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ただ、淡々と店に並ぶ商品を補充していく様に、黒服達は消えた胎児達の空っぽになったガラス管へ、設置していく。
消えれば消えた分だけ、どこからかそれを持って来ては、中へ入れ装置を起動させた。
「どうしてこんな事が出来るの…」
セピアの問いに、オンブル伯爵は答えずにガラス管の間をスタスタと歩いていく。
「可哀想だとか…悪いとか…考え無いのですか?」
死者達の細胞で、魔法の基を吸い取る為だけに、死に歩むだけの赤子を作り出す。
虚ろな眼差しの子供達。
「こんな事をして…何になるの…」
オンブル伯爵の後姿に、尚も問う。
追いかける足は、いつの間にか速くなっていた。
それでも、彼との距離は離れている。
ガチャ。
次の扉が開いた。
オンブル伯爵はセピアが追いつくのを待って居たが、まだ答える気は無さそうだった。
「答えて!」
無視をされている訳では無いが、無言で微かな笑みを浮かべるだけのオンブル伯爵に、セピアは苛立ちを隠せなくなっていた。
「ねぇ!」
シュパンッと音が鳴った。
彼の頬に一筋の傷が出来、血が流れた。
「この部屋は、先程とは違ってね。…貴重な物が置かれている」
オンブル伯爵は胸ポケットからハンカチを出すと、それを拭った。
「私に攻撃をするのは良いだろう…だが、ここの物は壊すな。…と言っても少しばかり違う場所にも置いては有るから、致命的な影響は無いが…勿体ないからな」
「見たまえ」とオンブル伯爵が示す室内は、胎児の並ぶ部屋とは違い、眩しい程の明るさに満ちていた。
一瞬、セピアは眩しさに目が眩んだ。
「ここは…なに…」
目を何度か閉じたり開けたりを繰り返し、ようやく慣れた時、眩しいのは照明の所為ではない事に気が付いた。
左右に並ぶガラスケースは、胎児達が入っていたガラス管と同様に液体で満たされ、管が繋がっている。
その中には成人の男性が眠っていた。
全てが同じ男性だった。
「こ…この…か…色…」
液体の流れに沿って揺れる髪は、プリシカ王国の王族の証である、金色だった。
驚きのあまり立ち尽くすセピアに、オンブル伯爵は通常の魔法使いであれば体は魔法の基を吸う為に使うが、髪は何に…目は何にと説明をしている。
「髪や目は死人の物で量は十分だ。だから身体だけを量産し抽出しているのだが、コイツは違う」
オンブル伯爵は、一つのガラスケースをコツンと叩いた。
「コイツは各属性を増幅させる事も出来るし、中和剤にもなるのだ」
水と火の様な、相反する属性の調合に必要不可欠なのだと語る。
「それだけでは無い」
成人男性の並ぶガラスケースの通路の一番奥、部屋の一番奥のガラスを指さす。
その中には丸い物が浮いていた。
「どう言う訳か、あれと混ぜると何もかも治る回復薬になる」
セピアは夢遊病者の様な足取りで、彼が指を差すガラスに近付いた。
「どうして…どうしてこの方が…ここに…」
「身体も欲しかったのだが…持って来られたのはそれだけだった」
ガラスの中に頭部が浮かぶ。
震える指先で、セピアはそのガラス正面を撫でた。
「そいつはどうしても量産できなくてな。してもすぐに崩れてしまう。だが…原型を留める事に成功した」
「…」
「これこそ!我が国の!偉大なる成果だ!素晴らしいだろう?」
オンブル伯爵は、醜悪な歪んだ笑みを浮かべ、誇らしげに言った。
「この…この方を…誰だか…知って居るの?」
「当り前だ。だからこそ持ってきたのだから」
オンブル伯爵は腕を組み、軽くふんぞり返った。
「聖女シャイン…シェリラ・ソワレの母親だ」
アスールの持っていたロケットの中の写真と同じ顔が、セピアの目の前に漂っていた。




