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聖女の美しい顔が…瞳に絶え間ぬ輝きを宿し、更に美しく光った。
セピアは顔が熱くなった。
「あの、でも、私を見ただけですよね!?」
「えぇ。そうよ。でも、高鳴る胸は止められないの」
「私を知った後は?どうなのです?幻滅しませんか!?」
「しないわ!それどころか貴女をますます好きになったわ」
「何で!?」
(何で?こんな私を!?)
「貴女は自分の魅力を分かっていない。真面目で真摯に妃の教育を受ける姿も、人を思いやる優しさも、思いの強さも持っているのよ」
「魔力も…減ったのに?」
「魔力なんてどうでも良いのよ。貴女自身それ以上のモノが有るの。自分では分かっていないだけで…」
(本当に?)
「だって、今だって私は貴女の為なら何だってする気になる…今、自分を食べて欲しいくらいに」
「食べません!!」
セピアが驚きのあまり叫ぶと、部屋がノックされた。
側に居たリオナが、訪問者を確かめに行く。
(リオナ…私達をどんな目で見ていたのだろう…)
気配を消しきって居たリオナに、セピアはそう言えば出て行って無かった。と、思い出し、聖女に愛を叫ばれている主人を目にしていたメイドの心境を思うと、更に顔を赤くした。
しかし、リオナの表情はいつもの事だと言う様に何も変わらず、ドアへ向かう後姿さえ平常心が保たれている。
「セピア様、ロホ様と勇様がお見えです」
「あ、お通しして」
セピアが答えると勇の「失礼します」と言う声がした。
二人して顔を見に来たらしい。
「お邪魔でしたか?」
勇の視線が、聖女の顔と手を行ったり来たりする。
(そう言えば手!)
慌てて離そうとしたが、聖女の手はなかなか離れない。
「お邪魔よ」
聖女が冷たく言う。
ロホは呆れた表情で聖女を見たが、何も言わなかった。
「リオナ、二人と…私達にもお茶を」
セピアの声に軽く会釈し、リオナがお茶を入れに部屋を出て行った。
「具合はどう?」
「大丈夫。ありがとうロホ。今聖女様が調べてくれていたの」
「そうだったんですね。なんか…お邪魔してはイケない時に来たかと思いました」
勇が胸を押さえ、ドキドキしたと言う。
「だ、大丈夫よ…そんな事は無いから」
「いいえ、お邪魔だったわ。私とセピアの時間だったのに」
セピアと勇の会話に、聖女が不機嫌な声で割って入る。
「そんな…二人が来てくれて嬉しいわ」
ロホと視線をバチバチと鳴らす聖女を、なだめる様にしていると、リオナがお茶を持って戻って来た。
各々にカップが置かれ、暖かな紅茶の湯気が上がる。
「ありがとう。リオナ」
セピアの言葉に微笑み、一礼すると席を離れようと歩き出した。
「リオナさんって言うんですね」
「はい」
勇の声掛けにリオナが立ち止まる。
「友達と同じ名前なんです」
「そうなのですか?」
「はい。日本に…私の世界の友達なんですけど」
リオナは驚いた顔をする。
それもその筈、プリシカ国には珍しい名前なのだ。
リオナはセピアの先祖同様、亡き祖父母がノワール国の血を引いており、両親が曾祖母の名を娘に貰ったのだった。
「へぇ、違う世界でノワール出身の人と、同じ名前の人が居るのね」
ロホが関心を持つ。
二人の時には本の話ばかりで、勇の世界の事を聞いていなかった様だ。
「私もびっくりです。それにセピア様はこっちの世界では色の名前なんですよ」
「色?」
「はい。一時期流行りましたよ。セピア色。茶色っぽくて懐かしい感じの色で…写真でそう言う色にするのがエモかったんです」
(写真…?エモ…?)
勇以外の頭に?が乱立していた。
「写真って言うのはカメラって言うので、その場面を写して…えーっと、とにかく実物の絵の様な…」
当たり前に存在している物を、説明するのは難しい。
あたふたと勇は、手振り身振りで説明する。
「本来カラー…実物と一緒の色に写すのを、一色の濃淡で表している…みたいな」
「私の名前はその色の名前なの?」
「はい。なのでここにもセピア色ってあるのかな?って思ったんですが…」
写真が存在しない上、セピアの反応からして無い。と、勇は理解した。
「セピア様も、ご先祖様はノワール出身なんですよね?」
「えぇ。名前以外詳しくは分からない国だけど…」
セピアは何となく、さっき両親に聞いた事を伏せた。
聖女は眉間に皺を寄せ乍ら、紅茶を飲んでいる。
言う気は無いらしい。
「いやぁ…でも、結構ノワール国って…日本に似てますよね」
親近感が湧く。と詳しい事を知らない彼女は笑った。




