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強すぎる聖女の力を浴び、気を失っていたリオナは、足取りが覚束無い。
マホンが彼女を脇で支えている。
少しばかり見た目が、捕らえられた咎人の様だった。
「…わ…私は…お話しできません」
リオナは掠れた声で答えた。
「そう」
「待て!」
オールが止めるよりも先に、聖女は魔法を放っていた。
マホンが盾で防いでいなかったら、リオナは怪我をしていた。
が、間一髪の所で無事だった。
「待てと言っただろう」
オールが少し苛ついた様子で頭を掻いた。
「…貴方自分の婚約者の魔力が封印されていたのよ?」
「…」
「…知っていたの?」
汚物を見るような眼で、聖女はオールを見る。
(オール様…私の封印の事、知って居たの…?)
皆を眺めながら、セピアの胸が痛んだ。
「その所為で彼女が悩んでいたのを知っていて?」
聖女の髪が激しく揺らめいた。
聖女の扱う光魔法は、何も治癒能力だけではない。
体内に流れる細胞や血流に干渉する魔法である為、身体の内部から破壊する。
それを、怒りで魔力が抑えられず、今にもオールに向けて放つ勢いだった。
「待って、セピアに…セピアは魔力が封印されていたの?」
信じられないと言う様に、ロホが驚愕の声を上げる。
「貴女は知らなかったのね」
「知らないわ。…知って居たら…いえ、私に何かは出来ないでしょうね…」
ロホの顔が曇る。
「マホン、貴女は知って居たの?」
「…いいえ」
ロホの問いにマホンが首を横に振ったが、聖女はじろりとマホンを睨んだ。
「本当よ…」
「そう。でも、貴女の師匠である先代は知っていたでしょうね」
「そんな!」
「封印の魔法に木の印章が入っていたわ」
だから、枯らす事が出来た。と、聖女は言う。
「セピアの魔法が成長と共に強くなるに、封印の魔法も強く作用する…絡め捕る様になっていたわ」
「だから、最近弱まって来ていたの?」
ロホが聖女の言葉に、手を額に当て項垂れた。
「これが施されたのは…まだ赤子の頃ね。紅い痣も何か関係あるのかしら?」
「紅い痣?」
痣については初耳だと、オールが反応した。
「えぇ。お腹と胸の間…へその上ね。オールは見ていないでしょうね?」
「当り前だ!」
オールは顔を赤らめる。
婚約者とは言え、結婚までは清い関係で居なければならない。
二人はキスもした事が無かった。
オールの返答に、聖女はちょっとだけホッとした様子で、少し落ち着きを取り戻し始める。
「で、どうしてか聞かせてくれる?リオナが駄目なら貴方で良いわ」
くいっと顎でオールを差す。
オールは眉を寄せ、話していいモノかどうか、悩んでいた。
それに、オールは封印の事を知ってはいたが、そこまで詳しく知らされていない。
「わしが話そう」
いつの間にか、ドアの前に王が立っていた。
すぐさまオールとロホが立ち上がる。
しかし、聖女は王を見ても腕組みをし、視線を送るだけだった。
「貴方が、首謀者?」
聖女がふんっと不機嫌に鼻を鳴らす。
金貨色の目が見合う中、聖女の目が鋭さを増した。
「女の子を虐めるのが趣味なのかしら?」
「…そう怒るでない」
王はそう言うと、その場に居る兵士達に退室する様、命令した。
「人払いをしたっていう事は、ちゃんと説明してくれるんでしょうね」
「あぁ。お前の言う通り。首謀者と言われれば、わしが首謀者だ」
(王様が…私の魔力を…)
セピアは黒い空間の中で、愕然とした。
床さえも黒く、あるかないか分からない中で、膝を付き項垂れる。
(信頼していたのに…尊敬していたのに)
セピアの心に、虚無の風が吹いた。




