4
部屋の扉が自動で開くと、そこには1階よりも広めの部屋が並んでいた。
どの部屋もドアが無い。
そう考えた矢先「死人は脱走なんぞしないからな」と、オンブル伯爵はセピアの心を読んだかのように答えた。
部屋の中で歩く人間は一部屋につき五人程度だろうか、皆黒で統一された服を着ている。
手には銀色の板を持ち、その上には器具の様な物が乗っていた。
一番手前の部屋には、黒い袋に入れられた何かが積まれている。
それを一つ一つ、二人掛りで台の上に乗せている。
3組のペアが浮遊魔法を使えないのか、重そうに運んでは車輪の付いた台と積まれた黒い袋の塊との間を、行き来していた。
車輪の付いた台は、一定の量が積まれると奥の部屋に運ばれていく。
そこからは、布が裂かれる音と機械が硬い何かを切る音が響いていた。
「あそこは死人を処理している」
オンブル伯爵が奥の部屋を指さした。
袋から出し、色で分けると髪をそぎ落とす。
そして、機械の台に乗せ切断する。
「プリシカ王国の死人は色ごとに研究所へ送る」
纏められた髪の毛と、肉片と化した身体が台に並ぶ。
その横に切断時に流れた血が、袋に入れられ添えられた。
全てにカラーが書かれたラベルが貼られていた。
「それ以外のウルネス、ファシス、アグリナ、アロガンの死人は違う場所へ送る」
オンブル伯爵が上げた国は、全て、魔法が使えない者の国だ。
その中のアロガンが今、プリシカ王国と戦争をしている国だった。
魔法が使えないだけでなく、各々見た目も違う為、どこの出身かハッキリとわかる。
ウルネスはあの店主や奴隷商達と同じく、大人も通常の人間よりも背が低い。
その上、顔も醜悪な歪みを生まれながらに持っていた。
ファシスはウルネスとは逆に筋肉の発達した、大きな体を持っている。
しかし、知恵は無いのがウルネスと同じで、戦略も何も立てられる者が居なかった。
なので、大抵は他国の戦力として前線に駆り出されている。
それが、今ここにある死人の多くを占めていた。
アグリナは一見ノワールやプリシカ王国の人間と見紛うが、獣の耳が生えている。
獣人と言われる種族で、男は戦闘要員として俊敏で力もあり、兵士としての需要が有った。
そして、どこの国も女は奴隷であり、見目の美醜関係なく愛玩具だ。
アロガンはプリシカ王国やノワールと同格の知識も、身体にも恵まれていた。
使う事に長けている彼らは、三国を武器や人員として用立てる。
ウルネスからは武器を、ファシスとアグリナからは兵士を、金や女と交換で、それらを戦場へ送る。
指揮官として数名は戦場に立つだろうが、駆り出される他国の者の比では無かった。
人も道具も同じく『使うモノ』
それが、ノワールの近隣国であり、プリシカ王国の敵だった。
プリシカ王国出身者以外は、乱雑に纏められ切断された。
金目の物や服をノワールへ来る前にあらかじめ回収されている彼らは、何も身に着けていない為、作業員は何も確認せずに次々に放り込んでいく。
アグリナの獣の耳だけは切り取って。
機械に大まかな関節で切り落とされた四肢は、また場所を変えて肉と骨に分けられ、骨は粉に、肉はまた違う用途へと使われるのだ。
ある者は家畜の餌や糞尿と共に肥料に。
ある者は異食の貴族の食卓へ上がる。
それが祖国の為、生きる為、生かす為に戦った、戦死者達の行く末だった。




