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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
優しく甘い夢の後

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42/67

2

翌朝、目が覚めたセピアの身体は、軽々しくスッキリとしていた。


「凄い。何だか軽いわ…」

「そりゃそうよ…あなた。聖女様のマッサージを受けながら寝たんですもの」


ベッドの上で伸びをするセピアの側に、呆れ顔のロホがソファで寝転んでいた。


「いつの間に居たの?気付かなかったわ」

「昨日、あなたが寝落ちした後よ。聖女様と交代で」

「聖女様は?」

「王息に話があるって呼ばれてたわ…あぁ、食堂でよ」


セピアが不安がると思い、ロホが交代する際、確認するまでもなく、二人から事前に伝えられた場所を先回りして告げる。


関係上は従姉弟だが、誰もが知って居る訳では無い。

知らないロホからすれば、ただの男女だ。

しかも元婚約者候補。

部屋だの庭園だので、二人きりになるのは不味い。


王息も聖女もそれは分かっているので、敢えてロホに伝えておいた。

いつものセピアであれば不安がる。

更に、封印が解かれ不安定な今、些細な事がどう影響するかも分からない。


「そっかぁ…」


ベッドから立ち上がり、窓のカーテンを開く。

三人の懸念など、今のセピアにとって杞憂に過ぎなかった。

今朝、セピアの顔は溌溂として明るく、自信に満ちている。


「本当に元気そうね」

「自分でも不思議なくらい軽いの」

「良かったわ。夜は死にそうな顔してたから…心配したのよ?」

「ありがと。私も驚いたけれど、皆も驚いたわよね」


朝日を受けた黒髪も、心なしかいつもより輝いている。

天使の輪が見える程だ。


「リオナの事だけど…」


ソファから身を起こし、ロホがかつての専属メイドの名を口にする。

セピアはカーテンを掴んだ手に力が入ったが、平静を装った。


「話しは…出来たの?」

「えぇ…聞いた話を、あなたにも話しておくわね」

「王様にも関係あるのよね?」


話した事でロホが咎められないか、セピアはそこを不安がった。


「大丈夫、王様にも許可を貰ったわ」

「そう」

「セピアが赤子の時にはもう、魔力が制御できないくらいに溢れてて、両親が抱く事すらできない状態だったんだって」


セピアは窓を背に、ロホに向き合った。


「マホンの師匠があなたの両親に相談されて対処しようとしたけど、あの人の魔法すら打ち破ったそうよ」

「私が?」

「えぇ。それで、一緒に居たアスールの師匠も協力して城まであなたを連れて来た」


聖人一人で制御出来ず、二人掛とは…相当の力だったのだろう。と、セピアは思う。

しかも、それは生後間もない赤子相手に。

セピアは以前、不意に聞こえた両親の声を思い出した。


(あれは封印する時の声だったのね…)


「…王様も驚いたそうよ」

「…話を聞いた私も驚くわ…」

「それで、王様は封印の許可を出して、師匠二人が魔法をかけたんだって。それでも完璧な封印は出来なくて、反比例する魔法しかかけれなかったんだって」

「増えれば減る…か」

「そうね」


(一定量で抑えられてたなら…、私も不安にならなかったかもなぁ…)


セピアは仕方ない事だと分かりながらも、ため息が出た。


「リオナもメイドになる時に聞いて、口外禁止を言われていたのね」

「…」

「一応、封印が解けそうな時の、連絡係としての役割もあったのでしょうね。彼女、アスールの兄妹弟子だったわ」

「そっかぁ…って事はアスールさんも…知ってた?」

「どうでしょうね。専属には話す必要性があっても、兄弟子に話すかどうか…」


(…知って居たなら、どう思っていたんだろう)


「人間不信になりそう…」


セピアは眉を顰め、視線を床に落とした。

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