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「どう言う事…」
セピアは考えが、頭の整理が状況に追いついていない。
「私が貴方の水魔法を使う?食べたって…私が魔法を?」
「正しくは今の所『齧った』程度だがな…」
「私が…他の人の魔法を…」
「食う。セピア嬢が…って訳じゃなく、君の中の邪神が。だが」
(じゃ…邪神!?)
アスールの思わぬ言葉が、セピアの脳を駆け巡る。
当然本人にそんな自覚は無い。
自分の魔力すら昨日、取り戻したばかりだ。
「やっと、昨日封印が解けたのよ?」
「あぁ」
「その封印が邪神を…封印していたモノなの?」
「それは違う。邪神はずっと君の中に眠っていた」
「ずっと?」
「そう。体が成長するまで…それを、君の魔力の強さを畏怖した両親と師匠達が封印したからややこしい事に…」
アスールがセピアの身体から手を離し、ベッドへ倒れ込んだ。
その顔には少し疲れが見える。
「どうして、貴方は…それを知って居るの?」
そう問うセピアを、アスールはじっと見つめた。
「君が…生まれて、母親が連れて逃げた時、俺はまだガキだった」
二人の年齢は、およそ9歳しか離れていない。
ノワールはプリシカ王国の事を知らず、誰でも亡命出来る事を知らなかった。
セピアの母親の逃亡先がプリシカ王国だと分かり、子供ならば警戒されない。と、考えアスールを送ったのだと言う。
「大人でも簡単に入れるのにな…でも、俺を入れたのは正しかった」
普通の大人ならば住む所も仕事も、亡命者に割り当てられる範囲内では自由だ。
しかし、城には近付く事は出来ない。
王息や聖人になど、会う事も無く生涯を過ごすだろう。
「俺は子供で…魔力が強かった。だからアズ師匠に拾われて…弟子入り出来た」
いくら寛容なプリシカ国でも、大人で魔力が強い人間ならば警戒される。
弟子にもならず、他国への移住を打診された事だろうが、アスールは幼さ故、囲い込まれた。
色の所為で、ノワールの者とも思われずに。
「君を見つける為に入って…封印の時に見つけた時は驚いたが…」
写真で見た母親では無い上に、両親が揃っている事で、人違いかも知れないとアスールは考えた。
「人違いで攫って行ったら…とてもじゃないが、その子も俺も生きてはいけない」
慎重に母親の痕跡を追跡し、母親の死後ソレイユ侯爵が保護した事を知り、アスールはセピアが探している少女だと確信を得た。
「でも、侯爵令嬢を攫うのは…あの頃の俺では無理だった。それに邪神の復活も遠い。伯父にそれを伝えて君の封印が解ける年齢まで待って居たんだ」
「…私の封印は聖女様が解かなくても解けていた…」
「そうだ。君の体をスキャンしたら、流れが速くなっていた」
アスールの『スキャン』という言葉に、セピアは体を隠そうと抱えた。
「隠しても分かるよ」と、笑うアスールはいつものアスールの様に軽い。
王城で見た冷たさが消えたように。
「やっぱりそれって…」
「勇…の影響だろうな」
「じゃあ、最近貴方の魔法を食べたって事?」
「…さぁ…ガキの頃に食われたか…普段会っている時か…食うタイミングは何度も有っただろう」
「貴方の…魔法だけ?なのかしら…」
「他も食ってると思うぞ」
セピアを見るアスールの目が、真剣さを持った。
(中…見られてる?)
セピアの顔が熱くなった。
(恥ずかしい…)
セピアはぎゅっと両肩を握りしめた。
王息の婚約者候補筆頭になり、決まった今でも『品定め』してくる視線を感じている。
それは大抵、外見や所作の『落ち度』を見つける為の視線だ。
しかし、アスールの視線はそれとは違い中を…体の隅々まで見渡すような視線だった。
大人に近付いた時から感じる様になった、胸や腰をじっとみる人達に近い視線にも感じ、セピアは居心地が悪い。




