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セピアの身体が聖女の吐息に反応し、ピクンと動く。
銀色の髪が流れ落ち触れる度、お腹がくすぐったいが、スッと力が抜けていく。
お風呂上がりの火照りやオイルの芳香、そして脱力感でフワフワとして気持ちが良い。
こくん。と、聖女の喉が鳴った。
うっとりとしたセピアは、妙に艶めかしく見える。
薄目を開けたセピアは、視線を聖女に向けた。
「眠い?」
瞳に掛かる乱れたセピアの前髪を、聖女は指先で避け微笑む。
「少し…」
黒い瞳が潤んで、部屋の灯りを反射させていた。
オイル瓶を手に取り、浮き上がる鎖骨や白く丸みのある胸へ少量落とすと、自分の治癒力をオイルに混ぜ、広げていく。
「痛くない?」
「はい…」
静かな夜に、二人の会話は必要なかった。
セピアは聖女に身を任せ、聖女はセピアの身体をマッサージし続ける。
華奢な肩を滑る細い指先には、せめて重荷が軽くなる様にと願いが込められていた。
柔らかい二の腕の感触は、次を進める手を引き留めてしまう。
補助魔法具の腕輪が光る手首は、少し痩せてしまったのか金属との間に隙間が出来ていた。
形の良い胸を、聖女は潰さない様に優しく撫で上げる。
ゆっくりと深く上下する腹部で、安心しきって居る事が分かる。
そして、細く引き締まったウエストが、セピアの努力を垣間見せた。
「足に触れるわよ?」
「…は…い…」
セピアはもう、半分寝に落ちている。
白い下着から見えている太ももは、力を少し加えた指の腹を押し返す。
ベビーピンクの膝が、愛おしい。
脹脛、踵、足の甲や裏まで、丹念に傷や疲労が無い様に、最新の注意を払う。
本来ならば、聖女が奉仕などしない。
だが、聖女にとってこの時間は至福の時だった。
「いきなり封印を解いて…ごめんなさいね」
「聖女様…?」
「慣れなくて…苦労はすると思うの。でもね…」
セピアが自分を責め、卑下するのを聖女は見ていられなかった。
「大丈夫です…でも…」
眠そうな目をこすりながら、セピアは先程、応接間の聖女と王の会話を聞いてしまった事を聖女に伝えた。
「探知魔法的な物かしら」
「そう…だと思います」
「制御を身につけないとね」
「申し訳ありません…盗み聞き…を」
「いいのよ。いつかは誰でも分るもの」
聖女はセピアの後頭部を、優しく撫でた。
「制御は貴女の為に、身に着けるのよ」
聞きたくない事、知りたくない事、攻撃的な事から自身を守る為に。と、聖女はセピアを諭す。
が、寝息を立て始めたセピアに、言葉は届いて居ない。
それでも、聖女は撫でる手を止めなかった。
セピアを抱きしめたい衝動が、無い訳では無かった。
しかし、信頼を裏切る事も出来ない。
もどかしい気持ちが溢れるが、この時間、自分だけがセピアを独占できる事が嬉しかった。
黒髪に触れキスをする。
閉じられた瞼と、黒く長いまつ毛にも触れたいが、そこは起こしてしまうからと我慢した。
聖女は、裸のままセピアを寝かせている事に気が付いた。
セピアの身体を、魔法でふわりと宙に浮かせるとメイドが持って来ていた服を、眠り無力なセピアに着せる。
そして、またベッドへゆっくり下ろす。
丁寧に、宝物を扱う様な繊細な魔法で、セピアの安眠を守る。
聖女の権限を使えば、劣情を彼女にぶつけ、正当化する事等容易い。
が、そんな事はしたくなかった。
ただ、それでも、いつまでもガラスケースに仕舞われた人形の様に飾るだけでは我慢できない。
それに塵一つ無い状態を保っていても、いつかはガラスケースが破られる。
しかも、自分ではない男の手で。
「悔しいわ…」
聖女の手が固く握られる。
「王位よりも何よりも…」
カリカリと、ドアから何かが引っ掻く音がした。
開けてみると、そこには白猫が鎮座している。
オールだ。
「話がしたい」
「奇遇ね。私もよ」
「…ロホをそっちにやった」
「交代…ね。良いわ。あの子なら信用できる」
「同意見で良かった。では、食堂で待つ」
白猫はそう言って踵を返し、廊下側のドアの横で丸まった。
「いつもいつも…可愛らしいメッセンジャーね…」




