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「私から…ご説明をさせて頂いても?」
ブランが手を少し上げ、王に伺う。
「そうじゃな」と、王が答えるとブランはその場で立ち上がった。
「本当でしたら今日の会議でもお話しするはずでした。が…」
ブランは経緯を話し始めた。
まずは、勇の出現は以前からブランが試していた事だと言う。
「邪神の予言をご存じですか?」
聖女の肩がピクリと動いた。
「邪神?」
マホンが知らないと答えた。
ロホもセピアも色々な本を読むが、知らないと答えた。
「まあ。それが普通です」とブランが答える。
「邪神はこのプリシカ王国が建国される前に居た神で、建国の切っ掛けにもなります」
ブランが風で各一人一枚、目の前に紙をふわりと置く。
セピアと勇は二人で一枚を覗き込んだ。
そこには古い絵と、プリシカ王国語で文が書かれている。
勇は読めなかった。
「そこには邪神について書かれています」
読めない勇の為に、ブランがあらましを口頭で説明した。
多くの国が無く、人々の数も少なかった頃。
創造神と邪神が争い地を割り、水を氾濫させ、世界が終りかけた。
戦いの末、創造神は邪心を封印したが自身も負傷により、人の輪廻の輪に落ちたと言う。
「創造神の生まれ変わり…化身と言われるのがこちらの『聖女様』です」
勇に聖女を分かる様に示す。
ちらっと勇を見た聖女の目が、鋭く「セピアから離れろ」と言っていた。
その眼光に、勇が畏縮する。
「そして…最近分かった事なのですが、どうもその邪神が目覚める兆しがある…と」
ロホが手を挙げると、ブランが発言を促す。
「その邪神がこの子?」
ロホとマホンが勇に視線をやると、彼女は殊更ぎゅっとセピアの腕を握った。
それを見た聖女の手がワナワナと動く。
美しい銀髪も、少し広がりを見せ、全身から勇への苛立ちが出ていた。
「いいえ。彼女は邪神ではありません。聖女と協力して邪神を倒す者です」
「聖女と共に?邪神を?」
ロホがプリシカ王国最強の自分を差し置いて、聖女の名が出た事に心外だと言う顔をする。
しかも、よく分からない、見るからに弱そうな普通の少女が、世界を破壊しかけた邪神を倒すなどと、無理な話だとも思った。
「彼女は『勇者』です」
そんなロホを説き伏せる様に、確固たる声で断言した。
「立花勇の力が無いと、邪神は倒すどころか封印すら出来ないだろう」と、ブランは言う。
その為に、召喚魔法をかけて来たのだと。
「しかし…今日、成功するとは思いませんでした」
ブランは右手で、さらっと灰色の髪を後ろに流した。
前に垂れ下がっていた髪が、腰辺りで揺れる。
「しかも、出現場所がこことは…」
少し首を傾げたブランの髪がまた、前に移動してくる。
大事な話をしているのは分かっていても、セピアは「髪を括れば良いのに」と思ってしまう。
「何度か…試していたのか?」
アスールがブランへ問う。
だらけた体をいつもならしているアスールだが、流石に王の前では酒も飲まず、酔いも自身の水魔法で除去しているらしく、真面目にしていた。
「はい。しかし、何度も失敗していました。…恐らく…憶測ですが、邪神の目覚めが近いので成功したのでは無いかと…場所はともかくですが…」
ブランはそう言うと、席に着いた。
眠そうにしているいつものブランとは、違う一面を見た気にセピアはなっていたが、ずっと勇に捕まれている腕が、何故かじんわりと汗ばむ気持ちになって来ていた。
(で、なんで…この子は私に…?)
横に居る勇を見る。
セピアと一緒くらいの歳に見えた。
(この子が…オール様の本当のお相手…って事になるのかしら…)
セピアはまだ、婚約破棄と本明が突如現れる小説の頭が離れない。
勇がセピアと変わらない歳ならば、オールとも変わらないと言う事だ。
セピアは16歳。オールと同い年。
受けた教育はオールの方が先に行っているが、それに追いつこうといつも必死だ。
(この子も…教育を受けたら…資格は有るのかしら)
もしも、オールの相手が『勇者』なら、国民や貴族から大いに祝福を受けるだろう。
『魔法の使えない』侯爵令嬢よりは…。
セピアは、皆に気が付かれない様にため息を吐いた。
その瞬間、勇と目が合った。




