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その場に居る皆が唖然とする中、テーブルの上に居る事に気が付いた彼女は、慌てて降りようとする。
それにいち早く手を差し伸べたのは、珍しくブランだった。
「大丈夫ですか?」
皆より動揺が薄いブランが、彼女に声をかける。
灰色の髪が静かに揺れ、肩から滑り落ちる。
長い指先が彼女の手に触れ、目が合うと、一瞬少女は硬直した気がした。
おずおずと彼女は頷きながら、床に降り立ち服を正す。
見た事がない形状の服…その形にセピアは驚いた。
(あ…足が見えている!)
それに気が付いた男性陣が、一斉に目を背けたが、ブランだけが身に着けていた上着を脱ぎ「失礼」と言いながら彼女の腰に巻いた。
その行動に少女は困惑の色を浮かべていたが、何となく流れに任そうと言う意思が見て取れた。
派手な音と閃光にしては、テーブルの上に在ったであろう紙類が舞い、ティーカップ達が倒れているくらいで、部屋に破損は無かった。
その場に居た者達にも大した被害はない。
恐らく、風の聖人ブランが風魔法で周りを防御し、聖女が皆の目を閃光から守ったのだろう。
呼ばれたメイド達が光の速さで、テーブルを整え新しいお茶をセットする。
そして、兵士達と共に去ると、部屋には最初に居た王と王息。
四人の聖人と聖女。
そして、現れた少女と…去るタイミングを逃したセピアだけになった。
「あ…」
この場に自分は『必要が無い』と、セピアが退出しようとした時だった。
少女が声を出した。
「あ!待って!行かないで!」
セピアの元へ駆け寄り、腕を掴むと懇願する様にぎゅっと身を縮めた。
皆が目を見開く。
いきなりセピアへ突進した少女へ、オールの横に居るロホが火魔法を、その隣のマホンが木魔法を発動する体勢になり、オールの前に座る聖女が何かをしかけていた。
それに反応してか、アスールが水魔法をロホの周りに張り巡らせ、ブランはセピアと少女の周りを風で取り巻いた。
「落ち着け」
渋く威厳のある声が部屋に響く。
「害はなさそうじゃ」
声の主はグリ・ソヴァール。
この国の王でありオールの父親だ。
王の声に皆、魔法を消し、背筋を伸ばした。
少女だけが、セピアにしがみ付き少し震えている。
顔も青ざめてはいたが、話し出した王の方へ顔を向ける余裕はあるらしかった。
「少女よ、名は何と言う」
ブランに続いて、王もまた皆に比べて落ち着いていた。
王たる者の態度で、彼女へ向く。
セピアの横で震えながら、テーブルの上に現れた少女は『立花勇』と名乗った。
「立花…勇。か」
何やら王は、思い当たる節があるかの様に振舞う。
その王に、ブランが姿勢を向き直した。
「申し訳ございません、ソヴァール陛下。少々軸がズレた様です」
「…その様じゃな」
二人は勇の出現に驚いたものの、存在自体には驚いて居ない様だった。
「どういう事ですか?」
少し顔を王に向け、オールが聞く。
「…その者の事をご存じなのですか?」
息子の問いに答える前に、王は皆に椅子に座る事を促し、セピアも少女と共に同席する様告げられた。
少女がその場から動かない為、皆から離れた扉の側に椅子が用意される。
隣り合った椅子で、腕が組まれ…オールと聖女からの視線が、セピアは痛く感じた。
「まず…何から説明しようかの」
王はどっしりとした体格を椅子に預け、顎に手をやると少々長めの髭を親指で撫でた。
髪と同じく金色の髭は、柔らかそうに親指に押しやられるが、すぐに元の位置に戻る。
金貨の様な目が細くなり、思案している様子が窺えた。




