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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
解かれた封印

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4

事のあらましを、各々がテーブルに着いた後、アスールにロホが説明する。

すると、アスールは軽く伸びをした。


「あなたねぇ…王の御前よ」


ロホが深いため息を吐くが、アスールは気にも留めない。


「封印が解かれて、なんか変わった?」


明るい調子でアスールに聞かれ、セピアは面食らってしまう。


(変わった…事…)


「力が…在るなって…」

「それくらい?」


セピアの中で、察しが良くなったのはよく分からないからと、言わなくてもいいと判断した。


「ええ…」

「さっき解かれたばっかりだから、セピアも慣れていないし混乱してるのよ」


「分かりなさいよ」と、ロホが付け加えた。


「ふーん。じゃあ、もう悩まなくて済むな」


アスールはニカッと笑う。

いつもより幾分陽気な彼は、少しお酒が入っているのが窺い知れた。


「あなたねぇ…」


呆れ顔のロホが「酔ってるわね?」と指摘する。


「否、酔ってない」

「嘘だわ。左頬も紅いわ。…どこかで酔って寝てたんでしょ」


左頬の紅さを指摘されると、アスールの肩がビクッとなる。


(違うのかしら)


セピアは何となく、アスールが酒とは違う事を指摘された様な風に動いた。と、感じた。

居心地の悪い様な、後ろめたい空気がアスールに纏わり付いた気がしたのだ。


「寝てないよ…これは…その…」

「なぁに?それとも誰かに叩かれた?」

「いや、まぁ…」


照れる様にアスールが笑い、ロホが「女の子ね」と呆れて言ったが、セピアはアスールの反応がいつもと違う様に見える。


(誰かに叩かれたのは合ってそう…だけど)


聖人を叩く人などいるのだろうか。と、セピアは疑問に思う。

ロホが言う「女の子」はアスールの場合、たまにあるが…。


アスールのぶち壊した空気に、王もオールも…聖女までが呆気に取られ、話をどこまで言えば良いのか、続きはどうするべきなのか悩んでいた。


「まぁ、俺の事は良くて…セピア嬢の話だ」


ロホを躱す為に、アスールは話を戻す。


「変わった事がないならさ、解決したって事でいいじゃん」


あっけらかんと言い放つアスールに、聖女は苛ついた。


「軽く言わないで」


聖女の視線に、怯む事無くアスールは向き合う。


「確かにセピア嬢からしたらアレだけど。今後どうするかが大切じゃないっすか?」

「そう…だな」


アスールの言葉にオールが同意すると、ロホとマホンも頷いた。


「セピア嬢には力に慣れて貰って、騎士や護衛レベルに抑えてもらえりゃ問題ないでしょ」


アスールの提案に王が頷く。

「それでもした事が」と、聖女は反論したが、当のセピアがどうしたいか問われ、アスールの案に賛成なのを聞くと黙った。


「…セピアが良いなら…良いわ。大丈夫なら…それで」


大人しくなった聖女は、セピアの心配だけを口にした。


「そうですね。それに…少し、落ち着きたいです…」


いきなりですから。と、疲れた表情をセピアは見せた。

それを見て、皆が夜も更けた事を思い出し、早々に部屋へ引き上げて行った。


「セピア、今日は一緒に居るわ」


聖女が先に寝室へセピアを押し込めながら言う。

何かあったら抑えられるのは聖女だけだと、王もそれを推した。

王に言われれば、セピアに反論は無く、退室直前にその話声が聞こえたオールも反対できなかった。


「先に支度をしときなさい」


聖女がリオナの代わりのメイドに、セピアのお風呂を頼む。

そして、応接間に王と二人残るとドアを閉めた。


メイドの準備を待つ間、ベッドに座っていると応接間の声が聞こえた。

どうやらメイドには聞こえていないが、自分には聞こえているらしかった。


「何を話しているのかしら…」


聞き耳を立てる事は不作法だったが、セピアは好奇心に駆られた。

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