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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
解かれた封印

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1

『セピア』


誰かが呼ぶ声がした。


『セピア』


セピアは目を開けると、暗闇の中に居た。


『セピア』

「私を呼んでいるのは誰?」


手を伸ばしたが、何も触れる事が出来ない。

暗闇には誰も居ないのか、自分一人が立っている様な気に、セピアはなった。


『封印は解かれた』

「封印?封印って?…あなたは誰?」


声の主にセピアの声は届いていないのか、ただ無視をして居るのか、答えを返す事はしない。

しかし、セピアの心に力強さが湧き上がる。

痣が有る辺りが、妙に熱い。


「力が…溢れるみたい」


背に置かれていた聖女の手が、今は感じられない。

が、外部からの力よりも…先程まで感じていた聖女の力と同じくらいの強い何かが、体中を駆け巡る。

より内側の、心の内側から、塞き止めるモノが無くなった為に流れ出すのは、セピアの魔力だ。


「私…封印されていたの?」


悩んでいたのが嘘の様に、セピアは魔法が使える気がした。

何も考えず、手や指先を動かす様に、カップに手を添える様に軽く、自然に魔力の流れが分かる。


「あぁ…これで、オール様との婚約に文句を言う人も居ない…」


お披露目会の前に、魔力が戻って良かった。と、セピアは心底思った。


(聖女様が私を助けてくれた)


聖女とリオナの会話が聞こえていたセピアは、両手を胸の前で組み、聖女に感謝した。

自分の自信や思いを取り戻す為に、リオナを気絶させてしまう程の力を使ってくれたのだと。


しかし、その反面。

自分に封印を施した者が居る事を知ってしまった。

それも、リオナは知って居て黙っていた。


「長年お世話して貰って来たけれど…私を裏切っていたのね…」


胸の前の両手が震える。

怒りなのか悲しみなのか。

どちらとも。なのだろう。


「酷い…」


セピアの目から、涙が零れた。

微かに残る魔力で、飛翔魔法しか出来ず、悩んだ毎日をリオナは目の前で見て来た。

心無い言葉が、王や王息に向くのではなく、自分に向くのを横で見て来たはずだった。


「なのに…どうして」


セピアの体中から、魔力と共に黒い感情が立ち上る。

黒い炎の様な形をした感情の気配は、周りの暗闇を更に黒くしていった。


「…あぁ…悲しい。…悔しい。…苦しい…わ」


セピアは両手で胸をぎゅっと掴んだ。


「誰が…私にそうしたの?」


襲い掛かる怒りで、目に力が入った。

そして、願う…『知りたい』と。


「見せて…」


目の前の暗闇が退く様に開けた。

代わりに現れたのは薄く輝く板の様な物だった。


「これは…?」


指先で触れると、映像が見えた。

ベッドの上で寝かされた自分と、その横に立つ聖女とオール、そしてマホンと兵士達。


「これは…『今』なのね…」


セピアは、今現在を魔力で透視していた。


「都合よく過去は見られないか…」


過去を見られたなら、誰が自分の魔力を閉じ込めたのか分かったのに。と、残念に思う。


「話している事は聞けないのかしら?」


映像は動いていたが、誰の声も聞こえなかった。

それもその筈、誰一人口を開いていなかった。

重苦しい空気だけが、その場に流れている。


「今の光は何!?」


ロホが部屋に慌てて入って来た。


「ロホ…勇さんは一緒じゃないのね」


勇の姿は見えなかった。

何が起きたか、分からない為に部屋で待機させているのだろう。

勇の部屋も覗きたいと思ったが、一度に二カ所は現れない。

万能では無いらしい。


(目覚めたばかりだから…かしら?それとも自分の身体が有る所しか見られないのかしら…)


どうやって見ているのかも分からない。

無意識のまま、ただ見たいと思った場所が見えている。


(慣れなきゃ…)


一番見たいと思っている物にフォーカスが当たるのか、聖女達が部屋から出ても、映し出し続けた。

セピアに当てがわれている部屋の、寝室横は応接スペースになっている。


そこへ、椅子が用意され、オールと聖女が対面で座ると、続いて聖女の横にロホが座った。

マホンはオールの後ろに立っている。

護衛の役割を忠実に熟す為だ。


(私の身体は…関係ないのね…)


セピアは手探りで、自分の能力を把握していく。

その時「リオナを」と、聖女が最初の一声を上げた。


「セピアを一人にするのは…」


オールが躊躇った。


「マホンがセピアの体を木の魔法で包んで、防衛を施す事で安全を確保して」


「それなら良いでしょう?」と、聖女が冷たい視線をオールに送ると、マホンは頷き聖女の言葉通り、マホンは防御魔法を施し、リオナを連れて来た。


「話して貰うわよ」


聖女の声に、鋭い剣の様な怒気が感じられた。

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