世忌花娘・迎合の花婿
「わらわがそなたを、恋する女の元へ送ってやろうぞ。」
突如として声がした。
くぐもった、ドスの利いた低い女の声。
その女の声が世界中に木霊して、
空は真っ白に、
大地は黒茶色に染まった。
「そなたの魂は、大変清く美しい。
それは、世を飲み干さんとする『迎合』じゃ。
この世の穢れも美しさも、
その身に全て引き受けんとするその様、実に美しい。
まるで、金魚玉のようじゃ。
金魚や藻の出す穢れをすべてを受けとめ、
その器は今にもひびわれそうだというのに、
その硝子の曇りなき故、だれもそなたの傷に気づかん。
そしてひびの大きさ故に、『拒絶』をも飲み干そうとしておる。
実に痛ましいことじゃ。
ふふ、安心なされよ。
そなたの罪は赦された。
そなたの恋は彼岸にて、祝福されよう。
美しき魂が混ざりあい一つになる、魂の祝言…。
わらわも楽しみにしておるぞ。
ほれ、祝儀じゃ。うけとるがよい。」
赤い空から、
美しい七色の小刀が降ってきた。
自刃のための虹色の刀は、
見れば見るほど美しい。
そして、
驚くほど軽く、
滑らかで、
触っているという実感すら存在しない。
「わらわが彼岸にて、魂を削ってつくった刀じゃ。
せめて、美しきものが、これ以上の苦しみをあじあわぬよう…。
その美しいかんばせを、苦しみに歪ませることのなきよう…
そう思って、つくったものじゃ。
さあ、そなたの首にあてて、
引くが良い。
さすれば楽に死ねる、彼岸へゆける。
望むところへと、ゆける。
ほしいものは、与えられる。」
のぞむところへとゆける!
ほしいものはあたえられる!
みすみとははのところへ、ゆきたい!
みすみとあいしあいたい!
優一は刀を手に取って、
首筋にズシリとあてて、強く引いた。
しっかりと首にあて、
一思いに引くと、
大輪の彼岸花のような血飛沫が、
白い空と黒い大地を背景に、咲き誇った。
何も痛くない、
何も苦しくない。
ただただ首から、
美しい大輪の彼岸花が、
あたりにその血を撒き散らしながら、咲いている。
彼岸花はだんだん大輪へとそだってゆき、
真っ白な空の向こうへ、
黒茶色の大地の彼方へ届くほどに咲き誇った、
そのとき。
優一は息絶え、
黒茶色の大地へと溶けていった。




