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「大丈夫よ」
聖女が汚れた服を脱がし、紅茶のかかった所に火傷が無いか見る。
少し赤くなった臍の上あたりに、妙な痣の様なモノを見つけた。
「これは?」
「…分からない。気付いたら出来ていたの」
「…炎みたいな形ね」
「えぇ」
元気のないセピアの声に、聖女は自分の事の様に心を痛めた。
「とにかく。入る?それとも拭くだけにする?」
「拭くだけに…」
下着姿のまま、聖女はセピアを台の上に座らせ、布を湯船に浸け軽く絞ると、拭き始めた。
聖女の力で赤みは消えたが、痣だけはどうしても治らなかった。
「無理みたいね…何かしら」
「大丈夫です。痛みは無いので…」
「あら?…セピア。貴女…背中に…これは…」
聖女は、セピアの背中を見て手を止めた。
「…?」
「…いいえ、何でもないわ…なんでも」
そういうと聖女はもう一度、布をお湯に浸けて軽く絞り拭いた。
風呂場から上がると、リオナが服を着る手伝いをする。
「今日はもう休みなさい…。大丈夫よ。庭園はマホンが手入れ担当だから…連れて行くだけよ」
少しの慰めに聖女は言葉を放つが、セピアの頭には嫌な予感しか浮かんで来ない。
「私…」
「馬鹿ね…落ち込まないで」
聖女がセピアを抱きしめる。
(どうしてこんなにも私は…自信が無いのだろう)
涙が溢れる。
背を擦る聖女の手は優しかった。
「オールは貴女を蔑ろにしたい訳じゃないわ…多分」
ライバルに塩を送るのは癪だけど。と、聖女が微笑む。
「ね。セピア。…もしも、魔力が戻ったら…貴女は自信を取り戻すかしら」
「…?」
「いえ、良いの。貴女の魔力が戻ったら…元気になれるなら…それで…」
背に触れている手に光が集中し始める。
「聖女様!?何をされるのです!」
リオナが眩しさのあまり目を細め、声を上げたが、聖女の手は更に光を増す。
「駄目です!!」
リオナが叫んだ。
「お止め下さい!!聖女様!」
「リオナ…貴女知って居たのね?」
セピアは項垂れ、意識が朦朧としていた。
隣で叫ぶリオナと聖女の会話は、辛うじて聞こえている。
「知って居ます!だから!!」
「何故!?誰がセピアにこれを施したの!!」
「それは言えません!ですが!お止め下さい!」
「これがこの子の自信の無さに…彼女を…セピアを傷付けているのよ!?」
「ですが!!あっ!!!」
目も眩む程の閃光が、周りを包む。
その光でリオナは意識を失い、セピアの横で倒れた。
「この光は何だ!!」
部屋のドアが荒々しく叩かれるが、セピアは動けなかった。
聖女もまた、部屋を開ける事はしない。
「開けろ!!セピア!」
オールの声がドアを叩く音と一緒に響いた。
「セピア!開けてくれ!」
「失礼します!」
マホンが魔法を使う。
木のドアが、みるみる内に変形し、隙間が空いた。
「セピア!」
「オール様!」
マホンの止める声も聴かずに、オールはドアの隙間に無理やり手を突っ込む。
そして、少し引くと入れるスペースに体を押し込んだ。
「セピア!無事か!?」
オールの目の前には、倒れたリオナの横に座るセピアと聖女が居た。
セピアは意識が無いのがハッキリと分かるぐらい項垂れ、聖女の肩に顔を乗せ、両手もダラリとぶら下がっていた。
「セピア!」
かけ寄るオールに、聖女は首だけ振り向き「静かにして」とだけ言った。




