 そして——祂は応えてくれた。」
村長は頷き、瞳が柔らかくなった。
「ならば、お前は我々の敵ではない。」
—
だが雪誠はすぐには答えなかった。
彼は刻印を見下ろし、静かに言った。
「この刻印……半分は、魔王のものだ。」
少年は驚いた。 「どういう意味だ?」
雪誠は左半分を指差した。 そこには灼け焦げたような裂痕があり、基帝の光環と交錯していた。
「かつて……魔王と契約を結んだ。」
村長は黙り込んだ。 その瞳は深く沈んでいた。
「お前の中には、二つの力がある。」
雪誠は頷いた。
「それは力であり——代償でもある。」
—
村長はゆっくりと椅子に戻り、何かを思案していた。
「基帝の刻印は、空の器には宿らない。 祂が選んだのは——まだ火を持つ者だ。」
彼の瞳は、もはや尋問のものではなかった。 それは、古き理解の光だった。
「お前は我々の敵ではない。 だが——答えでもない。」
雪誠は低く言った。
「俺は、彼女を救いたいだけだ。」
村長は頷いた。
「ならば、必要なのは力だけではない。 ——選択だ。」




