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「あの…み…見ないで」
顔を赤らめ、ふるふると震えるセピアがアスールに懇願する。
「恥ずかしい?」
「えぇ…なんだか…」
「裸でも見られてるみたい?」
アスールの言葉に、セピアは無言で頷いた。
「見ようと思えば見えるよ」
ガバッとセピアはその身を引いた。
真っ直ぐなアスールの視線が、セピアの細い肩から鎖骨、胸に流れ引き締まった腰に流れ、太ももや足首へと下がっていく。
「止めて」
「…嘘だよ。…水の魔法は透視じゃない…見えるのは血流や魔力の流れだけだ」
「本当に?」
「あぁ。それに今は…食った魔法と元々の魔力が安定を探して、グルグル動いてるから…」
アスールの言葉にセピアはあからさまにホッとした。
その様子を見て、彼はふっと呆れた様な、何かを諦めた様な笑いを吐いた。
「誰の…為なのかねぇ…」
顔を赤くし、身を固めるのは誰の為なのか。と、アスールが呟いた。
「誰のって…王息の…いいえ、婚約者じゃなくったって貴族なら当たり前なんです」
身を固くしながらも、セピアは反論した。
アスールの眉毛が微かにピクンと動く。
「君は…ここの貴族じゃないんだ」
「それは…分かりました。でも、そう育てられたので…」
「身に沁み込んでいる…か」
アスールが何故か悲しそうな顔をした。
「これから移動するのはノワールだ…あそこは…プリシカ王国で育った君には刺激が強いだろうな」
ベッドの上で肘を付き、顎を置いた。
セピアを哀れむ様な、自身も不幸を迎えるような顔をしている。
「貴方には?」
「…地獄だよ…ここでの伯父上の折檻よりも…もっと酷い事が国中で起こっている」
「女性は…襲われて、男性は…実験体…?」
「…それは攫って来た魔法使いに対してだ。…まぁ国民に対しても、似た様な…モノかな…」
アスールは俯いた。
彼の後頭部を見ながら、セピアは話を続ける。
「王様は…居るの?」
「世襲制ではないけどね。強い者が王だ」
「それに貴方は成れないの?」
「…成れない」
「強いのに?」
「そう簡単じゃないんだよ…」
ぼやくアスールは、ベッドに突っ伏すとため息を吐いた。
拗ねた様な態勢だが、腕の隙間からセピアを見ている。
一応はまだ、質問に答えてくれる気は感じた。
「魔法使いを攫って…どんな結果が…?魔法使いは生まれるの?」
「ノワールに魔法使いは少数なのは知って居るな?」
セピアは頷く。
「少数にしか使えない魔法だが、ノワールの魔法使いは魔力量が多い」
(プリシカ王国は魔法属性が多く、ノワールは魔力量が多い。だから、かけ合わせれば…って事なのね…)
「大半は…他国の魔法属性を使える人間は生まれない。たまに…俺みたいに引き継いだ者が生まれる」
アスールは、水魔法特有の青い髪に青い目だ。
「大切にされないの?…ある意味…成功した人間なんだから」
「されないねぇ…」
「王様は自分より強いアスールが怖くないの?」
「…枷を…嵌めるからね」
「魔法で?」
「いや魔法じゃないけど…精神に。さ」
「それを解く事は?」
「難しいねぇ…」
セピアは眉間に皺を寄せ、考えを巡らせた。
「何だか…ブランさんが言っていた勇者の…能力みたい…何でかしら」
「そうだな…勇も自分の世界の日本とノワールが近いって言ってたな…」
セピアはこの際だから聞きたかった事を聞こうと、拳を微かに握りしめた。
「ねぇ。何故…勇さんを殺したの?殺す必要は無かったんじゃ…ないの?」
セピアは震えたくないのに、肩が震えた。
「…城下町からの帰りに、その話が出て…君と俺が同じ出身じゃないかって言われたんだ」
「貴方と私が?…」
(合っているけど…何故勇さんは…分かったのかしら…)
「あぁ。それで…バレる前に…と、邪神を守る為に殺せって…伯父上に言われてね」
「…今は教えてくれるのね」
(さっきは教えてくれなかったのに…)
そう考えた瞬間、唇を奪われた事を思い出し、セピアはぞわっとした。
「キスの…お礼にね」
分かって居るのか、アスールもセピアを揶揄う。
ムスッとした顔をセピアがした瞬間、ドアがノックされた。
開くと黒いローブを羽織り、フードまですっぽりと被った者が目の前に立っていた。
「オムカエニ上がりました」
声からして、若い男性だった。




