第20話 砂の街
【鑑定結果:砂の街デザートタウン】
俺たちが辿り着いた街は、そういう名前らしい……
確かに、辺り一面砂だらけで、草木は所々になんとか生えているといった感じだった。
俺たちはユーベラスを早く病院に連れて行かなければならない。
街を歩いている人に病院の場所を聞き出すことができたので、ユーベラスの容体を気にしながら病院へ向かった。
病院は歩いてすぐのところにあった。
建物はレンガで造られており、周囲の建物も全てレンガ造りだった。
「すみませーん。怪我人がいるので見てほしいのですが……」
中から看護師らしき女性と先生らしきお爺さんが出迎えてくれた。
非常にまずい状態ということを伺い、すぐに病室へ運ばれた。
「ユーベラス、大丈夫アルかね?」
ナッツが心配そうに言う。
みんなも重い表情をしながら、待合室で待っている。
ユーベラス……
あの時テレポートしていなければ、今頃どうなっていたことか。
シルベスタインめ……
ふと思った――あの後どうなったんだ?
俺たちはテレポートで戦闘を離脱したが、オルカンは亡くなったのか?街は無事だったのか?シルベスタインは何処へ行った?
色々疑問が湧いてくる。
「何考えてるの?」
ミリアが俺の顔を覗き込んできた。
「いや……」
ミリアが膨れっ面をしている。
「まーたそうやって一人で抱え込む! 私たちがいるんだから、一人で抱え込んでないで吐き出しちゃいなさいよ」
ごもっともだ。
俺は何でみんなに打ち明けないのか……
「実はさ……」
俺が打ち明けようとしたタイミングで、先生が部屋から出てきた。
「残念じゃが、当院の薬ではあそこまでの傷を治す薬草は常備されておらんのじゃ……」
みんな一斉に立ち上がる。
「そんな……どうしたら良いアルか?」
ナッツが誰よりも早く問いかけた。
「ここから東にある港から、船で更に東へ進んだ大陸に凍傷に効く薬草があるのじゃが、その薬草は滅多に手に入らないのじゃ」
俺たちは目を合わせて互いに確認し合った。
「行くしかないアルよ」
ナッツが俺たちを鼓舞する。
「そうだな。薬草を手に入れて、ユーベラスの傷を治そう!」
俺も同じ気持ちだった。
みんなも頷いてくれている。
「海には魔物が出現する時があるから、くれぐれも気を付けてな」
俺たちはお礼を言って、病院を後にする。
外に出ると日差しが眩しかった。
俺は歩き出そうとしたその瞬間、目の前に文字が現れた。
【観測者:接続中】
【ユーベラスの死亡フラグ:危険度中】
【死亡確率:40%】
【分岐:薬草か毒草か採取した方で変化】
【薬草:ユーベラス生存】
【毒草:ユーベラス死去】
「死亡フラグが立ちやがった。急ぐぞ」
みんなは驚いていたが、ユーベラスの容体を考えると納得がいったようだった。
だが、ここまで見られるようになったのには正直驚いた。
鑑定レベルの影響か?
それにしても、薬草か毒草ってなんだ?
間違えて毒草を持ち帰ってくるなんてことがあるのか?
相変わらず″答え″は書いてないんだな。
「また一人の世界に入ってる」
ミリアが覗いてくる。
「あっ。いや、そういうわけじゃないんだ」
「ふーん」
ミリアは勘繰っている。
「さっき考えてた事と、今考えてる事を教えてちょうだい」
ミリアは鋭く質問してきた。
俺は仕方なくテレポート後の戦場の様子やさっき見えた文字のことを伝えた。
「なるほどね……確かにテレポート後の状況は特に情報も無いからわからないわね。オルカン、生きていると良いけど……街も心配ね。アイツは絶対許せないわね。薬草以外に毒草なんてものがあるのね。間違わないように気を付けなくちゃ」
ミリアは俺の話を一瞬で理解してくれたようだ。
考えていても答えが出ない。
今は前に進むことだけ考えることにした。
◇
砂漠は広大だった。
街があんなに小さく見えるが、港もなかなか見えてこない。
それにしても喉が渇く……
俺たちは街で冒険の支度を手早く済ませてから来た。
水分も食料も十分にある状況だ。
重い荷物はフロックが余裕の表情で持ってくれているから安心だ。
フロックは岩、ファルは元々火の玉だから、二人とも暑さは問題ないらしい。
ミリアとナッツがへばってきている。
「あいやー! あたしは様々な訓練をしてきたアルよ。だけど砂漠は初めてアル。こんなに暑くてとろけそうなんて聞いてないアル」
確かにナッツは鍛錬の賜物というくらい強いが、砂漠の暑さには勝てないようだ。
「わたしも、もうダメかも……レイ、わたしが先に死んだら、ちゃんと供養してよね」
ミリアは縁起でも無いことを言い出す。
いや、俺も正直バテてきた。
どこかに休めるところは無いだろうか……
――
――
――
ふと目を凝らすと、それ程遠くない場所に木立に囲まれた湖みたいなものが見えた。
「あれは何だ?」
誰にも分からなかった。
俺たちはその場所を目指して進んでみる。
近くに来ると驚いた。
こんな砂漠の中に、木と水があるなんて。
「行ってみよう!」
「さんせーい」《「さんせいアル」》
ミリアとナッツは喜んでその水を目指して駆け出した。
ファルとフロックはそれぞれのペースで進むから良いらしい。
俺は二人の後を追うことにした。
――
――
――
はぁはぁ……
走ってきてみたが、ここは楽園か?
砂漠の乾いた空気と違い、木々のおかげで空気は澄んでいるし、水もある。
「最高だ!」
思わず心の声が漏れてしまった。
「いや、ホントに最高アルよ」
「レイも水浴びしようよ」
二人はすっかり目的を忘れてはしゃぎだした。
まぁ、せっかくだし俺も軽く水浴びしていこう。
割と広い湖だったが、意外と砂地に近いところは浅かった。
俺たち三人が水浴びしている間、ファルとフロックは護衛してくれている。
「涼しいアルね。でもちょっとヌルヌルしてるアル」
「言われてみれば確かにそうね。久しぶりに水浴びしたから、あんまり感じなかったけど」
ナッツの言う通りだった。
確かにヌルヌルしてると言われればそうかもしれない。
「ファル、フロック! 何か変わったことはないか?」
特に問題無いという回答だった。
今のところ盗賊や魔物といった敵が現れずに進めて安心している。
――
ゴゴゴゴゴゴ……
――
地震か?
急に身体が揺れ出した。
「なんか、揺れてないか?」
「確かに揺れてるかも」
ミリアも同意する。
他のみんなも同じ事を思っていたようだ。
「ファル! フロック! ちょっと様子を見てきてくれないか?」
「キュピピー! 我はパシリじゃないぞ。まぁ、仕方ない」
ファルとフロックは渋々といった表情で辺りを見に行ってくれた。
俺たち三人はとりあえず水浴びをやめて、砂地に戻った。
まだ地面は揺れていた……
――
――
――
「キュピピー!!」
なんだ?
ファルが悲鳴のような声を上げてこっちに向かってくる。
「ここは楽園なんかじゃないぞ。早く逃げるぞ」
いつものファルとは違う感じがした。
ここの地形は、水溜まりの周りが砂で覆われていて、その周りは木々で埋め尽くされていた。
その木々の辺りがだんだん浮き上がってきたのだ。
どういうことだ?
様子を見ていると、どんどん木々が盛り上がり始めた。
「これってまさか……」
いや、そんなはずはない。
普通に考えるなら、強い地震がきて、大地が捲れ上がったりすることはある。
だが、こいつはそういう感じではなかった。
どちらかと言うと、俺たちを食べようとしている動きに見える。
「ファル! フロック! 何かわかったことはないか?」
二人とも、大地が浮き始めことは理解していたが、それ以上の情報は無かった。
やはり、そうなのか?
次第に揺れは強くなり、大地が俺たちの身長よりも高く浮き始めた。
次の瞬間、辺りが暗闇に包まれた――
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