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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
ブランの家

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19/25

4

聖人達と自分の生死感の違いに面食らってはいたが、勇は『安らかな死』が約束されているのは良い事かも知れないと思う。

自分の世界でも老衰で、眠る様に逝く人間など少ない事を、祖父母を見送った事で知って居る。


「まぁ…まだまだ先よね」


あなた達二人は。と、セピアが微かに微笑む。

ブランはそれに応じるかの様に、少し大げさにため息を吐いて項垂れた。


「聖女様は…」


勇の言葉に聖人二人がピクンと反応した。

その反応が好ましい反応ではないと、悟る。

自分が召喚された際の様子から見て、仲の良さは感じられなかった。


「あ…あの…」


勇が言い淀む。

見かねたセピアが「聖女様がどうかした?」と、先を促した。


「先代とか…いらっしゃるのですか?」

「先代聖女は彼女の母親だが…すでに亡くなっている」

「聖女を産んですぐにね…」

「そうなんですね」

「会った事は無いけど、立派な聖女だったと聞いている」

「私とブランが生まれた年よ。マホンが3歳…アスールが4歳か…5歳?」

「アイツは誕生日が済んでいたから5歳じゃないか?」

「まあ、その辺の頃よ」


ロホとブランは「だから聖人全員会った事は無い」と言う。

10歳を過ぎた頃に、魔力の量や才覚を見出され、先代に弟子入りするまでは、普通の子供と変わらない生活をしてきた為、聖女や教皇には会えない。


「教皇は何かの祭典で遠目に見た事は有ったけど…聖女は弟子入りの時に初めて会ったわね」

「自分もそうだ」

「セピアは?どうだった?」

「私は…7歳の時にオール様の婚約者候補が集められた時に…」

「聖女様も婚約者候補だったんですか?」

「えぇ。…後見人が教皇様で…でも聖女様は集められたホールから去られて…」


6歳から11歳の子供達が、集められていた王城のダンスホール。

その中で、何が始まるのかと怯えていたセピアの前に現れた、着飾られた一際美しい少女。


『年下のガキなんかと、誰が結婚なんかするもんですか』


儚そうな外見とは真逆の、口の悪さと仁王立ちで、慌てる大人を蹴散らして出て行った。

その姿を思い出したのか、セピアがおかしそうに笑う。


「…何て、強い人なんだろうって思ったわ。お母様の事も重責も抱えているのにって」

「あの人は我儘なだけよ」


憧れを声に乗せて離すセピアの言葉を、打ち消す様に断言するロホに、ブランも頷く。


「知り合った後の今なら分かるでしょう?」


ロホの言葉に、セピアは困った顔をした。


「…まぁ、少し…困った人ではあったわね」

「少しなの?」


ロホが横目で本心を確かめる。


「あ…愛情表現が…激しい所は…有ると思うわ」


セピアが更に困った顔をした。


「まあでも、セピア嬢が強く言えないのも分かるさ」


ブランが開いたカップに注がれる紅茶を、ダレた格好のまま眺め言う。


「教皇が後ろにいるもんね」

「そう言う訳じゃ…」

「聖女様の後見人…教皇様ってどんな人なんですか?」

「王と対立している訳じゃないが、偉人の家系だ。それなりの権力を持っている」

「偉人?」


ロホとブラン、セピアの視線が勇に集まる。


「勇者の家系よ。大昔のね」

「建国前に聖女と一緒に戦った、召喚された男の子孫だ」

「…あ、だから教皇は男性に限定されるのですね」


勇の言葉に考えても居なかった事を、不意に突かれた気分に三人はなる。

教皇は勇者の子孫。ただの世襲制だと言う認識だった。

教皇に…女性はなれない。


「教皇様に聞けば私に目覚める能力が何か、分かるのでは?」


勇は何かヒントが得られると考えた。

邪神に対しても何か分かるかも。と…しかし、ブランの顔が曇る。


「教皇に会いに行くのは止めた方が良い」

「何故です?」

「…召喚魔法を王は繰り返してきたと言う話をさっきしたな」

「えぇ」

「今は月一で召喚魔法を試みているが…教皇はそれに反対していた」

「と言うと?」


勇の問いに答える前に、ブランは紅茶を一口飲む。


「新しい勇者が来る事に『反対派』だって事だ」

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