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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
異世界から来た少女

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8/25

3

「で?どうしてあの子はセピアにくっ付いて居るの?」


面白くない。と、言う顔で聖女がテーブルに肘を付いて、ダルそうに勇を指さした。


「しかも、私があの子と協力して邪神を倒すですって?」


ふんっと鼻を鳴らす。

王と似た金貨の目が、瞼にかかり鋭い視線を投げかける。


「えぇ、半年程前に発見された書物によると。です」

「そんなの、ただの御伽噺じゃないの?」


聖女はロホに視線をやる。

たかが本の内容に踊らされて、と悪態を吐く。


「いいえ、現に彼女は召喚されました」


ブランは聖女の言葉に、微かに不愉快を含んだ声になる。

ロホと聖女、そしてブランの間に火花が散る様な緊張感が漂った。

三人共、セピアより4歳年上で…成人していると言うのに大人げが無い。


それを、おでこに手を当てて呆れた様子でオールは見ていた。

アスールはこういう時、本来なら酒を飲みながら聖人の中で最年長である25歳の余裕を持って、ニヤ付いて見ていたのだろうが、今日は酒が無いからなのか、真面目な顔をして三人を見ていた。


「ともかく、そう言う訳じゃ。…勇が召喚され邪神の復活が現実味を帯びた。早急に対処を考えねばならん」


王の言葉に、部屋全体がぴり付く。


「…今後の事は、宰相や他の者達とも話し合わねばならん」


王は勇を見据えた。


「彼女には住居を用意し、生活の保障をせねばな…」


そう言うと、当分の間の身の回りの世話はメイドにさせるとして、それ以外の面倒を誰が見るか。の話になる。

…面倒を見る事になる者は、全員に丸分かりだった。


「セピア嬢よ…」


心苦しさを少し感じる声で王は、言葉を続けた。


「すまないが…彼女を頼めないだろうか?」


王に言われて「嫌です」とは言えない立場を、分かっていて言う…。と、セピアは考えるが、口はもう「承知いたしました」と言葉を発していた。


「頼む」


王はそうセピアに言うと、「緊急時にはもう一度集まってもらうが」と前置きし、今日の会議は終わりだと告げた。


王が退出するのを、オールと聖女、四人の聖人はもちろんセピアも勇も立ち上がり、見送る。

王の背中の後ろで扉が閉まると、ようやく皆気を落ち着かせるように深いため息を吐きながら、再度席に座った。


ロホとマホンはポットから、温くなったお茶をカップに注ぎ、一口飲んだ。

アスールはもう良いだろう。と、懐から酒を出そうとしてマホンの出した木に阻止されている。


オールは無言でセピアを見ていた。

セピアはその視線に気が付き、勇の掴む手を離させた方が良いのか悩んだ。


(あぁ、また…誤解され…)


オールから目を反らした瞬間。

人影がサッと被り、セピアの腕から勇の腕を引き離していた。


「もう、良いでしょう?離れて」


聖女が勇の手を掴んでいる。


「聖女様!?乱暴は…」


セピアが聖女を止めると、聖女はパッと勇の手を離し、彼女に捕まれていたセピアの腕を今度は自分が掴んだ。


「セピア、ケガは無い?」

「大丈夫です」


聖女に落ち着く様に促すと「良かった」と聖女は微笑んだ。


「ともかく、一度落ち着こう」


オールがメイドを呼ぶ。


「彼女に部屋を案内してくれ」


オールの言葉にメイドが深く頭を下げ、セピア達の前に立つ。


「ご案内いたします」


「どうぞ」と、丁寧に退出を促され、セピアは退出の際部屋に残るオールと聖人達に礼をし、勇を部屋に案内するメイドに付いて行った。


聖女も二人の後を追おうとした。

しかし、聖女には聖女の仕事が有る。

それをセピアに指摘されると、物憂げな顔で二人を見送り、自身は教会へ足を向けた。

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