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「食べたい物とか、食べられない物とかは無い?」
セピアが鳥を呼ぶ。
代わりに注文をしてくれるらしい。
「あ、はい。…お…お任せします」
勇は少し、アスールの注文したバーガーを美味しそうに感じ気にしていた。
その視線にセピアは気付いていたのか、勇の元に同じバーガーが届いた。
「ここのおすすめよ」
セピアの手にも同じものがある。
令嬢と聖人が大口を開けて、バーガーにかぶりつく様は、勇が読んできた小説の中ではありえない事だった。
「気にしないわ。だってここは王城じゃなくて城下町ですもの」
そう言いながら頬張るセピアの口元には、令嬢らしくソースなど一滴も付いていない。
もちろん、ロホもかぶり付く。
アスールの口にはソースが飛んでいた。
「鳥の区別は…野生はセピア嬢が言った通り、人間に近付かないし人間も鳥に近付かない。それ以外に目に見えて区別が付く」
勇の視線に気が付いたアスールが、紙ナプキンで口を拭う。
しかし、取れていない。
見かねたロホが、付いている場所を指さして教えた。
「形…とかですか?」
「色だよ」
汚れた紙ナプキンを横に置くと、飛び交う鳥を指で示す。
「ここの鳥は青いんだ。他にも青い鳥は居るけど、この緑が入っている青の鳥はここにしかいない」
美しいグリーンブルーの羽を、街灯の灯りに光らせた小さな鳥は、可愛らしく羽ばたいている。
空が暗く成れば、この鳥は見えるのだろうかと、勇は考えた。
「夜間は皆、店の中さ」
アスールが勇の考えなどお見通しだと言わんばかりに、言葉を付け足す。
「人間も鳥も…あなたもね」
ロホが食べ終わると、一緒に注文していた紅い飲み物を飲んだ。
フルーツジュースではあるが、何のフルーツかは分からない。
甘い匂いが、横に座る勇に流れて来ていた。
「夜は夜で楽しまなきゃな」
アスールがビールを飲む。
「あ…」
そう言えば。と、勇が不安げな顔をした。
「どうかした?」
「お城に…戻らなくて大丈夫なんですか?」
セピアは令嬢だ。
連絡もなしに外食なんて、心配されるのではないか?と、勇はあわあわとする。
「大丈夫よ、勇さん。連絡は飛ばしてあるから」
セピアがゆっくりと紅茶を飲んでいた。
「それも…二人の聖人が側に居るからできる我儘だけど」と、笑う。
「たまには良いさ」
「そうよ、セピアは頑張っているわ」
アスールとロホがセピアを労う。
それに対して苦笑しながら「そう言ってこの前も外食しちゃったじゃない」と、セピアが笑う。
「その通りだ」
いきなり聞き覚えの無い低めの声が、セピア達のテーブルに響いた。
ぎょっとする勇は辺りを見回したが、他の三人が気まずそうな顔をしている以外、何もなかった。
「ロホ、アスール。セピア嬢をもうそろそろ返してくれ」
声のする方へ視線をやると、可愛らしい黒猫がロホとアスールの間にちょこんと座っていた。
「猫ちゃん…?」
見下ろす勇を猫は見上げると「もうそろそろ君も戻りたまえ」と、口が動いた。
「しゃべった…?」
「…そうか、君の世界には魔法が無いのだったな」
申し訳ない表情を猫が浮かべる。
「…語尾はにゃ。じゃないんだ」
「当り前だろう。私が話しているんだ」
猫の顔が、キリッとした表情になる。
「…勇さん、その猫を通して話しているのは…オール様よ」
「え…?」
勇の目が点に成り、言葉が詰まる。
「これも。魔法」
ロホは右手を頬にやり、肘を付いて猫を左手で指さした。
勇はいつの間に移動したのか、二人の間に居る猫の両脇を抱えた。
猫の脚が少し地面から浮いている。
「どっから!?どうやって!?」
「王城から…だ」
猫は必死で勇の顔を押し、離れようとしていた。
「き…君。近い…」




