第29話:殿、国王視察に味噌汁と団子を!
布武宿が“学園国家”と呼ばれるようになって数か月。
「子供も大人も読み書きできる村がある」
「算術の計算が一瞬でできる村がある」
「しかもおやつ付きの学校だ」
その噂は遠くまで広まり、ついに――
「国王陛下が視察に参られる!」
父上は蒼白になった。
「布武丸……お前の遊び半分の改革が、とうとう国王の耳にまで……」
いやいや、“遊び”じゃなくて天下布武の戦略ですから!
―――
迎えの準備は大騒ぎだった。
「道を掃け!」「校舎を磨け!」
「殿!国王様にお出しするのは何にしましょう!」
俺は即答した。
「……みそしる!だんご!」
村人「またそれかーーー!!!」
―――
視察当日。
国王をはじめ、きらびやかな衣を着た大領主たちが列を成して到着した。
彼らは教室を巡り、子供や大人が黒板に文字や数字を書いているのを見て驚愕する。
「おお……百人が百人、字が書けるとは……」
「算術もできるのか!? 我が城の役人より早いぞ!」
そして迎えの席。
運ばれたのは――湯気立つ味噌汁と、甘味噌団子。
―――
国王は怪訝そうに椀を手に取る。
「ほう……これが妙汁……いや、味噌汁というものか」
ひと口啜った瞬間。
「……ッ!? う、旨い……! 体に染み渡る……」
団子をかじれば――
「甘い!香ばしい!……これが学びの糧か!」
隣の大領主たちも次々に平らげ、会場はざわめきに包まれた。
―――
国王は満足げに椀を置いた。
「布武丸……そなたの国は不思議な国だ。
戦もせず、民を学ばせ、腹を満たす。
この道を広めよ。そなたに任せる」
父上「は、ははぁ……!」
重臣「殿!これは大出世ですぞ!」
俺は黒板に大きく書き殴った。
『味噌汁と団子で天下布武』
そして堂々と宣言する。
「みそしる!だんご!がっこう!てんかふぶ!」
村人&大領主&国王「「「おおおおぉぉぉ!!!」」」
布武丸、9歳。
国王視察を味噌汁と団子で乗り切り、国家レベルに名を轟かせた夏の出来事である。




