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聖人達と自分の生死感の違いに面食らってはいたが、勇は『安らかな死』が約束されているのは良い事かも知れないと思う。
自分の世界でも老衰で、眠る様に逝く人間など少ない事を、祖父母を見送った事で知って居る。
「まぁ…まだまだ先よね」
あなた達二人は。と、セピアが微かに微笑む。
ブランはそれに応じるかの様に、少し大げさにため息を吐いて項垂れた。
「聖女様は…」
勇の言葉に聖人二人がピクンと反応した。
その反応が好ましい反応ではないと、悟る。
自分が召喚された際の様子から見て、仲の良さは感じられなかった。
「あ…あの…」
勇が言い淀む。
見かねたセピアが「聖女様がどうかした?」と、先を促した。
「先代とか…いらっしゃるのですか?」
「先代聖女は彼女の母親だが…すでに亡くなっている」
「聖女を産んですぐにね…」
「そうなんですね」
「会った事は無いけど、立派な聖女だったと聞いている」
「私とブランが生まれた年よ。マホンが3歳…アスールが4歳か…5歳?」
「アイツは誕生日が済んでいたから5歳じゃないか?」
「まあ、その辺の頃よ」
ロホとブランは「だから聖人全員会った事は無い」と言う。
10歳を過ぎた頃に、魔力の量や才覚を見出され、先代に弟子入りするまでは、普通の子供と変わらない生活をしてきた為、聖女や教皇には会えない。
「教皇は何かの祭典で遠目に見た事は有ったけど…聖女は弟子入りの時に初めて会ったわね」
「自分もそうだ」
「セピアは?どうだった?」
「私は…7歳の時にオール様の婚約者候補が集められた時に…」
「聖女様も婚約者候補だったんですか?」
「えぇ。…後見人が教皇様で…でも聖女様は集められたホールから去られて…」
6歳から11歳の子供達が、集められていた王城のダンスホール。
その中で、何が始まるのかと怯えていたセピアの前に現れた、着飾られた一際美しい少女。
『年下のガキなんかと、誰が結婚なんかするもんですか』
儚そうな外見とは真逆の、口の悪さと仁王立ちで、慌てる大人を蹴散らして出て行った。
その姿を思い出したのか、セピアがおかしそうに笑う。
「…何て、強い人なんだろうって思ったわ。お母様の事も重責も抱えているのにって」
「あの人は我儘なだけよ」
憧れを声に乗せて離すセピアの言葉を、打ち消す様に断言するロホに、ブランも頷く。
「知り合った後の今なら分かるでしょう?」
ロホの言葉に、セピアは困った顔をした。
「…まぁ、少し…困った人ではあったわね」
「少しなの?」
ロホが横目で本心を確かめる。
「あ…愛情表現が…激しい所は…有ると思うわ」
セピアが更に困った顔をした。
「まあでも、セピア嬢が強く言えないのも分かるさ」
ブランが開いたカップに注がれる紅茶を、ダレた格好のまま眺め言う。
「教皇が後ろにいるもんね」
「そう言う訳じゃ…」
「聖女様の後見人…教皇様ってどんな人なんですか?」
「王と対立している訳じゃないが、偉人の家系だ。それなりの権力を持っている」
「偉人?」
ロホとブラン、セピアの視線が勇に集まる。
「勇者の家系よ。大昔のね」
「建国前に聖女と一緒に戦った、召喚された男の子孫だ」
「…あ、だから教皇は男性に限定されるのですね」
勇の言葉に考えても居なかった事を、不意に突かれた気分に三人はなる。
教皇は勇者の子孫。ただの世襲制だと言う認識だった。
教皇に…女性はなれない。
「教皇様に聞けば私に目覚める能力が何か、分かるのでは?」
勇は何かヒントが得られると考えた。
邪神に対しても何か分かるかも。と…しかし、ブランの顔が曇る。
「教皇に会いに行くのは止めた方が良い」
「何故です?」
「…召喚魔法を王は繰り返してきたと言う話をさっきしたな」
「えぇ」
「今は月一で召喚魔法を試みているが…教皇はそれに反対していた」
「と言うと?」
勇の問いに答える前に、ブランは紅茶を一口飲む。
「新しい勇者が来る事に『反対派』だって事だ」




