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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
解かれた封印

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37/67

2

強すぎる聖女の力を浴び、気を失っていたリオナは、足取りが覚束無い。

マホンが彼女を脇で支えている。

少しばかり見た目が、捕らえられた咎人の様だった。


「…わ…私は…お話しできません」


リオナは掠れた声で答えた。


「そう」

「待て!」


オールが止めるよりも先に、聖女は魔法を放っていた。

マホンが盾で防いでいなかったら、リオナは怪我をしていた。

が、間一髪の所で無事だった。


「待てと言っただろう」


オールが少し苛ついた様子で頭を掻いた。


「…貴方自分の婚約者の魔力が封印されていたのよ?」

「…」

「…知っていたの?」


汚物を見るような眼で、聖女はオールを見る。


(オール様…私の封印の事、知って居たの…?)


皆を眺めながら、セピアの胸が痛んだ。


「その所為で彼女が悩んでいたのを知っていて?」


聖女の髪が激しく揺らめいた。

聖女の扱う光魔法は、何も治癒能力だけではない。

体内に流れる細胞や血流に干渉する魔法である為、身体の内部から破壊する。

それを、怒りで魔力が抑えられず、今にもオールに向けて放つ勢いだった。


「待って、セピアに…セピアは魔力が封印されていたの?」


信じられないと言う様に、ロホが驚愕の声を上げる。


「貴女は知らなかったのね」

「知らないわ。…知って居たら…いえ、私に何かは出来ないでしょうね…」


ロホの顔が曇る。


「マホン、貴女は知って居たの?」

「…いいえ」


ロホの問いにマホンが首を横に振ったが、聖女はじろりとマホンを睨んだ。


「本当よ…」

「そう。でも、貴女の師匠である先代は知っていたでしょうね」

「そんな!」

「封印の魔法に木の印章が入っていたわ」


だから、枯らす事が出来た。と、聖女は言う。


「セピアの魔法が成長と共に強くなるに、封印の魔法も強く作用する…絡め捕る様になっていたわ」

「だから、最近弱まって来ていたの?」


ロホが聖女の言葉に、手を額に当て項垂れた。


「これが施されたのは…まだ赤子の頃ね。紅い痣も何か関係あるのかしら?」

「紅い痣?」


痣については初耳だと、オールが反応した。


「えぇ。お腹と胸の間…へその上ね。オールは見ていないでしょうね?」

「当り前だ!」


オールは顔を赤らめる。

婚約者とは言え、結婚までは清い関係で居なければならない。

二人はキスもした事が無かった。

オールの返答に、聖女はちょっとだけホッとした様子で、少し落ち着きを取り戻し始める。


「で、どうしてか聞かせてくれる?リオナが駄目なら貴方で良いわ」


くいっと顎でオールを差す。

オールは眉を寄せ、話していいモノかどうか、悩んでいた。

それに、オールは封印の事を知ってはいたが、そこまで詳しく知らされていない。


「わしが話そう」


いつの間にか、ドアの前に王が立っていた。

すぐさまオールとロホが立ち上がる。

しかし、聖女は王を見ても腕組みをし、視線を送るだけだった。


「貴方が、首謀者?」


聖女がふんっと不機嫌に鼻を鳴らす。

金貨色の目が見合う中、聖女の目が鋭さを増した。


「女の子を虐めるのが趣味なのかしら?」

「…そう怒るでない」


王はそう言うと、その場に居る兵士達に退室する様、命令した。


「人払いをしたっていう事は、ちゃんと説明してくれるんでしょうね」

「あぁ。お前の言う通り。首謀者と言われれば、わしが首謀者だ」


(王様が…私の魔力を…)


セピアは黒い空間の中で、愕然とした。

床さえも黒く、あるかないか分からない中で、膝を付き項垂れる。


(信頼していたのに…尊敬していたのに)


セピアの心に、虚無の風が吹いた。

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