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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
皆の考え

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30/67

5

次の日起きると、セピアの身体は楽になっていたが当分の間、調査と言う名の外出は自粛を余儀なくされた。


「お身体を大切に」


そう言ってメイドはベッドから出してくれず、強制的に休養させられる。

出られるのは王妻教育の勉強の時だけ、食事すらも部屋で摂らされ、ほぼ監禁状態だった。

それが何日も続いた。


「勇さんは?」

「聖人様が付いていらっしゃるので大丈夫です」

「外に出たいのだけど」

「王様か王息様、聖女様の許可が必要でございます」

「ロホは?」

「ロホ様は勇様とご一緒です」


淡々と答えはするものの、一向に部屋の外へ出してくれないメイドに、大丈夫だと言い続けた。

それでも「駄目です」と、頑なに阻止するメイドに、時間が経つにつれ、日が過ぎるにつれ、強行突破をかけようかと一瞬考える。


(でも…お世話になっているし…)


ここへ来た時から付いてくれている、初老の女性メイド。

リオナに迷惑をかける事を考えると、実行できずにいる。

それに、時折だがロホも勇も顔を見せに来てくれる。


(オール様だって来てくれた…)


今日、ロホが持ってきた、ベッド横のおすすめの本3冊が「外、出なくても良いんじゃない?」と訴えかけてくる。


(『タイトルの無い本』も『やり返しては死ぬ』も気になる…ロホの一番は『死に戻りの巻き戻り』らしいけど…)


布団を握りしめ、小さな声で唸っていると、部屋がノックされた。


「少々お待ちください」


リオナが訪問者の確認に行く。

案内されて入って来たのは、両親と聖女だった。


「お母様!お父様!」

「セピア!大丈夫なのかい?」


二人共セピアに駆け寄ると、抱きしめた。


「大丈夫よ、心配かけてごめんなさい」


セピアは両親の腕の間で、ぎゅうぎゅうと圧迫される。

少し苦しいが、それでも最後に領地へ帰ったのは半年前だ、久しぶりの再会に純粋に嬉しさがこみ上げてくる。


「セピアが苦しんでますわ」


聖女が二人に手を緩める様、促すと漸く両親はセピアから離れた。


「本当に心配したんだよ」


父親がセピアの頭を撫でる。


「倒れたって聞いたから…気が気じゃなかったわ」


母親もセピアの手を両手で握りしめた。


「大丈夫よ。あの日はただ寝不足だっただけよ」


部屋の壁に設置された鏡に映る、両親の髪の色と目の色は、セピアとあまりにも違う。

両親と同じ髪と目の妹の姿が、ここに無い事にセピアは気が付いた。


「リーベは?」

「あの子は今日、学校で来れなかったの」

「そう。…会いたかったわ」

「また家に帰った時会えるさ」

「そうね」


(学校か…いいな)


セピアは家庭教師で、同年代と勉強はしない。

覚える事が多すぎて、同じ速度では『全て遅い』のだ。


その代わり、同世代と交流する場も設けられはする。

お茶会や夕食会がその場になる。


(今月はまだしていないから…リーベも来れる日に…)


帰省する前に妹に会いたいと、考えるセピアだったが、目の前の両親は何か言いたげな顔をしていた。


「…どうしたの?」


心配して来たにしても、領地から王城まで転移魔法を使っても遠い距離だ、何か他の要件もあるに違いないとセピアは考えた。


「セピア。心配して来たんだよ。お前を」


倒れたセピアの為、聖女が両親を迎えに来たと言う。


「そしてね。…言いにくいんだが」

「何?」

「お前、先祖の…ノアール国の事を調べているんだってね」


聖女からそう聞いたと、父親は暗い顔をする。

母親の手にも、力が入った。


「えぇ」

「…調べるのをやめる訳には行かないか?」


父親の言葉に、セピアはびっくりし目を見開いた。


「どうして?」

「あの国に…ノワールに関わって欲しくないんだ」

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