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翌朝、目が覚めたセピアの身体は、軽々しくスッキリとしていた。
「凄い。何だか軽いわ…」
「そりゃそうよ…あなた。聖女様のマッサージを受けながら寝たんですもの」
ベッドの上で伸びをするセピアの側に、呆れ顔のロホがソファで寝転んでいた。
「いつの間に居たの?気付かなかったわ」
「昨日、あなたが寝落ちした後よ。聖女様と交代で」
「聖女様は?」
「王息に話があるって呼ばれてたわ…あぁ、食堂でよ」
セピアが不安がると思い、ロホが交代する際、確認するまでもなく、二人から事前に伝えられた場所を先回りして告げる。
関係上は従姉弟だが、誰もが知って居る訳では無い。
知らないロホからすれば、ただの男女だ。
しかも元婚約者候補。
部屋だの庭園だので、二人きりになるのは不味い。
王息も聖女もそれは分かっているので、敢えてロホに伝えておいた。
いつものセピアであれば不安がる。
更に、封印が解かれ不安定な今、些細な事がどう影響するかも分からない。
「そっかぁ…」
ベッドから立ち上がり、窓のカーテンを開く。
三人の懸念など、今のセピアにとって杞憂に過ぎなかった。
今朝、セピアの顔は溌溂として明るく、自信に満ちている。
「本当に元気そうね」
「自分でも不思議なくらい軽いの」
「良かったわ。夜は死にそうな顔してたから…心配したのよ?」
「ありがと。私も驚いたけれど、皆も驚いたわよね」
朝日を受けた黒髪も、心なしかいつもより輝いている。
天使の輪が見える程だ。
「リオナの事だけど…」
ソファから身を起こし、ロホがかつての専属メイドの名を口にする。
セピアはカーテンを掴んだ手に力が入ったが、平静を装った。
「話しは…出来たの?」
「えぇ…聞いた話を、あなたにも話しておくわね」
「王様にも関係あるのよね?」
話した事でロホが咎められないか、セピアはそこを不安がった。
「大丈夫、王様にも許可を貰ったわ」
「そう」
「セピアが赤子の時にはもう、魔力が制御できないくらいに溢れてて、両親が抱く事すらできない状態だったんだって」
セピアは窓を背に、ロホに向き合った。
「マホンの師匠があなたの両親に相談されて対処しようとしたけど、あの人の魔法すら打ち破ったそうよ」
「私が?」
「えぇ。それで、一緒に居たアスールの師匠も協力して城まであなたを連れて来た」
聖人一人で制御出来ず、二人掛とは…相当の力だったのだろう。と、セピアは思う。
しかも、それは生後間もない赤子相手に。
セピアは以前、不意に聞こえた両親の声を思い出した。
(あれは封印する時の声だったのね…)
「…王様も驚いたそうよ」
「…話を聞いた私も驚くわ…」
「それで、王様は封印の許可を出して、師匠二人が魔法をかけたんだって。それでも完璧な封印は出来なくて、反比例する魔法しかかけれなかったんだって」
「増えれば減る…か」
「そうね」
(一定量で抑えられてたなら…、私も不安にならなかったかもなぁ…)
セピアは仕方ない事だと分かりながらも、ため息が出た。
「リオナもメイドになる時に聞いて、口外禁止を言われていたのね」
「…」
「一応、封印が解けそうな時の、連絡係としての役割もあったのでしょうね。彼女、アスールの兄妹弟子だったわ」
「そっかぁ…って事はアスールさんも…知ってた?」
「どうでしょうね。専属には話す必要性があっても、兄弟子に話すかどうか…」
(…知って居たなら、どう思っていたんだろう)
「人間不信になりそう…」
セピアは眉を顰め、視線を床に落とした。




