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ミシミシっと、木の曲がる音が部屋に聞こえ始め、皆が木の魔法でも使っているのかとマホンを見た。
しかし、マホンは首を横に振り使っていないと主張する。
「じゃあ…この音は…どこから…まさか!」
急いで椅子から立ち上がった聖女が、セピアの居る寝室へ向かう。
それをオールと王も後ろから追いかけた。
「セピア!」
ドアをノックせず乱暴に開けると、セピアを包んでいたマホンの防御魔法が、見る見るうちに膨れ上がっていた。
それは繭の様な、ボールの様な形状で、ベッドを覆いつくしている。
「セピア!」
中のセピアに異常が起きたのだと、不安に駆られた聖女が魔法を解こうとした。
が、聖女の魔法は木を包む何かにはじき返された。
「セピア!…マホン!魔法を消して!」
聖女の声でマホンが先頭に来ると、解除魔法を放つ。
しかし、それもまた通用しなかった。
「どういう事!?効かないなんて!」
自分で出した防御魔法が、自分で解除できないマホンは、酷く動揺した。
「セピア嬢…」
「王!お下がりください!」
「否。オールよ。わしが誤解を解かねばなるまい。お前は下がって居なさい」
進みだした王にオールは止めに入ろうとしたが、逆に制され後ろへ下がる様に言われてしまった。
「しかし!父上!」
久しぶりの父と言う声に、王が薄く笑う。
「いつかは全て…話さねば…な」と消え入る声で呟いたのを、聖女だけが聞いた。
「セピア嬢、落ち着いて欲しい。…セピア嬢」
ミシミシと言いながら、いつはじけ飛ぶか分からない木の繭に、王は手を添えた。
「すまなんだ…言い訳を…聞いては貰えないだろうか」
額を木に付け、中に居るセピアへ王は呼びかけた。
中からの微かな音が、王の耳に入る。
セピアの声だ。
「セピア嬢…すまない。封印はお前を守る為だった」
「…」
「この国を守る為でもあった」
「…」
「強すぎる闇の力を持つお前は…聖人として扱うには幼過ぎた」
「…聖人…?」
「あぁ。お前はここに居る聖人達よりも、魔力が多い。そして攻撃魔法に特化している」
「…」
「その為、他国や悪意ある者に狙われる」
「…両親は知って居るのですか」
「あぁ。お前が赤子の時、両親から相談を受けた」
「…」
「出て来てくれ。話そう…」
王の言葉に応じる様に、木は膨張を止め、静かに黒い消し炭になって消えた。
「お前が悩んでいる事も、他の貴族に心無い事を言われている事も知って居た…」
なのに何もしなかった事を、王は悔やんでいるとセピアに告げた。
しかし、セピアの黒髪と黒い目は、ノワール出身であると同時に闇の魔法が使える証でもある。
この国にノワール出身者が適応できたのは、聖人に匹敵する程の者が居なかったからだと、王は続けた。
「お前の存在が世に出れば、ノワール国の出身である者達に影響が有ると考えた」
騎士や護衛に向く魔法。
それだけ聞けば心強いが、名しか知らぬ閉ざされた国が関われば、国民に疑心が生まれる事が安易に想像できた。
そう言いつつも、セピアには王の内心が透けて見える。
憂う気持ちが無い訳では無い。
だが、国を広げる為、戦争を続けるプリシカ国が、内乱を起こす訳にはいかない。と言う事が、本当の所言いたいのだと。
(これも、封印が解けたから…?)
口では国民の一部に対しての、出身地による差別や迫害を懸念し、もう一方では戦争での勝敗の懸念。
(どっちも両立する考えね…それに…)
あわよくば、セピアを利用しようとする意志も見て取れる。
セピアは目の前の王が、優しいだけの王ではない。と痛感した。
「あぅ…っと、コレって何の騒ぎ?」
重く緊張感が漂う部屋に、突如その空気を破る軽い声が響き渡った。
「…空気を読みなさい」
ロホが遅れてやって来たアスールに呆れながら言うと、アスールはアスールで「へ?」っと、間抜けな表情を返した。




